3年連続でのドラフト指名に、これ以上ない形で応えた。将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Aリーグ第1試合、チーム永瀬とチーム羽生の対戦が4月16日に放送され、チーム永瀬の増田康宏六段(24)が個人無傷の3連勝で、チームの勝利に大きく貢献した。ドラフト会議ではリーダー永瀬拓矢王座(29)から、3大会続けて指名を受けてチーム入り。試合前に「リーダーの信頼を得たのかなと、うれしく思います」と語ると、佐藤紳哉七段(44)に2勝、中村太地七段(33)にも勝利した。個人戦だった第1回から5大会全てで出場している経験値と、棋力の向上も合わさり、正真正銘のエースとなる階段を上り始めた。
趣味で鍛える筋肉以上に、その将棋に力強さが光る3連勝だった。同大会は準公式戦ながら、リーダー永瀬王座は勝負に徹底的にこだわるタイプ。力の抜けた将棋を指そうものなら、鋭い指摘が飛んでくるのは2年続けて団体戦を過ごした増田六段なら、よくわかっているはずだ。そんな思いもあってか、開幕局から気合の入った指し回しを見せた。
相手は公式戦では分が悪い佐藤七段。先手番から相居飛車の力戦形に持ち込むと、序盤早々から前例を離れる展開に。難解と思われた中盤で決断よく踏み込むと、ここから流れをがっちり掴んだ。終わってみれば77手という短手数での完勝。「1勝して安心して(作戦会議室に)戻れます。負けていたら、たぶん(永瀬王座に)怒られていたんで」と笑みが出るのも、充実した内容の現れだ。
自身2局目となる第4局も、佐藤七段との再戦だった。対局前の作戦会議で「(佐藤七段は)たぶん矢倉ですね。急戦で行っていいですか?失敗したら結構やばいですが」と相談すると、永瀬王座は「もう、のびのびやってください。ははははは」と笑顔で信頼のGOサイン。序盤は少し佐藤七段に押されたこともあり「作戦負けになって、おそらく怒られているかなと」と苦笑いしたが、それでもじっくりペースを掴んでそのまま巧みな手を作り続けて、またも快勝を収めた。
すっかり若きエースの風格を漂わせてきたところで、回ってきた3局目はスコア3-3の正念場だ。相手はこの日、同じく2連勝と好調の中村七段(33)。昨年大会では大会初の3連投3連勝も記録したことがある棋士だ。好勝負必至の一局は増田六段の先手番から相雁木で進むと、難しい力戦調の中でも中盤からリードを奪い、そこからは慌てることなく一本道。79手と早い決着で3連勝を成し遂げた。
増田六段は第4回大会と第5回大会の間では、ABEMA師弟トーナメントにも出場し、ここでもフィッシャールールへの適性の高さも見せてきた。これまでは個人・団体通じて4連覇中の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、19)、永世名人・森内俊之九段(51)、タイトル経験者の広瀬章人八段(35)らが好成績を収めてきたが、ここにまた新たに「フィッシャー名人」候補が誕生した。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)