去年11月、ISS(=国際宇宙ステーション)から地球に帰還した宇宙飛行士の星出彰彦さん。日本人として2人目となる船長を務めるなど偉業を達成した星出さんの帰還に、日本中が沸いた。そんな星出さんが所属し、世界の宇宙開発をけん引する「JAXA(宇宙航空研究開発機構)」が、あるユニークなプロジェクトを進めている。
【映像】変形する超小型月面探査ロボ「SORA-Q(ソラ・キュー)」
開発されたのは、超小型月面探査ロボット「SORA-Q」。大きさはおよそ8センチで手のひらサイズ。月面の低重力環境下における超小型ロボットの探査技術を実証するために作られ、来年度中にも月面の探査に向かう。
何の変哲もないただの球にも見える探査ロボ「SORA-Q」。実は「ゾイド」や「トランスフォーマー」などの変形ロボットを数多く製作している大手おもちゃメーカー「タカラトミー」などとの共同開発品で、長きに渡って子どもたちの心を鷲掴みにしてきた“変形技術”が取り入れられているという。
今回『ABEMAヒルズ』では「タカラトミー」を取材。月面探査ロボットの開発経緯について、企画開発担当・羽柴健太さんはこう話す。
「普通の探査機を作っても、ちょっとおもちゃ会社らしくないなみたいなところもあって。“変形“っていうキーワードから、(変形前は)コンパクトに持っていけて『月に着いたときに(変形して)走行できるようになったら良いんじゃないか』。そんなところから“球体”にしようという発想に至りました」
月面に着陸すると、瞬時に球体から変形し、自動で走行開始。撮影は前後2つに搭載されたカメラで行う。撮った画像は地球に送ることも可能だという。加えて「トランスフォーマー」の変形技術、そして「ゾイド」の小型駆動の技術が取り入れられている。
元々は2016年に新規開発の一環で、JAXAが募集していた「民間などと連携した宇宙探査」の計画に応募したのが始まりだったこのプロジェクト。わくわくするコラボの裏には、やはり苦労もあった。羽柴さんと同じくタカラトミーの技術開発を担当する米田陽亮さんは、当初の課題にこう言及する。
「これはたしか20、バージョン20か、21なので、最初の頃からはかなり変わってます。『とにかく小型。かつ軽量』に作ることが課題でした。そこをおもちゃの技術のノウハウを使って作ったことが重要だったかなと思ってます」
おもちゃの技術を使ったシンプルな設計には、立ち上げ時から関わったJAXAの担当者澤田弘崇さんも固定概念を覆されたと話す。
「おもちゃメーカーさんの一つの強みとして、子どもが乱暴に遊んでも壊れないっていう観点で『部品の数を減らす』っていうのがあるんですよね。自分だったらこんな複雑な形の部品作らないなという組み合わせでできたロボを見た時、部品点数も本当に少なくて、そのあたりにおもちゃメーカーさんの強みを感じました」
子どもたちの憧れだったゾイドやトランスフォーマー。その技術が今、大人の夢も乗せて、宇宙へと飛び立とうとしている。
羽柴さん「こうやって宇宙探査とか聞くと、すごく遠いことのように感じると思うんですけど、『おもちゃの技術が宇宙探査にも繋がってる』っていうことが世の中の人に知ってもらえたら、すごく光栄なことだなと思ってます」
(『ABEMAヒルズ』より)
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