認めたがらず妻と離婚に至るケースも…実は少なくない男性の「更年期障害」 急に太った、夜中のトイレが増えた、笑わなくなったと感じたら診察を
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 閉経によって女性ホルモンが少なくなることで起きる「更年期障害」。実は男性においても男性ホルモンの減少によってうつや不眠、性欲低下などの症状に悩まされる人は少なくない。順天堂大学医学部の堀江重郎教授によれば、実に40代以上の男性6人に1人が発症しているのだという。

【映像】40代の6人に1人...男性にも更年期障害 

■"何が"というわけではないが不安や悲しみが襲ってきて…

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 会社員のYossyさん(46)も、男性更年期障害に悩む一人だ。去年のある日、出勤時に改札を通るのが辛く感じたのが始まりだったという。

 「仕事中も、何がというわけではないが不安や悲しみが襲ってきて、ひどい時は机に座っていられなくなった。職場のトイレに駆けこんで、声を押し殺して泣いたこともあった。そのうちに不眠も重なり、疲労が溜まっていった。当然、集中力が低下して日中ボーっとしてしまったり、積極性がなくなって発言も減ってしまったり。しかもちょっとしたことでイライラしたり、怒りの感情が急に湧いてきたり。好んで聴いてきた音楽も耳障りに感じるようになって、人と会うのも嫌になってしまって。それまでの自分じゃなくなってしまったような感覚だった」。
 

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 振り返ると、31歳のときにも予兆のような経験をしていた。

 「年齢にしては責任の重い仕事を任されるようになって、仕事が面白くなってきたタイミングだった。当然、プレッシャーも感じていたんだと思うが、それと戦いながらトライしている最中だった。15年経って、そのときと同じような症状になったということだが、実はその間、うつと診断されたことがあったが、なかなか認めたくないという気持ちからネットで調べたところ、“男性更年期障害”というキーワードが出てきた。藁にもすがる思いで近所の泌尿器科に相談すると、“その可能性が高い”と。すぐに2週間に1回、男性ホルモンの補充療法を開始した。すると、ひと月も経たないうちに症状が緩和されていった」。

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 コロナ禍によるテレワークも幸いしたと感じている。

 「治療を開始した時期が、テレワークが始まった時期と重なったこともあり、職場には知られていない。直属の上司にだけ報告をしたが、理解のある方で、“治療を優先してくれ”というアドバイスをいただいた。この15年、やっぱり自分の心の弱さだとか気合が足りないだとか、“精神論”で自分を責めてきたと思う。でも、そうではなかった。主治医の先生からも“決してそうではないですよ”と言われて、ホッと一息ついた気持ちになれた」。

■離婚という結果を避けることはできなかったのかと…

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 一方、5年前に24歳年上の夫と結婚したみゆさん(仮名・29)の場合、男性更年期障害だったと思われる夫と離婚するまでに至ってしまった。

 始まりは、結婚3年目の頃。50歳を迎えた夫の周囲への態度が急激に変化していったという。

 「本当に別人になったような変わり方で。落ち込みやすくなったり、逆に些細なことでカッとしたりすることが増えた。物に当たったり、子どもを大きな声で怒鳴ったり。止めに入った私にも、“お前が甘やかしてるからこんなにわがままに育ったんだろう”と」。

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 悩みを共有しようとTwitterで体験談を発信していたところ、「旦那さんは男性更年期障害じゃないでしょうか」と指摘された。ネットで調べてみたところ、当てはまる点が多く、かねてから悩んでいたセックスレスもまた、男性更年期障害が関係しているのではないかと考えるようになった。ところが夫はみゆさんの再三にわたる通院の勧めを拒否した。

 それから夫婦関係は悪化の一途をたどり、みゆさんは離婚を決断する。「ただ家族で楽しく…本当に楽しく過ごしたいという気持ちだけだった。子どもから父親を奪う決断をしたこと、離婚という結果を避けることはできなかったのかと当時も悩んだし、今でも後悔はある」と声を詰まらせた。

■“仕事はばっちり上手くいっているが、更年期だ”という人はいない

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 男性更年期障害について、前出の堀江教授は「女性の場合、遺伝子で決まっている閉経というイベントの発生によって、一定の値をとってきた女性ホルモンが減少することが契機となる。

 一方、男性の場合は男性ホルモンが20代~30代にピークを迎えるものの、その後も極端には減少しない。ところが自身を取り巻く社会的な要因、例えば対人関係やストレスによって一気に減少することがある。女性の更年期と非常に似た症状だが、全ての男性に起こるわけではないのは、そういう理由だ。逆に言えば、“仕事はばっちり上手くいっているが、更年期だ”という人はいないということだ」と話す。

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 堀江教授は、コロナ禍で男性更年期障害の患者数は急増しているのではないかと推測する。ただ、病院に相談する決断ができない男性も少なくないようだ。

 「そもそも男性ホルモンというのは、狩猟採集時代に外に出て獲物を獲って帰ってくるというホルモンだ。コロナ禍で対人関係が希薄になった結果だと考えているが、受診者が3倍くらいになったという実感がある。実は第2次世界大戦前から、こういう症状があり得るということは指摘されていた。ただ、高度経済成長期には誰も考えなかったし、社会的に注目されてきたのはこの20年くらいだ。Yossyさんが最初に異変を感じた15年前頃も、認知度は今ほどではなかった。

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 ただ、最近ではストレスが非常に問題になっていることもあり、心療内科で抗うつ薬を投与されても効果が芳しくない場合、ホルモン値を測った上で、我々を紹介いただくことも多い。抗うつ剤で効果の出る人は全体の3分の1くらいだが、更年期障害の場合、治療を行うと5〜6割くらいの人が良くなる傾向がある。最近では唾液を郵送して男性ホルモンの値を調べる検査も普及しているが、すぐに医療機関に行こうという気にならない方がほとんどだ」。

■20代、30代のように褒められる機会が少ない40代、50代

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 では、自分で兆候を把握するための方法はあるのだろうか。堀江教授は3つのポイントを挙げる。

 「一つ目は、“ベルトの穴がずれる”ことだ。男性ホルモン、テストステロンが下がってくるとちょっと太ってくるからだ。昨年から2つくらい変わってはいないだろうか。二つ目が、“夜中にトイレに起きるようになった”、あるいは“1回だけだったのが、2回起きるようになった”ということだ。男性ホルモンは身体のしなやかさにも関係してくるので膀胱が固くなってくるからだ。三つ目が最も大事で、“笑わなくなった”ということだ。笑うということは、リラックスしているということ。人とのコミュニケーションが取れるということだ」。

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 逆に、外的要因を変えて男性ホルモンを分泌させることで予防したり、症状の改善につながったりすることもあるようだ。

 「筋力量が増えるということは男性ホルモンが増えるということだと思っていい。でも、分かっていても運動は億劫だなというのもあると思う。その億劫さも、更年期障害の症状の一つではある。やはり一番のポイントは人に褒められることだ。40代、50代が男性更年期障害になるのは、20代、30代のように“君、よくできたね”と評価される、褒められる機会が少なくなるからだ。そうしてホルモンの値が上がってくれば、ストレスに対するしなやかさが出てきて、ストレスを受け止めるだけではなく、“こんなもんか”と流せるようにもなる」。

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 潰瘍性大腸炎の患者でもあるジャーナリストの佐々木俊尚氏は「“病名の恥ずかしさ”というのは重要な問題だと思う。潰瘍性大腸炎も厚労省指定の難病で、今でこそ安倍元総理が罹ったことで認知度が一気に高まったが、僕が発症した2000年頃は誰も知らない変な病気という雰囲気があって、“腸から出血してお尻から血が出る”という話はなかなかできなかった。それはうつも同じで、少し昔まではカミングアウトすること自体が恥ずかしいという感覚があった。男性更年期障害も、病名の女性的な響きや性欲の減退など、言いにくい部分がある。誰もが“俺、50代になって更年期障害になっちゃったんだよ”と言えるようにならないと」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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