13年前から不妊治療に取り組み、今年妊娠が判明した40代の夫婦。これまでに約1000万円を治療に費やしてきたという。
夫「金銭的な面で大変なことはもちろんあるが、あまり『お金お金』と言うと、奥さんの精神面にも影響する。でも、『気にしないでいいよ』と言っても額が1~2万円ではないので、そのあたりを相談している。それと、メンタル面のケア」
不妊治療の経験がある夫婦は5.5組に1組と増加傾向にあり、その負担を軽減する対策が急務となっていた。4月から拡大された不妊治療の保険適用では、1回あたり平均50万円とされる体外受精や人工授精などの基本的な治療が対象となり、費用が高額な場合に支給される高額療養費制度も使えるようになる。
今回の保険適用の拡大により「経済的に余裕がない若い世代でも治療に取り組みやすくなる」という期待が寄せられる一方で、不妊治療専門クリニックの貝嶋院長は「全ての人が恩恵を受けられるわけではない」と指摘する。
「保険治療は、ガイドラインに沿ったものでないとできない。10人中10人が同じ治療を施すこともできない。例えば、卵巣の反応、薬の反応によって少しずつ方向転換をする。パターン化された治療をできれば楽だが、それができないのが不妊治療の難しさだ。その中で、型にはまらない患者さんたちに保険を適用するのはなかなか難しい」(みなとみらい夢クリニック・貝嶋弘恒院長)
保険診療と自由診療の混合はできないため、保険適用の範囲から外れた治療になれば、一連の費用が全額自己負担になるケースもある。だからといって、保険適用の範囲におさめようとすればベストな治療の選択を諦めることに繋がり、結果として妊娠の可能性を下げてしまうことも考えられる。
また不妊治療に取り組む人を後押しするためには、社会全体でクリアしなければならない課題も残されている。
妻「『生理の何日目に病院に来てください』と言われても、何日に生理が来るかはわからない。周期がある程度決まっていても、そのときに大切な仕事や会議が入っていると抜けられない。だから、仕事と“自分の子どもが欲しい”という予定が合わないことが一番つらかった」
夫「男性も朝、『受精したところに来てください』と言われて、帰らなくてはいけない日がある。『お前は関係ないだろう』という雰囲気になる職場もあるかもしれない」
「お金がない」「時間がない」という理由で不妊治療を諦めるカップルを生み出さないため、必要となってくるのが周囲の理解。少子化対策をより前進させるために、仕事との両立を可能にする環境づくりが求められている。
夫「法的な整備も早く進んで、理想としては負担がないまま(不妊治療が)できるようになってほしい。子どもたちが増えるということは社会のプラスになることだと思うので、どんどんサポートしてほしい。どんどんフォローしてもらうとうれしい」(『ABEMAヒルズ』より)