数日前に急遽、参戦が決定した実績不明のファイターがよもやのアップセット。欧州最高といわれたキックボクサーを衝撃的な“ワンパンチ”KOで沈めたことを受け「まじかよ…」「漫画のようなクロス」など、視聴者が騒然となった。
3月26日に開催されたONE Championship「ONE X」。ニキー・ホルツケン(オランダ)とシンサムット・クリンミー(タイ)によるムエタイ・ライト級マッチは、2ラウンド、クリンミーが右のクロスカウンターでホルツケンから衝撃KO勝利を収めた。数日前に突然エントリーされた謎のムエタイファイターがレジェンドを倒すという異例のアップセットに解説席も「てっきりホルツケンが勝つものだと…」と言葉を失うほどの衝撃が走った。
K-1 WORLD MAXやGLORYとキックボクシングのトップ戦線で活躍してきたホルツケン。ONEでもオープンフィンガーグローブに適用すると勝ちを重ねキックボクシングの1位にランキングされている。一方のクリンミーはイスラム・ムルタザエフの代役として急遽大会直前に参戦が決定。格闘一家に育ちムエタイ歴は4歳から、タイ軍所属時にボクシングでも実績をあげた選手で、プロの戦績78勝とあるが、各国メディアも「データーのない謎の選手」と報じるなど、その実力は未知数だ。
1ラウンド、フレームがひと回り大きなクリンミーを苦にせず、速いローやジャブ、ボディなどの高いボクシング技術。さらにはスピンキックなどを織り交ぜ、余裕を見せるホルツケン。しかし、クリンミーもパンチを当て、鋭い蹴りを飛ばすなど、レジェンドを相手に徐々に互角の試合を見せ始める。
2ラウンド、ホルツケンは得意の左フック狙い。一方、クリンミーはヒジの攻撃を多用。鼻をピンポイントで狙った左ストレートも有効だ。加えて鏡写しのようにボディフックやジャブを返し始めるクリンミーに対して「ジャブもいいな」「やられたらやり返す」など、好意的な声が上がり始めたその時だった。
クリンミーがリング中央で強烈な右のカウンターフックを打ち抜くと、まともに被弾したホルツケンが後方にダウン。思いのほかダメージが深く、ABEMAで実況を務めた西達彦アナウンサーも思わぬ状況に「ダメージが深い、深い、深い、立てない!」と絶叫。辛うじて10カウントで立ち上がったホルツケンだったが、ファイティングポーズをとることができずにレフェリーがゴングを要求した。
鮮やかな打ち下ろし、技アリの一撃に「漫画のようなクロス」と視聴者からは驚きの声が。思わぬ伏兵の登場にこの日のゲスト解説・森本“狂犬”義久も困惑ぎみに「ホルツケンが勝つかなと思ってました。でもホルツケン2度転んでいたんですよね。クリンミーは体幹が強い選手なのか…」とそのポテンシャルについて言及。解説の大沢ケンジは「左フックを打ちすぎて読まれてしまったかも」と冷静に敗因を振り返った。
思わぬレジェンド越えを果たしたクリンミーはSNSで試合後に「ホルツケンは速すぎて見えなかった」と告白。これにホルツケンも反応し「今日のところはおめでとう。再戦は熱いものになるだろう」とリプライをして再戦要求を突き付けた。これにクリンミーも「あなたがまたKO負けするのは、楽しくないだろうね」と返り討ちを宣言。リマッチに向けた舌戦が早くも勃発するなど、今後の行方が楽しみだ。