根強い日本の“母乳信仰”に宋美玄医師「妊娠37週以上の正産期に生まれた赤ちゃんなら、完全ミルクでも問題ない」
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 来月1日から、東京に日本最大規模となる「母乳バンク」の「日本財団母乳バンク」が運用を開始する。母乳バンクとは、超早産・極低出生体重で生まれた赤ちゃんのうち、年間5000人の赤ちゃんが必要とする「ドナーミルク」を提供する施設で、利用経験のある池田望実さんは「安心して自分の体調回復に努めながら、子が健康に育つことを信じてNICU(新生児集中治療室)に通うことができた」と話す。

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 17日の『ABEMA Prime』に出演した丸の内の森レディースクリニック院長の宋美玄医師は「早産でNICUなどに入っている小さな赤ちゃんは母乳を直接吸うことができなかったり、喉に呼吸のための管が入っていたりする。母乳には母乳にしか入っていないマクロファージなどの細胞成分や免疫グロブリンといった物質が入っていて、壊死性腸炎を防いでくれたりするので、そうした赤ちゃんにとってのメリットはすごく大きい。

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 実際、私も授乳中に当直をしたときにはおっぱいが張るので搾乳し、NICUに持っていくとありがたく飲んでもらえた。ただ、7カ月くらいで産んだお母さんがすぐに母乳を出すというのはけっこう難しいので、そういう方の赤ちゃんが点滴をせずに口からの栄養で育つことができるメリットが母乳バンクにはある。昔の“乳母”みたいなものだが、すごいカロリーをあげることになるので、産後に体重が元に戻るのが早かったり、糖尿病の方の場合、母乳をあげることでリスクが下がったりする。冷凍して送るといった手間はあるが、あげる側のお母さんの健康上のメリットもある」。

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 一方、社会には昔からの根強い“母乳信仰”もあり、母乳が出づらい体質の母親たちにとっては、大きな精神的負担にもなってきた。番組ではその点についても話を聞いた。

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 宋医師は「WHOも特に発展途上国などに向けて母乳育児を推奨するガイドラインを出しているし、母乳が出るなら基本的には飲ませた方が良いというのが世界共通だ。清潔な水が手に入らないとか、十分に消毒された哺乳瓶が手に入らないという方にとっては、母乳のメリットは大きい。また、確かに外出する際に哺乳瓶や粉ミルク、お湯などを持たなくても、授乳ケープさえあればいいという、子育ての面での簡便さが母乳にはある。ただ、それでは父親が育児に入る隙がなくなってしまうということで、あえて完全ミルクにされる方も増えてきているようだ。

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 最近では調乳しないでそのままあげられる液体ミルクも出てきているし、成分も母乳にものすごく似せている。日本において妊娠37週以上の正産期にに生まれたお子さんに関しては、母乳の方がいいというケースはあまりないと思うし、母乳ではないミルクを飲ませていても栄養失調になるということは基本的にはない。ただ、先ほども説明したように母乳にしかない成分もあるということも確かで、世界的なデータで見ると、完全母乳の赤ちゃんの方が感染症が若干少ないということある。ただこれも日本のように衛生的で、医療も発達している国において致命的になることはまずない。

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 一番知って頂きたいのは、育児にとって一番大事なことは何かということだ。私自身、10年前に子どもを産んだとき、やはり“母乳信仰”に追い詰められた一人だった。しかし赤ちゃんにとっては、保育者が心に余裕を持っている方がいい。最近では“産後うつ”が話題になってきたが、母乳のために育児があるわけではない。もちろん母乳が順調に出るのでその方が楽だという人もいる。でも、十分な量が出なくて赤ちゃんが泣いてしまい、夜中に何回も吸わせて、眠れなくて、追い詰められて…という人もいる。それなら人工乳の方がいい。それぞれの親子ごとに価値観やこだわり、日々の生活があるので、どっちがいいかについて外野が言うことではないと思う」と話した。(『ABEMA Prime』より)

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