日本の周辺海域で動きを活発化させているように見えるロシア海軍。防衛省によれば14日午前0時ごろ、宗谷岬(北海道)の南東およそ130kmの海域でロシア海軍の潜水艦や駆逐艦など計6隻の航行を確認、関係者は「ウクライナへの軍事侵攻と呼応する形で、極東地域で大規模な海上演習を行っており、それに参加した艦艇と推測される」としている。
【映像】元海上自衛隊海将の伊藤俊幸氏と元海上保安官の一色正春氏に聞く
ロシア軍をめぐっては、先週も津軽海峡を航行する海軍艦艇10隻が確認されたほか、2週間ほど前には北海道の根室半島沖でヘリコプター1機が日本の領空を侵犯している。
海上自衛隊の元海将、伊藤俊幸・金沢工業大学虎ノ門大学院教授は「冷戦後、こんなに多くのロシア海軍が動くのは初めてで、異例のことだ」と話す。
「まず2月1日、流氷を割って進むための砕氷艦を先頭に、24隻が宗谷海峡を抜けてオホーツク海に入った。ちょうどウクライナとの国境近くでベラルーシ軍との合同訓練を行っていた時期で、北方領土でも軍艦からミサイルを発射して、それを撃ち落とす迎撃訓練などを行っていたとされている。やはり向こう(ウクライナ)でもやれるし、こちらでもやれるということを見せようとした部分があると思う。そして3月10日、そのうちの10隻が津軽海峡を抜けて戻り、14日には6隻が北の宗谷岬付近を回ったということだ」。
その上で伊藤氏は「すごく誤解されている部分もある」と指摘する。
「かつてソ連とアメリカの二大国が、世界中が各国の領海で埋まってしまうと、俺たちの海軍が動けないじゃないかと言って喧々諤々の議論になった。逆に、全てを領海にしてしまうと、潜水艦が潜って通れてしまう。例えばホルムズ海峡も領海で埋まっているが、一応、“ここを通れ”というところがあって、イランとオマーンが南北から見ている。しかしアメリカは無視してわざと領海に入ったりしている。
意外かもしれないが、それを避けるため、むしろ真ん中に堂々と細い公海を残した方がいいということだ。そうすれば、潜水艦は浮上して通らないといけないし、飛行機も領空侵犯を避けるため、細い公海上を曲がらなきゃいけない。周辺の国としても、見えていれば、何か起きた時には撃てばいいというわけだ。そして、ロシアの太平洋艦隊司令官は海上自衛隊ときちんとやり取りをしているし、事故防止のための紳士協定も結んでいる」。
これに対し、ジャーナリストの佐々木俊尚は「冷戦時代までは“北の守りが重要だ”と言われていて、北海道の陸上自衛隊も強化されていた。それが今は(中国を念頭に)南西諸島の方に、という状況になっている。これから再び北方の脅威が高まってきた場合にはどうなるのか」と疑問を投げかけると、伊藤氏は次のように答えた。
「もちろん自衛隊も防衛省も対応を考えているし、ロシアとは非友好国になってしまった以上、一定の構えをすることも当然だ。しかし、みんな“お前、国際法を知ってるか”と言うように、ロシアの高官、軍人は賢いから、みんな分かっている。問題は、プーチンだ。以前のプーチンのように、ロジカルに、合理的に考えているうちはいい。しかし、こういう“独裁者”がおかしくなったときに誰も止められないということが証明されてしまった。その意味では、ロシアによる日本侵攻の可能性もゼロではないと思う。
また、皆さんはピンと来ないかもしれないが、“正しい戦争”と“悪い戦争”がある。2014年ぐらいまでの侵攻の仕方というのは“インテリヤクザ”みたいなもので、国際法や国連憲章の隅を突くようなやり方だった。それ今回、プーチンは思いっきり“ド真ん中のストレート”でやってきた。まさにヤクザ映画に戻っちゃったという、この恐ろしさだ。いま、日本の周りには独裁者が3人いることになる。それに囲まれているがゆえに、今までのように合理性だけではなくて、きちんと構えるような日本の安全保障を考えないといけないことになったと思う。よく“最悪を考えて”と言うが、残念ながら“最悪の事態”を想定しないといけない時代になってきたということだ」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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