初の予選突破への道は、百戦錬磨の先輩たちと切り開く。プロ将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」で、豊島将之九段(31)は3大会連続でリーダー棋士として参加する。過去2大会は惜しくも予選敗退。いずれも自分があと1勝すれば突破というところで敗れ、まさに鬼門となっている。そこで今回、ドラフト会議ではこれまで年下の棋士を選んでいたところから一転、ベテラン棋士の力を借りる構想とした。「ベテランの方は直感が優れている。時間がなくても、すごくきれいな将棋を指されている」と、経験に裏打ちされた強さを求めるようだ。
物静かな豊島九段も、仲間と一緒であれば笑顔で語らう時間が増す。大会を通してファンに与えた印象は、こんなものだ。気を使わない後輩たちと組んだこともあってのことだが、結果は第3回、第4回ともにあと少しのところで予選敗退。「なんとか本戦にはどんな形でもいいので行けたらいいなと思います」と勝負師として、またタイトルを争うトップ棋士として、予選敗退が続く状況はとにかく打開したい。
過去の大会を振り返り、着目したのがこれまでの将棋界をリードしてきたベテランの棋士たち。若手有利と言われる超早指しにおいても、それに負けない早指し力があり、さらには読みを入れる時間がない局面でも自然に手が伸びるのは何千局、何万局と指してきたからこそのものだろう。「中終盤の難しいところでパッといいところに手が行くのが、私よりも上の世代の方が多いのかなと。学びたいという気持ちがすごく強くて、普通の公式戦もあまり成績がよくないので、いろいろな取り組みをしていく中で、何か得られたらなと思います」と、学びの意識はとても高い。
自ら語るように昨年は3つのタイトル戦に出場しながら王位戦は挑戦失敗、竜王戦と叡王戦ではタイトルを失い、無冠にもなった。タイトル戦線に再び復帰するためには、何か変わらなくてはいけない。そのきっかけをABEMAトーナメントの場にも求めている。「チームメイトの方の対局を見ている時間も長いので、そういった中で自分の対局など、学びがあればいいですね」。過去、同大会で活躍した棋士が、後の公式戦でも活躍するというケースも増えている。先輩とともに初の予選突破、さらには本戦でも大暴れとなれば、それは豊島九段の猛反撃が始まる合図だ。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)