今年も若手の抜擢指名はあるのか。プロ将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」で、佐藤天彦九段(34)は3大会連続してリーダー棋士を務め、前回は弟弟子である古賀悠聖四段(21)を抜擢した。「トップ棋士と戦える機会でもあるので、そこで強い棋士と戦うことによって、本当に飛躍的に力が伸びるきっかけにもなる」と、後輩の成長を一気に促す場として貴重だと考えている。同大会では「熱戦メーカー」としても知られるようになった佐藤九段は、今大会用の指名リストもしっかり作り込んできた。
この団体戦は、タイトルホルダー、レジェンドクラスのベテラン、デビュー間もない若手と、実にバラエティーに富んだメンバーが揃うことで知られている。特に若手は、トップ棋士と対戦するまでにも何年かかることもある。その段階を飛ばして、いきなり頂に触れることができるのは、またとない機会だ。「藤井聡太さんも、別の企画でトップ棋士とたくさん指して伸びたというところもある。やはり若手の時にトップの人と指したいという気持ちは強いですよね」と、盤を挟んで戦うことに勝る経験はない。
実際、昨年自身が指名した古賀四段は、その後の公式戦で大活躍した。もともと能力が高いところに、強烈な刺激が入ったことで覚醒する。もしくは、日々の研究における目線が上がる。そういう効果もあるだろう。若手だけでなくベテラン勢でも、同じように成績を伸ばすことがあるのが、この大会の特徴だ。
さて、今年はどんなチームにするか。「まず若手強豪を1人入れたいなというイメージはあります。若手強豪が取れたら、ベテラン強豪にするか若手強豪を2人揃えるか、改めて考えたいです。ある程度のリストというか、ピックアップはしています。ただリストが埋まってしまったら、パニックですけどね(笑)」。どうやら実績ある若手を入れてチーム力を安定させつつ、そこからいろいろとアレンジを入れる作戦らしい。2大会ぶりの予選突破、さらには初優勝へ。「貴族」と呼ばれる男は、表情は涼やかに、ただ胸中では熱く狙っている。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)