コロナ禍で売り上げアップ 太田雄貴氏「公営競技が一番のDXだった」国内のスポーツベッティングへの鍵は“モバイル”
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 ここ数年、世界ではスポーツ競技を賭けの対象とする「スポーツベッティング」が盛り上がっている。以前は「ブックメーカー」で有名なイギリスが突出していたが、2000年代に入り次々と各国が参入、2018年にアメリカでも一部の州を除いて合法化されたことで、一気に市場規模が大きくなった。これに伴い、日本でもスポーツベッティングを含めた欧米で進むスポーツDXビジネスの実現について検討する識者も増え、DX(デジタルトランスフォーメーション)によるスポーツ産業の振興を目指す「スポーツエコシステム推進協議会」が設立、30社が加盟した。このアドバイザリーボードメンバーを務めるのが、フェンシングで日本初のメダリストにもなり、現在はIOC(国際オリンピック委員会)の委員でもある太田雄貴氏。国内でのベッティング実現にはまだ年月もかかり、クリアする課題も多いが、その中でも「一番のDXだった」と表現したのが、コロナ禍での公営競技の躍進だった。

【動画】国内でも議論され始めた「スポーツベッティング」の現状

 スポーツベッティングは、合法・非合法のものを含め、市場規模が約330兆円とも言われている。日本のGDP(国内総生産)が約538兆円であることを見れば、6割ほどにもなる巨大な額だ。ただ日本では、公営競技(競馬・ボートレース競輪・オートレース)や、toto(サッカーくじ)を除き、ベッティングは法律で禁じられている。ところが海外では、日本のスポーツを賭けの対象にしており、太田氏にとってはこの矛盾の解消と、日本の税収増加を大きなテーマにしている。

 太田氏 我々としてはスポーツに興味関心を持ってもらって、楽しさに触れてもらい、みなさんの日常がポジティブになればいいと思っています。スポーツを通して何かできることを常々考えてはいるんですが、綺麗事を言ってもビジネスとして成立をしていないと、守りたいものも守れない。だから自分たちが外貨を稼ぐ1つのトリガーになれるようにやっていきたいんですよ。今の法規制によって、本来生まれるはずの産業が生まれていないと思っています。みなさんが既に感じている矛盾とか難しさとも似通っているかもしれないですね。

 海外では多額がスポーツベッティングで動いているにも関わらず、日本では限られた競技だけが対象になるだけ。スポーツ庁は2025年までにスポーツ産業の市場規模を15兆円に設定したものの、コロナ禍によりメジャースポーツの売り上げが軒並みダウンしたことで、強烈なブレーキがかかった。そんな中、一筋の光となったのが、公営競技の躍進だった。売り上げが上がったからだ。

 太田氏 コロナ禍の中で調子がよかった業種、悪かった業種の番付をつけるとしたら、公営競技は上に出てきますよね。たとえば今までオートレースだったら、元SMAPの森さんしか知らないような人たちが、コロナ禍の中でネット投票なら参加できると盛り上がったんです。誰が有名かとかではなく、テレビで言うところのストーリーテリングの必要がなくなった。ベッティングを通してファンになった方が、結果的に選手の顔や名前を覚えていく。逆にギャンブルという切り口がない競技は、コロナ禍だから会場には人が来ないし、中継の配信もない。ガラガラの座席はテレビに映すにも耐えられないじゃないですか。ところが公営競技は、お客さんが入っていないとは思えないほど、売り上げが挙がっていた。会場に入れる人たちが、たとえ何万人いたとしても、競技にアクセスする人のほんの数%だったということですね。

 東京競馬場は、収容人員が20万人近くにもなる。ビッグレースともなれば、ここが満員にもなっていたが、コロナ禍ともなればそうもいかない。来場者の数も減った。ところが売り上げは上がる。会場外から賭けている人の多さと、モバイル端末を利用した参加者の増加が鍵だった。

 日本でスポーツベッティングを導入することを考えた際、避けて通れないのがギャンブルに対する依存だ。収入をベッティングにつぎ込み、さらには借金をしてまでのめり込むような人が増えるような仕組みでは、たとえ導入できたとしても、その先には明るい未来がない。この依存への対策についても、やはり公営競技で成功したモバイル端末での参加は大きいという。

 太田氏 僕らは賭けの対象になるとともに賭ける側の人、さらにはギャンブルへの依存に対してもアクセスをする必要があります。モバイルであれば解決ができるとも考えています。その人の与信に応じて賭けられる金額を決めたり、依存の疑いがあるかを見ていったりするべきだと思います。モバイルで全て管理することで、依存している人にもしっかりとアクセスができる。みんなで集まってワイワイやるという楽しさもあるとは思うんですが、今の時代にあったやり方としては、モバイルの方がいいんでしょうね。未成年も保護できますし。参加するにしても、少額でも自分事化してチームや選手を応援するという方が、スポーツベッティングの形としてはありえるのかなと思います。

 公営競技に学ぶところは、団体・選手側にもある。賭けの対象になる選手たちは、故意に結果を操作する八百長行為を防ぐために、競技期間中は携帯電話などを預け、外部との連絡を遮断している。現状、ベッティングを成立させるために必要と考えられてはいるが、これがアスリートたちのベストパフォーマンスにつながるか、と聞かれればそこは悩ましい。

 太田氏 対象にする競技にも、いろいろな考え方がありますね。そもそも個人競技はどうなのかとか、団体競技の方がいいかとか。1対1の競技の場合、どうしても選手本人に外部の人がアクセスできてしまうと、八百長が全て成立してしまう。その点、団体競技であれば変数が多いので、八百長が成立しにくく、ベッティングには向いているかなと個人的には思います。一定数、人数がいる方が、思い通りにならないですからね。選手もアマチュアでいる人と、いろいろな制限を受けながらベッティングの対象になってもプロになることを選ぶ人、分かれていくと思います。

 自由に競技を楽しむアマチュアのままでいるか、様々な制約があってもプロとして収入を得られる道を選ぶか。制約が大きくなる分、ベッティングで今より大きな収入が得られるようになれば、生活も安定するだろう。また、八百長行為は活躍できていない選手の方に、より多く忍び寄ってくる。この金銭的なケアについても、ベッティングで得られた収益から捻出できるのは、という考え方もある。

 太田氏 リーグ、団体が乗り気のところとやらないと、ベッティングは難しいですよね。リーグを支えてくれる人たちが理解してくれて、選手たちへの理解も促してもらえないことには。彼らもやはり、自分たちにメリットがないと嫌だというに決まっている。お互いにメリットがありますよ、ということを指し示しながら進めていくべきなのかなと思っています。

 苦しいコロナ禍にあって、成功を収めた公営競技。海外で盛り上がるスポーツベッティグの国内実現に向けては、公営競技が良い事例となるだろう。太田氏は、仮にスポーツベッティングが実現された場合、集まった金はスポーツ界に還元もしつつ、広く日本の社会への貢献に使われるべきだと考えている。アスリートたちが全力で戦う姿にファンが感動をすることは、これまで何度も証明されてきた。今度は、スポーツ産業がベッティングという新たな挑戦で、直接的な感動ではなく別の幸せを運んでこられるか。今後の動向に注目だ。

【動画】国内でも議論され始めた「スポーツベッティング」の現状
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