個人でも団体でも、やっぱり俺は振り飛車だ。プロ将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」のドラフト会議に、2度目のリーダーとして参加する菅井竜也八段(29)は、振り飛車党としては唯一、順位戦A級に所属する棋士。プロの世界では少数派である振り飛車党の意地を見せながら、トップ棋士たちとの激しい戦いを続けている。昨年、この大会では居飛車、振り飛車にこだわらず、尊敬するベテラン棋士を指名したが、今年は原点回帰。「理想は振り飛車の最強チームを作れたらいいなと思います」と、堂々と宣言してドラフト会議に臨む。
昨期は初のリーダーで郷田真隆九段(51)、深浦康市九段(50)というベテラン2人を指名した。「チーム戦のいいところがすごく出ました。3人1組で一生懸命やった結果がベスト4で、すごくよかったです。なかなか指名しにくいものでしたけど、すごく自分にとって参考にできる部分が多かったです」と、大会を通じてたくさんのことを学び取った。特に感じたのは、若手有利と言われる超早指しの中で光るベテランの下積み。「若い時の下積みがすごいなというのが、はっきりわかりました。自分も10年後、20年後を見据えると、今を相当頑張っておかないと厳しいですね」と10代、20代に重ねた努力が、ベテランと呼ばれる年齢になっても、将棋を支えるものになっていると痛感した。
いい刺激を受けてから1年後。今年はもう一度、振り飛車全開で戦う。久保利明九段(46)に指名された第3回大会も、チーム名は「振り飛車」だった。今度は自分がリーダーとして、最高の振り飛車を見せる3人組を作るつもりだ。「(昨年は)兄弟弟子の稲葉さんに久保先生を指名されたので、どうなることやら(笑)。勝手に振り飛車のチームを自分に作らせてくれるかな、という甘い考えがあったので、それを参考にしてうまく指名していきたいと思います」と、相手との駆け引き、読みを抜きに、一緒に戦いたい棋士を真っ直ぐに指名する。「目標は優勝ですが、1回でも多く勝負していきたいですね」。希望のチームを作り上げ、振って振って振りまくる。それが今年の菅井八段だ。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)