因縁のリマッチ、ボクシングの歴史では“矢吹有利”か? 完全決着を前に寺地「悪質なバッティング」矢吹「一部の人が騒いでるだけ」
【視聴する】矢吹vs寺地、因縁のリマッチがついに決着
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 WBC世界ライトフライ級チャンピオンの矢吹正道(緑)と前王者の寺地拳四朗(BMB)によるダイレクトリマッチが19日、京都市体育館でゴングとなる。両者は昨年9月に対戦し、世界初挑戦の矢吹が9度目の防衛を目指した安定王者の寺地を下して世界タイトルを獲得した。“因縁のリマッチ”とも言われる日本人同士の一戦はどんな結末が待っているのだろうか――。

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 昨年9月の初対決は「寺地有利」と言われた試合だった。多くの人たちがそう思ったのも無理はない。寺地はそれまで無敗で、WBC王座を8度も防衛していた。しかもその戦いぶりは試合を重ねるごとに安定感が増し、寺地が常々口にしていた「具志堅用高さんのV13を抜く」という言葉にも現実味を感じさせていた。

 そんな寺地の野望を見事に打ち砕いたのが矢吹だった。左ジャブと右のパワーパンチで先制すると、4ラウンドまでの採点でリード。中盤からは前に出てくる寺地をうまく迎え撃ち、距離の支配に長けた王者のボクシングを狂わせた。

 それでも寺地が矢吹を猛追したことで、試合はまれに見る熱戦に突入した。寺地が9回にボディで矢吹を追い詰め、逆転勝利まであと一歩のところまで迫る。ところが10回、今度は矢吹がボディブローを突き刺して再び流れを引き寄せると、一気に畳みかけて劇的なTKO勝ち。国内メディアはこの試合を2021年の年間最高試合に選出し、互いに死力を尽くした両者の健闘に大きな拍手が送られたのだが……。 

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 リング外で“事件”が勃発したのは試合が終わってからだった。寺地が9回にカットしたアクシデントを巡って、寺地営が「故意のバッティングだった」と主張。最終的にWBCも日本ボクシングコミッションも「故意のバッティングとは認められない」との結論に落ち着いたとはいえ、悪者扱いされた矢吹サイドは収まらない。今回の試合が“因縁の再戦”とも“完全決着戦”とも呼ばれる理由はここにある。

 こうした迎える第2戦はどのような試合展開になるのだろうか。第1戦で寺地側の一つの誤算は4ラウンドまでの採点だった。WBCは4ラウンド終了後に採点を公開する。その結果は2人が40-36で矢吹、残る1人が38-38。採点を読み誤った寺地側は中盤から前掛かりのボクシングを余儀なくされ、苦戦を強いられたのである。

 今回の寺地はこれを踏まえて矢吹にリベンジを果たさなければならない。記者会見で作戦を問われた加藤健太トレーナーは「今まで8度防衛してきたボクシングを信じて、それを貫く」と短く答えた。出入りのスピードとシャープなジャブで相手を翻弄し、旺盛なスタミナを武器に後半に強さを発揮するのが寺地のスタイルだ。それを前回以上に徹底すれば自ずと勝利は見えてくるとの考えだ。

 もちろん前回と同じ轍を踏まないように、序盤のポイント獲得は意識してくるはず。出入りのタイミングを修正し、より手数を増やしてはっきりと攻勢をアピールする。仮にポイントを取れなかったときの第2プランも用意していることだろう。

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 迎え撃つ立場になった矢吹は「一度試合をしているのでやるべきことは分かっている」と前回と同じように自信満々だ。建設業の仕事をしながら夜にボクシングの練習をしていた前回までとは環境が変わり、今回は仕事をせずにトレーニングに集中できた。寺地に対抗しうるスタミナ強化が十分にできたという。

 もともと定評のある強打と度胸に加え、状況判断にも優れたボクサーだけに、「寺地のボクシングはもう分かっている」といったところか。「17戦目になる自分のキャリアの中で一番自信がある」との言葉は充実した準備ができたことの証と言えるだろう。

 では、今回の試合をファンはどのように見ているのだろうか。専門誌ボクシング・ビートがツイッターでアンケートを実施したところ、7割方が寺地の勝利を予想し、矢吹の防衛と見たのは3割程度という結果が出た。一度負けている寺地が有利と見る人がこれほど多いとは驚きだ。

 前回の寺地は新型コロナウイルスに感染し、わずか12日の延期で防衛戦に臨んだ。本人はコロナウイルス感染による影響を否定し続けているが、前王者の勝利を予想する人たちには「前回の拳四朗は万全な状態ではなかった」との思いがあるのだろう。

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 逆にボクシングの歴史は矢吹有利の材料を提供する。挑戦者に敗れた前チャンピオンがリベンジを狙うケースは過去に何度もありながら、雪辱に成功してベルトを取り戻した前チャンピオンは国内に3人(4回)しかない。

 1人目は“炎の男”輪島功一。1974年にオスカー・アルバラード、翌年に柳済斗を相手に2度の王座奪回に成功した。WBCスーパーフライ級王座を8度防衛した徳山昌守は05年、1年前に初回KO負けした川嶋勝重に雪辱。新しいところでは19年にロブ・ブラントとの再戦で勝利したミドル級の村田諒太がいる。逆にV11の内山高志や、V12の山中慎介ら名だたるチャンピオンが王座を失ったあとの再戦で敗れた姿はまだ記憶に新しい。

「今回もチャレンジャーの気持ちで挑む」という矢吹の返り討ちか、一度は引退して寿司職人を目指すことまで考えた寺地のリベンジか。勝敗の予想は極めて難しく、今回も激戦は必至の予感だ。 

【視聴する】WBC世界Lフライ級王座戦 矢吹正道 VS 寺地拳四朗 | ABEMA
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