被災後も癒えない心の傷… 周りができるケアは?専門家「衣食住について聞いてあげること」
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 17日午後11時36分ごろ、福島県沖を震源に宮城・福島の両県で最大震度6強の地震が発生した。インターネット上には、「不安で寝不足になった」などの声が相次いでいる。

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 こうした災害時の不安な気持ちとどのように向き合えばいいのか。「ABEMAヒルズ」は災害心理学などを専門とする関西国際大学の道免逸子教授に話を聞いた。

「災害が起きてからすぐなので、急性期になる。本当に恐ろしい体験をされた方はそれに対する強いストレス反応が出ているはず。この強いストレス反応は恐ろしい体験をすれば誰しも起こることだが、それが1カ月以上長引くと、PTSD(=心的外傷後ストレス障害)になる。それは強い反応が出ていてもおかしくはなく、恐ろしい異常な体験に対する正常な反応ということで、動揺や恐怖など色々な反応が出る。それに対して異常だと思わず、『こんな怖い体験をしたからそれはそうだよね』と思うこと。一番有効なのは安心安全の確保で、衣食住について確保されること。そういうストレスフルな体験に対して有効なのはソーシャルサポートであると言われている。周りの方と繋がることが今の急性のストレス障害をPTSDとかに移行させない秘訣だ」

――東日本大震災から11年経ってもこうしたPTSDなどは残るのか

「PTSDの方からすると、11年前というのは“ついこの間”になるので残っている。それは、複雑性悲嘆とかサバイバーギルト(※生存したことへの罪悪感)、うつ病などにも言える。PTSDなどの研究からすると、災害後の研究は海外でも20、30、40年後とフォローアップされているので、それくらい長引くものとなる」

――具体的にどのような症状が起きるのか

「不安と恐怖が高まる。人間というのは『このまま人生は続いていく』という自分の身を守る仕組みとして根拠のない安心感を持っているので、トラウマに合うとそれが破壊され、世の中や人生に対する信頼がなくなってしまう。そして、自分に対する信頼もなくなり、動揺して傷ついてしまう存在だと無力感を感じるので、周りの人に対してもいざとなったら『助けてもらえないんだ』と思ってしまうこともある。災害時というのは自分や他人に対する信頼感を失うため、その辺からうつ症状や無力感、希死念慮などが強まってしまう可能性がある」

――ではどうしたらいいのか

「今、すごくたくさん(災害関連の)画像があふれているので、その画像をあまり見ないこと。恐ろしい景色の画像が繰り返し報道されるので、それは見ない方にした方がいい。子どもなどによくあることだが、たくさんのニュースに晒されていることでストレス症状を高めてしまうことは研究で明らかになっている。必要な情報は得た方がいいけど、繰り返し見ないこと」

――周りはどうサポートしたらいいのだろうか

「辛いなかにある方は、自分からSOSを出せない。心の問題に踏み込まれることを嫌がる方も多いため、声の掛け方は心の問題を聞くのではなくて衣食住について聞いてあげること。例えば、その人が『大事な人の安否が心配』『誰かとはぐれた』『大事なものを無くした』など、そういった具体的な困りごとに関わってあげるといい。気持ちの問題も話すこともあるかもしないが、こちら側からは辛いことを無理に聞き出さないことがとても大事。聞き出すことは害になる。家族の絆や知り合い関係など、みんなそれぞれ元気に生きていた人たちなので、ネットワークを持っている。それとなるべく繋がるようにすることが大事」

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 これを受けて、米・イェール大学助教授で経済学者の成田悠輔氏は、「ケアと煽りの組み合わせが大事」だと述べた。

「メディアを通じて流れるような画像や情報はショッキングになりがちで、実際に経験された方や近くにいた方にとってはストレスになったり追い詰めたりする部分もある。一方で、震災から遠くにいた方などに対して、震災・災害を伝えるきっかけとしてはいい機能を果たす場合もある。そういう意味で、ショッキングな情報や煽り的な情報は良い面と悪い面があるモラハラ吊りっぽい部分があると思う。なので長い目で見ると、煽り的なものを与えるべき人とそうでない人たちを僕らが上手くグループ分けをして、どういうコンテンツとか情報をそれぞれの人が受け取るのかというのをカスタム化したり、個別に最適化していくというのができるようになったらいいと思う」

(『ABEMAヒルズ』より)

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