第二次世界大戦で負傷した兵士たちのリハビリの一環だった競技会が国際大会に発展、1960年からはオリンピックとともに開催されるようになったパラリンピック。
今や障害者スポーツのトップアスリートがしのぎを削る世界最高峰の舞台で、健常者以上の記録が出ることもあるといい、そこには選手に欠かせない義足・車いすなどの道具類の進化が大きな影響を及ぼしているとの指摘もある。
義足エンジニアの遠藤謙さんは「我々が“日常用義足”と呼ぶ、一般的に使われている義足の場合、足が入るソケットの下に人間の足と似たような形状のものがあり、歩く、登る、座るといった動作をするためものだ。一方、競技用のものは走る、もっといえば跳ねることの繰り返しのための義足といわれていて、レギュレーションは特に無い。競技としては100m、200m、400mがあるが、全種目で両足義足の方が速い」と話す。
「例えばスキーのサスペンションの場合、硬さによって滑り心地が変わるので、コースに応じたメカニックの貢献度合いもオリンピックより大きく、そこも楽しむ要素の一つだと思う。ただし、みんなが道具によって速くなるというわけではない。使う人間の使いこなせる能力も必要になってくる。
一方で、これはオリンピックでも同様だが、お金のある国の方が金メダルもたくさん獲れるという事実はある。特にパラアスリートでいえば、貧しい国ではお金のかかる義足はなかなか手に入らないということもあるし、そもそも障害者がスポーツをするということへの文化的な障壁もあって、スポーツをすること自体が当たり前ではないという場合もある。日本も最近までそうだったと思うし、時間のかかることだ」。
元オリンピック陸上日本代表の為末大氏は「貧しい国の才能のある子たちを先進国のコーチが教え、道具も提供してあげられるようなシステムがあるといい。オリンピック以上に才能を開かせるのが難しいと思うので、システムとしてやったほうがいいと思う」とコメント。
また、東京大会でパラ応援大使も務めたパックンは「パラリンピックが大好きなので広めていきたいし、もっと見て頂きたい。そして僕はオリンピックの中にパラのコーナー、あるいは混合コーナーみたいなものがあってもいいと思う」と指摘する。
「僕はオスカー・ピストリウス選手、後に殺人罪に問われてしまった選手だが、彼が義足を付けて走っているのを見て、すごいと思った。有利過ぎるから別の種目にした方がいいという議論が出たが、僕はそれでいいと思う。むしろ普通の靴と競技用義足という2種類の競技にして、健常者が競技用義足を履いていいからみんな参加しましょうと。その上でオリンピックと同じタイミングで開催して、“一番速いのは誰だ”という戦いにした方が、障害を持っている方の凄さが分かって頂けると思う」。
道具の進化にたゆまぬ努力、パラアスリートたちによる五輪記録超えも現実味を帯びるなか、義足エンジニアとして遠藤さんは何を目指すのか。
「もちろん競技をしている選手たちの頑張りがないと成り立たないが、僕が作った物で世の中が“えっ”となるような瞬間を作りたい。やはり、100mで義足のランナーが健常者よりも先にゴールしたときに初めて“あれ?障害者って何だっけ?と皆が考えると思う。そうしたことを通して、障害と健常に対する根本的なマインドセットを変えていきたいと思っている」。(『ABEMA Prime』より)
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