「16万8405票の中から選ばれた最強の本は……廣嶋玲子さんの『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』です。おめでとうございます!」
2月に発表された「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」。同イベントは、全国の小学生に一番好きな本を投票してもらい、日本中の子どもたちに本との出会いや豊かな読書体験を提供することを目指すものだ。
今回、1位に選ばれたのは『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』。この本は、幸運な人だけがたどり着ける不思議な駄菓子屋が舞台の物語で、女主人・紅子が勧める駄菓子がお客さんの運命を翻弄するという内容になっている。
「『銭天堂』の第1巻を選んだ。僕は小説を書いていて、その言い回しには『銭天堂』を参考にしている。なぜかというと、初めて『銭天堂』を読んだときに暗くて不気味な路地裏が思い浮かび、すごいなと思ったから」(こどもプレゼンター・村上現さん)
第2位には、一生懸命なのにどこか残念な生き物たちをまとめた『ざんねんないきもの辞典』が選ばれた。過去2回の総選挙で2連覇を成し遂げ、シリーズ累計発行部数450万部を突破する人気作品だ。3位には大人気の絵本作家・ヨシタケシンスケさんの『あるかしら書店』が輝いた。
今回で3回目の開催となった“こどもの本”総選挙。その目的について、運営事務局の岡本さんに話を聞いた。
「よく“子どもたちの活字離れ”みたいなことを言われるが、実は今の小学生は1ヶ月に10冊ぐらい本を読んでいる。(一方で、)自分が好きな本と出会うきっかけや、読みたい本との出会いは足りていないのではないかと考えた。そうしたときに、『自分が好きな本と出会う』『友達が“好き”と言っている本を読んでもらい、好きな本に投票してもらう』『同じ小学生が“好き”と言っている本を知ってもらう』といったイベントがあったらいいのではないかということで、“こどもの本”総選挙がスタートした」(NPO法人こどもの本総選挙事務局・岡本大事務局長)
意外と本との接点が多い現代の小学生。ただ、成長するにつれて読書から離れていく人も多いため、「“大人になっても本を読む”という文化の広がりに繋げるきっかけにしたい」との思いでイベントを開催しているそうだ。
――最近の子どもたちが読む本の傾向を教えてください。
「子どもながらに気づきや発見があるようなものはすごく好まれていると思う。単純に“知る”“話を追っていく”というだけでは、なかなか満たされない部分があるのではないか。それに加えて、ストーリーなどの本ならではの魅力があるか、みたいなところが求められているのではないか」
幼いころからインターネットが身近にある世代は、幅広い知識を得やすい環境にある。そうした中で、子ども向けの本に求められる要素も変化しつつあるのかもしれない。
総選挙を運営する事務局では現在、運営に充てる費用の一部をクラウドファンディングで募っている。出版業界の有志らで運営しているため、「今後の継続に力を貸してほしい」としている。
――どのようにして子どもに本を読む習慣を付けたら良いのでしょうか?
「無理強いしないというか、子どもが自分から読みたいものを読む機会をどんどん提供していくのが良いと思う。無理に読んでつまらなかった記憶というのは、本を遠ざけてしまうのではないかと。“こどもの本”総選挙というのは、大人が『これを読んだらいいんじゃない?』と思うものがたくさんある中で、それだけではなく、子どもたちが自分で選ぶものもあってもいいのではないのか。そういう思いで(運営)している」(『ABEMAヒルズ』より)