振り飛車党のファンからすれば、今年もスカッとする戦いがどれだけ見られるだろうかと、胸が高鳴る大会がもうすぐ始まる。早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」が、4月2日のドラフト会議から放送がスタート。3人1組、計15チームがしのぎを削り、頂点を目指す。この戦いを、一人の将棋ファンとして楽しみにしているのが、山根ことみ女流二段(24)だ。今年はどんなドラマが生まれるか。「ABEMAトーナメントを見ていると『振り飛車、いい戦法だなあ』と毎回思うんですよね」と、今から目をきらきらさせている。
山根女流二段も、自ら「第2回女流ABEMAトーナメント」に出場し、団体戦を体験した。和田あき女流初段(24)、塚田恵梨花女流初段(23)という仲のいい同世代とチームを組み、真剣に戦いつつ、控室では肩の力が抜けた素の表情がファンに好評だった。
山根女流二段 控室では、だらーんとしていましたよね。カメラの存在を忘れていて、実家にいるんじゃないかと思っているぐらいでした(笑)。私が対局している時も、それを見ている2人の実家感がすごくて、お茶の間の一時みたいでおもしろかったです(笑)。普段は1人なので勝っても負けても自分の責任として解決できるんですけど、団体戦となると1敗がチームに響いてくるので、1勝・1敗の重みがありましたね。対局の時、手が震えちゃいましたし。そんなのデビュー戦以来のことで、懐かしさもありました。1局の時間は短いので、練習だったらたくさん指せるのに、本番は1局指しただけでスタミナが消費されたのを感じたので『これはスポーツだ』と思いましたね。
リーダーとなった女流棋士にタイトルホルダー、経験者らがずらりと並んでいた中、自分一人だけタイトル挑戦を果たしたばかりでのリーダーとなり、少し驚いた。不慣れな立場と思いつつ、いろいろな経験ができた。
山根女流二段 正直、リーダーのメンバーを見て、どうして自分がここにいるのかと思ったところもありました。それでも、リーダーを務めさせていただいて、メンタル面は成長できたと思っています。将棋以外のところでも、すごく反省することも多かったし、しっかりしないといけないという責任感が出た気がします。チームとしての最終戦で、チーム伊藤の室谷由紀女流三段との対局は、自分が勝たなければいけないという思いが、一番強く出た将棋だったかなと思います。
出る側に回り、新たな経験が得られたが、やはり見るのもおもしろいのが、この団体戦。大好きな振り飛車が活躍し、また棋士の素顔が見られる控室の様子が毎回楽しみだ。
山根女流二段 もう一人の将棋ファンとして楽しませてもらっています。将棋界にいるから、放送前に結果とかが耳に入りそうなことがあるんですけど、それも聞かないようにしています。聞かずに放送で楽しみたいじゃないですか。だから、ファンの方と一緒の気持ちですよ。仕事とかがあって、放送の途中から合流することも多いんですが、ご飯を食べながら家でくつろいで「うおー」とか言ってますよ。日付が変わることもありますが、あっという間です。そういえば「お風呂にいつ入るか問題」、ありますよね(笑)。
対局の間に差し込まれる控室での様子が大好きだ。前回大会ではチーム渡辺とチーム永瀬の、雰囲気のギャップがツボに入った。
山根女流二段 この2チームの対照的な感じが、すごく好きでした(笑)。どっちの雰囲気もいいですよね。チーム渡辺はとにかく楽しそうな感じ、チーム永瀬はちょっと怖いという感情が出てくるような。あと三浦弘行先生(九段)が、詰将棋パラダイスを解きながら応援しているシーンがあったじゃないですか。自分も詰将棋が好きなんですけど、なんでしょう、お守りなんですかね。詰将棋好きの精神安定剤みたいなものでしょうか。
本人の願望込みでドラフト予想をしたところ、振り飛車党のエース棋士・菅井竜也八段(29)のことを考えた。山根女流二段は、最近居飛車も取り入れてはいるものの、やはり心は“振り飛車LOVE”。特にこの大会では振り飛車が活躍する対局も多く、振り飛車を満喫したいという思いが溢れ出た。
山根女流二段 ABEMAトーナメントでは、振り飛車の将棋を見るのが好きなんです。やっぱりいちばんわかるので。菅井先生、めちゃくちゃ強いじゃないですか。この大会には相当向いている気がするし、ドラフトでも振り飛車の先生を選ぶんじゃないでしょうか。
そう言って、個人的な振り飛車ベストメンバーを指名として並べてみたところ、菅井八段、久保利明九段(46)、藤井猛九段(51)という名前が出てきた。
山根女流二段 振り飛車は、やっぱりいい戦法です!将棋を見ていて、振り飛車が指したくなるお三方をあげてみました。振り飛車は結構個性が出やすいので、見ていて楽しいですよね。菅井先生はバッサリ斬るような将棋。見ていてスッキリする、爽快感があります。久保先生も同じような感じですが、捌きのイメージ。どう見ても切れそうな細い攻めが切れなくて、感動するんですよ。藤井猛先生は、やっぱり私の大好きな四間飛車。「藤井システム」を発明されましたし、序盤のちょっとした工夫が後々響いてくるあたり、見ていてわくわくしますね。
ファンにとっても、実現したら最高とも言えるような、振り飛車人気棋士の3人組。振って、振って、振りまくることになれば、山根女流二段も自宅で腕を振りながら応援する。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)