香川愛生女流四段「夢みたいな体験」「こんな日が来るとは」渡辺明名人の指導と自身初の年間40局超え
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 女流棋戦だけで、今年度は自己最多の43局も指した。「40局以上も指したのは今年度が初めてですね」と語るのは、タイトル経験者でもある香川愛生女流四段(28)だ。2013年度に女流最多対局賞を受賞したが、その時でも34局。それが今年度は43局でもランキング5位。いかに近年、女流棋戦が増えたかがよくわかる。「こんなに女流棋戦で対局できる日が来るとは、という感じですね」と、感慨も深い。また今年度は、将棋界の超トップ・渡辺明名人(棋王、37)に指導を受ける「夢見たいな体験」もあった。多忙な日々で充実の日々を送った香川女流四段の2021年度を聞いた。

【動画】多くの棋士が参加する「ABEMAトーナメント」

 2010年度に新設された、将棋大賞の部門賞、女流最多対局賞。最多記録には2012年度に清水市代女流七段(53)が作った55局が輝くが、その他で45局以上だったのは1回だけ。ところが2021年度は、45局以上が4人、最多は伊藤沙恵女流名人(28)の53局だ。

 香川女流四段 新しい棋戦が増えたことで、この対局数になっていますので、ベース作りが難しい一年でもありましたね。新しく増えた女流順位戦は持ち時間も3時間と長いので、体力的な課題も出てくるところです。

 多くの対局が指せるのは女流棋士として本望だが、その分、体調管理も難しく、研究時間の工夫も必要になってくる。またYouTubeを活用したものをはじめ、普及活動にも積極的なだけに、さらに忙しさは増している。さらに、長期リーグに属することで、新たなプレッシャーを感じる日々が続いていくことにもなった。

 香川女流四段 始まる前は、順位をつけられるってどんな感じなんだろうと気になっていました。始まってみると、自分が思っている以上に、周りのファンの方々が楽しみにしてくれて、また順位を気にしていらっしゃるのを感じましたね。順位を上げること、クラスを上げることへの期待の大きさを感じました。

 第1期は所属クラスと順位を決めるリーグ戦、トーナメントが行われ、実質的なリーグ初年度となった第2期は、B級からのスタートになった。タイトル「白玲」に挑戦するためには、A級入りし、そこで1位になる必要がある。

 香川女流四段 これまでも女流名人リーグ、女流王位リーグという2つのリーグがありましたけど、それとはまた違った空気がありますね。こちらのリーグは陥落するか残留、挑戦かというものですが、女流順位戦の方は「下がる」というプレッシャーがあり、みなさんそれを抱えながら盤に向かわれているので、ピリピリとした空気感があります。なるほど、これが棋士の先生のおっしゃっていた順位戦ならではの空気感なのかと、盤の前で気付かされることがありました。

 陥落しても来期、予選から頑張れば挑戦までたどり着けるリーグとは違い、女流順位戦は仮にB級からC級に落ちれば、白玲挑戦までに最低3年かかる。将棋界には、負ければ後がなくなるような重要局について「鬼勝負」という表現がされるが、女流棋士もこの鬼勝負を味わうことにもなった。

 リーグ戦の難しさは、勝とうが負けようが、戦いが続くことだ。女流順位戦B級であれば、10人参加の総当たりで、1人が9局指す。たとえ開幕から5連敗で負け越しが決まっても、一つも勝てず8連敗で最終局を迎えようとも、途中リタイアはない。

 香川女流四段 負けても戦わなくてはいけない、戦い続けなくてはいけない辛さがありますね。不調だろうがなんだろうが、次の対局が来てしまう。トーナメントは好調さを大事にしていく部分があると思いますが、リーグ戦は自分自身といかに向き合えるかだと思います。不調のままにしておいたら、自分のリーグ表が真っ黒になってしまうので、ダメな自分をほったらかしにできないんです。だから自分の本当の力が出るし、また弱さも出ると思います。

 対局も重圧も増えたが、励みになる出来事があった今年度でもある。奨励会時代から切磋琢磨してきた加藤子清麗(27)、伊藤女流名人が続け様にタイトルを獲得。里見香奈女流四冠(30)、西山朋佳白玲・女王(26)の2人で8タイトルを占めていたところを切り崩すことになった。

 香川女流四段 伊藤さん、加藤さんは今回タイトルを獲得された番勝負の棋譜を見ても、思いや覚悟が感じられる将棋でした。もちろん私たちは最終的にいい結果を残すことを目指すんですが、そもそも盤上でいい棋譜を残すということ、もっと言えば自分自身を表現されている方が、結果を出されている。この棋譜を見て、自分がどう指したいか、どう戦いたいかを考えさせられましたね。特にこのお二人は、本当に小さい時から身近なところで修行してきて、そこでもかなり先を行っていたので、私も励みになりました。

 香川女流四段も、女流王将で2期のタイトル経験はあるが、しばらくはタイトルをかけた番勝負から離れている。4人のタイトルホルダーに少し差をつけられているという自覚を持ちつつ、身近な存在の活躍を自分の活力にも変えている。また今年度は、自身初の団体戦出場をきっかけに、大きな経験をすることもできた。

 香川女流四段 女流ABEMAトーナメントで、私は加藤桃子さん、野原未蘭さんとのチームだったんですが、渡辺明名人に監督をしていただきました。名人にご指導いただくなんて、将棋指しにとってこんな夢のようなことはないですし、その感動が大きかったです。

 将棋界には師弟関係こそあるものの、女流棋士が将棋界のトップクラスにいる棋士に、直々に指導を受けるというケースは珍しいと言える。渡辺名人は弟子を取っておらず、本人も「コーチングをしてみたい」という希望もあり、実現したものでもあった。

 香川女流四段 私は他の女流棋士と比べれば、棋士の先生と研究会をする機会は少ない方です。だからまさか名人に教われる日が来るとはと、夢みたいでしたし、本当に貴重な経験ができました。直接的な御礼とかはいらないというタイプの先生でもあるので、大会でチームは優勝できたのですが、トーナメントは終わっても、その経験を活かして公式戦で活躍することが、名人への恩返しになるんじゃないかと思っています。指導は、すごく本質的なものでした。無駄がないし迷いもない。私に必要なものはこういう要素で、今はこれがダメだと。時間をたっぷりかけるというのではなくても、本当に合宿でもしてもらったぐらいの気持ちになりました。情報の密度があったということなんでしょうね。

 自身最多の対局数に、現役名人からの指導。考えもしなかった大きな2つの経験が舞い降りた。あとはこれをどう活かすか。全てをうまく吸収できれば、久々のタイトル挑戦、獲得も、決して遠いものでもない。それだけのものを得た、そんな一年だった。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

【動画】多くの棋士が参加する「ABEMAトーナメント」
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【動画】香川愛生女流四段が出場した女流ABEMAトーナメント
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