ヒトの生命の設計図ともいわれる遺伝情報「ヒトゲノム」。2003年の国際プロジェクトによって解読の完了が宣言されたものの、解読できない部分が約8%残っていた。
【映像】ヒトゲノムの“完全解読”で役立つこと(※解説パート 1分45秒ごろ~)
このヒトゲノムについて先月、約100人の科学者による「テロメア・トゥ・テロメアコンソーシアム」が完全な解読に成功したと科学誌「サイエンス」で発表。研究論文の主筆執筆者の1人であるワシントン大学のエヴァン・アイヒラー氏は、ヒトゲノムに「ヒトが感染症や疫病、ウイルスに適応するための免疫応答遺伝子や、ヒトの脳が他の霊長類より大きく成長するための遺伝子などが含まれている」と述べた。
約30億対の塩基配列で構成されるヒトゲノム。今回の研究手法では、これまでの29億2000万から4.5%増加し、30億5000万となっている。プロジェクトに協力したアメリカ国立ヒトゲノム研究所のアダム・フィリピー氏は「個人のゲノム配列を調べることは、10年以内に、1000ドル未満の日常的な医療テストになると期待する」と語っている。
このニュースについて、遺伝子解析のベンチャービジネスを展開する株式会社ジーンクエスト代表取締役・高橋祥子氏に話を聞いた。
ーーなぜ、残り8%のゲノム解読に20年近くかかったのか。
「染色体の端の部分は同じような配列が繰り返されていて、解読が難しい。イメージとしては大きな絵をスキャンする技術がないので、パズルのように断片化して1ピースずつスキャンした後に組み合わせて、全体像を作るようにゲノムの解読をしていた。しかし、同じようなピースが多いとパズルを組み立てるのが難しい。つまり、断片化した配列を読むのが難しかった。ただ、今回は配列を読み取る機械の能力が向上したことなどの理由で解読できるようになった」
ーー今回の発見で何が変わるのか。
「このヒトゲノムのデータは、様々な研究の基となる。病気の研究、薬を作る、ヒトの体を理解するために参照するデータとなっているので、そのデータが追加・修正されたことでより正確なデータがとれるようになる。今回追加された配列の中から見つかった2000個弱の新しい遺伝子が、どのような機能を持っているかが今後明らかになっていく可能性がある」
ーーヒトゲノムを調べることで何に役立つのか。
「ヒトゲノムが解読されたことで、病気のメカニズムや、薬がなぜ効いているかがわかるようになった。新型コロナウイルスのワクチンがすぐに開発できたのも、ウイルスの配列が分かったから。ゲノムの配列が解明されていくと、その生物を深く理解して病気を予測して防ぐことができる」
ーー解読の完了が宣言された2003年とそれ以後では、薬などを開発するスピードも格段に速くなったのか。
「速くなったし、薬がなぜ効いているかもより正確にわかってきた」
ーーヒトゲノムを解読すると、個人のことも分かるようになるのか。
「ゲノムの配列は99.9%の人が同じになっているが、0.1%は個人差がある。そこを詳しく見ていくことで、個人の体質や遺伝子などに注目する研究もできる」
(『ABEMAヒルズ』より)
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