新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込むためのロックダウンが行われていた中国・上海市。11日には一部地区で緩和する措置が始まり、約1万7000地区中、1万地区以上の住民に外出が許された。
一方、視察に訪れた上海市トップで次期首相候補とも目される李強氏に詰め寄ろうとする女性の姿が報じられた。さらにSNS上には、夜の住宅から「私たちはご飯を食べたい!」「物資がほしい!」と、物資を求める叫び声などの動画もアップされている。さらに物流関係者や医療従事者の負担も深刻で、先日には、疲労で倒れたスタッフを、感染者の男性が抱えて運ぶ様子が世界で報じられている。
12日の『ABEMA Prime』では、新たな感染者が確認されたことからロックダウンが続く7624地区に住む程謙さんと、現地で働く藤田康介医師に話を聞いた。
■「なんとか食いつなぐことはできている」
上海市の“西エリア”に住む程謙さんは「自力で物を買うのは非常に難しく、今は政府を信じるしかない。2週間先の解除を期待して、なんとか自分の自由を抑えている。そんな感じだ」と話す。
「4月1日からロックダウンが始まったので、今日で12日目になる。PCR検査と食料品の受け取り以外、ほとんどの皆さんが自宅で過ごしていて、お店も一切開いていない。事前に予告されていたことだったので、ある程度は買いだめができていたが、それでも先週の終わり頃には冷蔵庫から野菜が無くなってしまった。ネットでも注文はできるが、配達員が足りないので届かない。確率でいえば、4つくらいオーダーして1つ届くくらいのイメージだ。そこで政府としても物流を整えようとしていて、周りの地域から届いた野菜や生活必需品を配給していて、うちにも1回目が来たので、なんとか食いつなぐことはできている。
前回は初めてコロナに直面したということもあり、みんなにも恐怖心があった。だから外に出ない方が賢明だと考えられてきた。ただ、あれから2年間が経って慣れてきていたので、そこでまた急にロックダウンというのはきついものがある。これは上海市政府も認めていることだが、そして配達員やその健康状況、スーパーや薬局、医療従事者の不足などに準備不足もあった。きのう私たちにPCR検査をしたのも、上海から150kmくらい離れた江蘇省常州から駆けつけてきたお医者さんだ。そういったところからみんなの間に不満が出てきているのだと思う」。
■「日本の皆さんも注意していただきたい」
一方、“東エリア”に住む藤田康介医師は「急にロックダウンの連絡があり、準備も不十分だった」と話す。
「私は“軟禁生活”が16日目で、外は人もいないし、バスも走っていない。店も閉まっている。しかも同じ建物から1人感染者が出ると7日間延長になってしまうので、きのう感染者が出てしまったうちの建物も、これからまた1週間頑張るということだ。医師としては、皆さんの運動不足が深刻だと思う。散歩にも出られないというのは精神的にも良くない。
ただ、オミクロン株のBA.2系統は感染力が非常に強く、武漢の頃の3~4倍になると思う。無症状が非常に多いというのも特徴だ。上海では21万人の感染者が入院されているが、そのうちの20万人が無症状で、重症者は一例だけ、死者はゼロだ。ところが傾向を見ていると、症状の出る人が徐々に増えている。これからどうなるかは、我々もよく分からない。
また、今回はホテルでの隔離に失敗してクラスターが発生し、全市民にバーンと広がってしまった。そこは上海政府も注意不足を認めていて、今まさに色々な手を打っているところだが、いざという時にはもう手が付けられなくなってしまうし、決して軽いから大丈夫というわけではないということを、日本の皆さんも注意していただきたい」。
■「中国はもはやゼロコロナではない」
その上で藤田医師は、中国政府のコロナ対策に関して、日本には誤解があると指摘する。
「上海にいる者からすると、基本的にゼロではないし、海外からも入ってくる以上、中国政府も“ゼロコロナにはできない”と宣言している。今は“動態的ゼロコロナ”、つまりゼロコロナとウィズコロナの間をいこうという流れだ。つまり、とにかく出るのは仕方がない。仕方ないけども、患者が1人でも出たらとにかく抑えろ、という方法だ。ただ、もっと他の方法がないのか、常に検討はされているし、新しいガイドラインも出た。上海は大都市で初めてオミクロンが出た地域なので、これからが正念場になると思う」。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「二人の話を聞いていると、濃厚接触者のクラスターを潰していった、日本の初期の対応に近いと感じた。やはりコロナ対策に“グローバルスタンダード”は存在せず、それぞれの国がそれぞれのやり方でやるしかない。今回の食料不足の様子を見て日本人は驚くけれど、ヨーロッパでも同じようなロックダウンは行われていたわけだし、食料が不足しているという情報もあったはずだ。
思い出して欲しいのは、メディアは“日本は欧州よりはましだけど、アジアの中で一番ひどい。中国や台湾、韓国はちゃんと抑え込んでいるのに、甘い”と批判していた。それが中国はこういう状況になって強権的なロックダウンを始めると、今度は“中国がひどい”と言う。それはダブルスタンダードではないか。
一方で、先日のアカデミーの授賞式では誰一人マスクをしていなかった。人が死のうが感染者が増えようが関係ない、経済を回すのが優先だというのがアメリカ社会の判断で、中国とは異なる判断をしているということだ。日本も、そうなっていいとは思っていないからこそ、みんながマスクを着けている。前提として、他の国のやっていることにイチャモンつけるのはよろしくないと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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