新入社員の門出から2週間。ネットでは、新人を見守る先輩たちから、すでに「もっと主体的に動いてくれたらな…」「わからないことがあったら聞きに来てほしい」といった声が寄せられている。
【映像】「働くために生きてしまうと人間終わり」“いい子症候群”の若者(※座談会の様子)
そんな若者を中心に増えていると言われるのが“いい子症候群”だ。当事者らは自分たちをどのように分析しているのか。ニュース番組『ABEMA Prime』では、いい子症候群を自負する若者に集まってもらい、座談会を実施した。
▼座談会で出た会話
「誰かの機嫌が悪いと、私が何かしたかなとか思う」(IT業界勤務・ひなこさん 24歳)
「責任あるポジションだと働く時間もものすごく増えると思うから嫌」(イベント業界勤務・みなみさん 25歳)
『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』(東洋経済新報社)の著者で、金沢大学教授の金間大介氏は「人前で褒められるのが怖い。他人の気持ちが非常に怖い。だから自分でもあまり決めたくない。そういった心理が強くなっているのが“いい子症候群”だ」と話す。
目立ちたくない、埋もれていたい。そう考え、上司に積極的に意見しない“いい子症候群”の若者。金間氏は「間違いなく一生出世は望まない。超強力な指示待ち集団なので、主体的になってほしいと思うことが間違い。特に社会人、ここでは大人と呼ぶが、“いい子症候群”でも一見さわやかで若者らしく協調性があるいい返事をして、言われたことは素直に聞く。『わかりました』と言って、作業もしっかりやるように見える。それと目立ちたくない、自分の意見を言いたくない、人の気持ちが怖い、『100人中の1人で埋もれていたい』という感情のギャップが、なかなか掴みどころがないように見える所以ではないかと思う」と特徴を語る。
座談会にも出席した“いい子症候群”当事者のみなみさんは、現在イベント業界で働いている。
「感情のギャップがないように見せることに精一杯。努力しているが、人前で褒められると、どう反応していいかわからない。謙遜するのが正解なのだろうが、あまりにも謙遜すると『何この子』と言われるし、『ありがとう』と言っても調子に乗っていると思われそうで怖い」(みなみさん)
みなみさんの回答を頷きながら聞いていたネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏も「僕も褒められるのは嫌いだ」と話す。
「一般の人たちはいろいろなLINEグループがあって『あいつ調子に乗ってるよね』といって、嫌われることが目に見えない形で広がっていく。うまくいっていない集団は必ずいじめる相手を作る。その相手の文句を言って楽しむ文化がある。そういうときに(いい子症候群の人は)簡単にターゲットになる。いかにターゲットにならないように姿勢を低くして生きていくか。それをみなみさんがやっている」
金間氏によると、いい子症候群の人たちは、過去にひろゆき氏が指摘したような経験をしている人が多いという。
「掘り下げてお話しすると、小学生くらいから自分の友達や知り合いが噂されているのを聞く。それを自分に置き換えて恐怖心を抱いている。これが小学校4〜6年生あたりで起こっている。いい形で目立つことによって、その友達や親しい人たちの中にある自分の像が変わってしまう。それが怖いのだと思う。サイレント・マジョリティと言ったりするが、いい子症候群は、とにかく目立たないように隠れる、先頭には立たないようにする心理が働く。やっぱり他人の感情がとにかく怖い。ちょっとの変化で『自分が変に思われたらどうしよう、どうしよう、どうしよう』と思いながら生きていく。表面的のさわやかさや、協調性の良さが、ある種の自己防衛、生存本能として出ている」
その上で、金間氏は「World Giving Index(世界人助け指数)」のデータに言及。2021年に発表された同データによると、日本の「人助け指数」は125カ国中125位とダントツの最下位だった。
「これをどう解釈するか。『出る杭は打たれる』という表現は、私にはちょっとしっくりこない。そんなに杭を打っている場面を皆さんご覧になっているだろうか。あるいはバンバン出る杭があったら、皆さんは打つだろうか。杭が出ても基本的に興味を示さない、スルーが日本の社会の反応だ。だから、落ちてきた杭をより落とす状況が多く起こる」
ひろゆき氏も「人が1回“出る杭”になったら、一旦落ちることがある。ちょうど十何年前ぐらいに、学校裏サイトが流行った。だから、親や先生が見ていないところで、生徒同士で悪口を言い合う文化が根付いている。10年経って、大人になったとなると『自分の見えないところで誰かが噂しているのは当たり前だよね』という世代がちょうど社会人になった」と見解をコメント。相席スタートの山崎ケイ(※「崎」は正式には立つ崎の字)に「どう思うか?」と投げかけた。
山崎は「私は今年誕生日で40カラット(40歳)になるが、私もいい子症候群みたいなところがちょっとあると思う」と話す。
「最初子どもの頃は絶対みんな褒められるのが好きなはず。でも、人といろいろな関わり方をしていく中で、なんなら目立ちたいと思ってこの世界に入ったのに、目立ったら炎上する。『ちょうどいいブスのススメ』という本を書いたら“そんなふうに女を下げるな”と言われてめちゃくちゃ叩かれた。『叩かれてまで自分のことを言いたくないな』と思いだしたら、目立ちたくない気持ちになる。とはいえ、野心も若いときには持っていたから『わかるよ、あなたの気持ち。私もわかる。でもなんとか頑張ってほしい』みたいな気持ちも、下の世代に向けて正直ある。だから、一番この世代が面倒くさいのかも。もっと上の世代になったら『何でやらないんだ』と言うだけだが、私たちぐらいの年代は寄り添っているようで、実は嫌な思いをさせているのかもしれない」
山崎氏の言葉に、ひろゆき氏は「前に出たり何かやる人は必ず言われる。感受性の高い人は『言われないようにしよう』と引っ込んでいく。そうすると何を言われても気にならない、頭がおかしい僕みたいな人ばかりがメディアに出てくる。もうちょっとまともな感受性のある人が、表に出られる社会の方がいい」と苦笑い。
金間氏は「今の10代後半から20代前半くらいまでを指してZ世代と呼ばれる。ネットを使いこなしてスマホネイティブと言われていて、社会貢献意欲が高いと思われている世代だ。私が提唱している『いい子症候群』は、Z世代全体の半分くらいいると思う。社会貢献欲が高いまでは同じだが、それを踏まえて自分がスマホでできることを探し、社会にアピールして、自己実現していくのは、ほんの少数だ。いまZ世代の中の本当の『いい子症候群』は、例えば本を書く気は全然ないし、そんなことしたら死んじゃいたくなるような若者も多い。そこの違いやギャップが世間とあるように思う」と説明。
続けて、金間氏は「例えば、学生に希望の職種のアンケートを取ると、公務員が1位に来る。国家公務員ではなく、地方公務員だ」と、若者が希望する職業に言及。「国家公務員に受かっても地方公務員を取る若者が増えている。もう1つが、大企業の事務職だ。つまり、大企業の事務職や公務員は、きれいに業務が細分化されていて、そういうものだと若者は思っている」と述べた。
みなみさん自身は、働き方についてどう思っているのか。「昇給できるならちょっとはした方が嬉しい」とした上で「それよりワーク・ライフ・バランス。昇給でメンタルが崩れてしまったら本末転倒だと思う」と、昇給よりもメンタル重視だと話す。
ひろゆき氏から「『こういうプロジェクトを一緒にやろうよ』と言われるのと『これやっておいて』と言われて、それをずっと淡々とやるのだったらどっちがいいのか?」と質問が飛ぶと、みなみさんは「正直『手伝ってくれない?』と言われる方が弱い(よい)」と回答。「その人のためになっているなら……とか、相手が自分をどう思っているかを考えがち。人が喜んでくれる仕事はもちろん好きだし、サービス精神も旺盛なほうだと思う」と述べた。
番組の最後、みなみさんは「Z世代も真面目にこなす力はある。それを活かしながら社会で貢献できることをしていきたいと改めて思った」と感想を語った。(「ABEMA Prime」より)
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