ウクライナ侵攻で「食料危機」も 専門家が日本の現状に警鐘「脆弱性が明確で見直しが必要」
日本の現状に専門家が警鐘鳴らす
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 ウクライナ国旗の青色と黄色が表すのは、青空と小麦畑。この小麦をめぐり世界は新たな脅威にさらされるかもしれない。

【映像】日本の食卓はイモになる!? 現状に専門家が警鐘鳴らす

 世界有数の小麦の輸出大国である、ロシアとウクライナ。世界の輸出量の3割を、この2つの国で占めている。軍事侵攻が長期化した場合、小麦の生産や輸出は一体どうなるのか。

 各国が神経をとがらせるなか、 この両国からではないものの、需要の約9割を輸入に頼っている日本は、どうなるのか。

「直接影響はないが、小麦の国際相場が、今回のロシアのウクライナ侵略を受けて、大変高い水準で、13ドルをオーバーしている。今後は、この小麦の需給と価格の動向を注視していかなければいけないと思っている」(農林水産大臣・金子 原二郎氏)

 日本では、政府が小麦を計画的に輸入し製粉業者などに売り渡す仕組みをとっている。小麦を売り渡す価格は、半年ごとに見直されている。一方で政府は、アメリカやカナダでの天候不順による不作の影響や、今後情勢が更に悪化し供給不足になったときのことを懸念し、輸入した小麦を製粉会社などに引き渡す平均価格を4月以降、17.3%も引き上げると発表している。

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 今後、値上げが予想されるなか「影響は小麦だけではない」と警鐘を鳴らすのが資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表(以下、柴田代表)。

「世界の小麦の輸出量は、ロシアとウクライナで3割を占めている。質量の2億tくらいが輸出されているが、そのうちの6000万tがロシア、ウクライナから中東北アフリカ地域に輸出されている。この地域(ロシアとウクライナ)の小麦の輸入が減少すると、アメリカやカナダ、オーストラリアなどに代替される。これは日本の輸入元。当然競り合いというか、小麦の争奪戦になる」

 柴田代表は、「小麦の価格に影響が出るのは10月以降」と前置きしたうえで、小麦が供給不足になれば、さまざまな食料に影響が出ると話す。

「小麦は、パンなどの食用が中心だが、劣化した小麦や品質の悪い小麦は、飼料に回る。とうもろこしは、基本的に飼料が中心。小麦の値段が上がって、劣化した小麦の値段が上がると、とうもろこし需要が上がる。とうもろこしの飼料用の値段が上がると、小麦の値段も上がる」

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 飼料の値段が上がれば、余波は牛肉や豚肉、鶏肉などの肉類にまで……。たまごや乳製品の値上がりも避けられない。これ以外にも、値上がりするものはあると明かす柴田代表。

「油糧種子、大豆油、菜種油。特にウクライナは、ひまわりの油。ここでいくと世界の7割の輸出を占めるので、一段と上がってきている。砂糖も上がってきている。全ての食料品価格が値上がりしている」

 さらに、問題は複雑だ。実はロシア、世界最大級の肥料輸出国。窒素室の肥料の輸出は、なんと世界1位を誇っている。経済制裁が強まるなか、今後ロシアから肥料が手に入らなくなれば、世界中の農業にダメージを与えるだけでなく、「食料危機」の懸念が高まるとして、柴田代表は輸入に頼る日本の食の現状に警鐘を鳴らす。

「今までは、最も生産性の高いアメリカやブラジル、ロシアやウクライナで食糧穀物を生産し、安いコストで大量に運んでくると、これがもっとも食料の安全保障に寄与するという考え方。経済合理性だけを考えていればよかった。しかし、脆弱性というのが明確になってきた。今までの食料政策というのは、やはり見直さざるを得ないと思う。基本的に食料というのは地域限定的な資源である、こういう認識が出てきたと思う」

 そもそも、ウクライナ危機という地政学リスクの前から、東アフリカ地域を中心にサバクトビバッタが大発生した蝗害、中国南部で発生した洪水やアマゾンの森林火災といった天候問題も発生。

 さらに新型コロナ蔓延によるサプライチェーンの大混乱。まさに「食料有事の時代」ともいえる状況で、日本の食の安全保障は大丈夫なのだろうか。

「基本は出来る限り自給自足。国内生産に力を入れて、足りないものを輸入する。二期作や二毛作、畑を何回転かさせる。ただ、それはコストがかかったりするわけで、生産者はなかなかやりたがらない。消費者も安ければ安いほどいいという考え方が浸透しているわけだが、適正価格あるいは価格の上昇の背景を理解していただいて、ある程度国産であれば価格を買い支える。生産だけでなく消費者も1枚加わって、食糧問題に対処していくことが必要」

(『ABEMAヒルズ』より)

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