停戦交渉が重ねられているロシアとウクライナ。西側諸国が手をこまねいている中、日本にできることはないのだろうかー。そこで度々名前が挙がるのが、安倍晋三元総理大臣だ。
【映像】“ウクライナ派?ロシア派?”日本にも忍び寄る戦時下の思考…
在任中はプーチン大統領と27回もの首脳会談を重ね、互いにファーストネームで呼び合う様子が報じられるなど、両者の間には信頼関係が構築されているといわれてきたからだ。
テレビ朝日政治部の前官邸キャップで、歴代最長となる3000日以上に及んだ安倍政権を取材してきた吉野真太郎デスクは「アメリカ大統領でも今年は向こうが来る、来年はこちらが行く、というくらいのスパンが通常だ。もちろん多国間の会合に合せて時間を見つけて会おうよということをやっていたこともあるが、やはり27回というのは飛び抜けて多い」とした上で、次のように見方を示す。
「ロシアによる侵攻が始まる前であればやりようはあったかもしれないが、ことここに至っては本人も慎重だし、ヨーロッパの紛争に対してできることはないだろう。そもそも“ウラジーミル・晋三関係”というのは、日ロ関係について"何とか突破しよう"という関係であって、汎用性の高いものではない。だからウクライナ問題について安倍さんが“やあ、ウラジーミル”と言ってみたとしても、ヨーロッパ諸国からすれば“どうしたの?”という感じになるのではないか。
また、お互いに一挙手一投足を瀬踏みしながらやっていたわけで、安倍さんも、実は緊張しながら“ウラジーミル”と言っていた。ある時、安倍さんに“プーチンさんはどんな人なのか?”と聞いたら、“戦国武将みたいな人だ。織田信長が生きていたら、ああいう感じなんじゃないかな”と言っていた。西側の論理が必ずしも通じるわけではない、力の信奉者みたいなところがあると。衝撃的だったが、確かに織田信長に人権を説いても分からないだろう」。
近現代史研究者の辻田真佐憲氏は次のように指摘する。
「安倍さんは“戦後レジームからの脱却”を主張していたが、同時にアメリカに寄っていったことも事実だと思う。アジアのリーダーとして超大国と交渉するためには、様々な国と等距離でコミュニケーションを取ることができるような、独自の外交方針を出さないといけないと思う。その意味ではウクライナ侵攻はまさにチャンスでもあったはずだ。あれだけ長いこと総理大臣を務めていたわけだし、アジアのリーダーになるんだとまで言っていた“外交の安倍”だ。
これは野党的な茶化しで言っているのではなく、日本はG7の中でも非白人国であり、アジアで初めて近代化した国だ。そして、ある意味では西側からの圧迫に対する被害者意識があり、そこに反撃した戦争に大負けした国でもあるわけだ。つまり、ロシアの気持ちが分かる部分もあるんじゃないか。そこで“お前たちの気持ちも分かる。しかし、そろそろこの辺で止めておかないと俺たちの国みたいになるぞ”というコミュニケーションも取れるのではないか。
岸田さんについても、選挙区は原爆の被害を受けた広島1区だ。ロシアが核を使うかもしれない中、様々な発信もできる立場だが、残念ながらプレゼンスを感じないし、EUやNATOに寄ってしまっている。これではロシアから見て、"与するに足る相手”ではないと思われてしまう。また、今の岸田さんの頭の中は夏に参院選が半分以上を占めていると思うが、それが終われば国政選挙が3年間くらい無い期間に入る。そうなれば外交にもじっくり取り組めると思うので、そこで改めて世界に対する見方を示し、日本としての役割を果たしてくれたらと思う」。
吉野デスクは「すごく誠実な意見だと思う。岸田さんもG7に行ったばかりだが、今の日本はアジアの代表だと強調していた。それは裏を返せば、アジアの代表たりえてない部分があるということだ。もちろん、今やでっかいダンプカーをガンガン運転しているプーチンさんについて、“安倍さん、仲良いんだったらちょっと止めてみろよ”というのは茶化しになってしまうが、この戦争が終わったときには新たな秩序もできるだろう。そのタイミングこそ、和平に向けた日本の外交が出てくるチャンスかもしれない」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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