アメリカが望むウクライナ侵攻の“着地点”は? 佐々木れな氏「開戦当初、米国民は無関心だった」
「ロシアが目的を変えてきた」アメリカが描くウクライナ侵攻の“落とし所”
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 ロシアのウクライナ侵攻から約1カ月が経った。停戦に向けた交渉が断続的に行われているが、カギになると見られているのがアメリカの動向だ。現在ウクライナに対し、アメリカは高性能な武器と精密な情報を提供。一方で、ロシアの侵攻によりガソリン価格が高騰し、バイデン大統領が過去最大の石油備蓄の放出に踏み切るなど、影響が出始めている。

【映像】機関銃、ジャベリン、ドローン…アメリカが提供した武器 ※画像あり(5:57ごろ)

 ウクライナ侵攻の落とし所について、アメリカはどのように考えているのか。ニュース番組『ABEMA Prime』では専門家とともに議論を行った。

 ウクライナに対して、950億円規模の新たな軍事支援を表明したバイデン政権。戦略コンサルタント時代には防衛・安保のプロジェクトに参加し、現在ジョージタウン大学修士課程に在学中の佐々木れな氏は「一番アメリカが気にしているのはロシアとの直接対決だ」と話す。

「ウクライナ侵攻前、アメリカはさまざまな情報を公開して、なるべくロシアに侵攻させないような外交的努力を続けていた。侵攻後は、ロシアへの経済制裁、ウクライナへの武器供与の2つを行っている。アメリカは、ロシアに最大限の圧力をかけているが、その中で一番アメリカが気にしているのはロシアとの直接対決だ。これは『なんとしてでも避けたい』という姿勢が見える」

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 一方で、この事態をアメリカ国民はどのように見ているのだろうか。世論調査では「バイデン政権の対応を支持するか?」という質問に支持が47%、不支持が37%という結果に。また「核戦争のリスクがあっても直接軍事行動すべきか?」には“支持しない”が62%だった(※Pew Research Center調べ)。この結果に、佐々木氏は「経済制裁やNATO加盟国、ウクライナへの直接的な軍事介入ではなく、NATO加盟国への米軍の派遣には、アメリカ国民も『(バイデン政権に)賛成している』と見ていいと思う」とした上で「当初、アメリカ国民はロシアのウクライナに侵攻に無関心だった」とコメント。

「アフガニスタン撤退と比べて、アメリカのインパクトは小さかった。しかし、現在、アメリカではエネルギー価格が高騰し、インフレが悪化している。これによって、ウクライナ侵攻を自分ごととして捉える国民が増えてきた。関心が高まりつつあると思う」

 ロシアのウクライナ侵攻に対し、ネットでは「正義と悪があることにしたいのだろうけど、戦争自体が悪」「戦争する奴は全部が悪だという視点が全くない」「絶対的正義はない、どちらの方も持つべきじゃない」といった声が寄せられている。日本の「全ての戦争が悪である」という意見をどのように考えるか。

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 佐々木氏は「これは国際政治学者の細谷雄一先生のTwitterで話題になっていた内容だ。『あらゆる戦争が悪である』と述べることは一見正しいように見えるが、細谷先生のご指摘の通り、それは20世紀の国際法と国際的規範のあゆみを全否定することになってしまう。ヨーロッパでは『先制論』があって『こういう条件なら戦争は正当化される』という考え方がある。自衛の戦争は正当化される文化が根付いているので、日本とは温度差が違う。私は細谷先生の意見に概ね同意する」と述べる。

 ここで、ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「ヨーロッパの人が持つ“正義感”は『アフリカ人や中東の人が殺されても放っておくけれど、金髪で青い目の人が殺されたらガチで戦う』という正義感だ」と指摘。これに佐々木氏は「おっしゃる通りだ」と同意。実際、ワシントンにいる佐々木氏自身も「今回の人種的なギャップを強く感じる。シリアの戦争ではそんなに(ヨーロッパの関心が)なかったのに、ウクライナになったらみんなが立ち上がった。これは私も遺憾だ」と明かした。

 戦況について、ひろゆき氏は「ロシア国民の敗北は確定だと思う」と持論を述べた上で「経済的にきつい状況になったとき、国民は強いリーダーを求める。ヒトラーの時代も、強いドイツを求めた結果、ヒトラーが生まれた。そうすると政治的にかなり磐石なプーチン大統領は、政権としては負けないまま継続するのではないか。選挙で変わるとしても2年後だ」と疑問を投げかける。

 ひろゆき氏の質問に佐々木氏は「ロシアでクーデターが起こるリスクは非常に低いと思う」とコメント。「ロシアにおけるプーチン大統領の支持率は下がらないと見ている。そもそも、支持率が正しく取れているかどうかは別にして、プーチン大統領はこれからも政権を握り続ける。それは変わらないだろう」と語った。

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▲ 左:佐々木れな氏、右:ひろゆき氏

 経済制裁が続くロシア。プーチン政権が暴走するリスクはあるのだろうか。佐々木氏は「例えば今、アメリカで話題になっているのは、ロシアが化学兵器・生物兵器を使う可能性だ。『アメリカは真剣にリスクに対処すべきだ』『対抗策を考えなくてはならない』などの意見が出ている」と述べる。

 では、ロシアのウクライナ侵攻について、アメリカはどのような着地を望んでいるのだろうか。佐々木氏は「アメリカが望んでいることは、ウクライナにおけるゼレンスキー政権の維持だ。ロシアの力による現状変更を認めない。これがアメリカが考える着地点だと思う」と話す。

 ひろゆき氏は「ロシアも『長期戦はできない』と分かってきた。戦場でも武器や弾薬が届かなくてロジスティクスも思ったよりきちんとできていない。そうすると、東ドンバスとクリミア半島を押さえて停戦という形であれば『ロシアとしても手に入れたものあるよね』と。それによって『一応、戦争も終わったよね』という形が現実的なオチになる気がする。ただ、アメリカはこれを勝利と言えるのか?」と質問。

 佐々木氏は「アメリカは『負けてはいないが勝利ではない』と思うだろう」とコメント。「これは、バイデン政権的にはマイナスになる。ただバイデン政権も外交政策だけで評価されているわけではなく、国内問題も幅広くある。そういった他のさまざまな要因と兼ね合わせて、国民がどのように判断していくかだ」と述べた。

 双方停戦に向けた動きが見えるウクライナ情勢。引き続き世界から注目が集まっている。(『ABEMA Prime』より)

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