勝てばチームの勝利が決まる、そしてここまで個人2連敗。そんな重圧の中で、連続して王手をかけられれば冷や汗もびっしょりだ。将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Aリーグ第1試合、チーム永瀬とチーム羽生の対戦が4月16日に放送された。チーム永瀬の最年少、斎藤明日斗五段(23)はスコア4-3で迎えた第8局に登場。佐藤紳哉七段(44)に最終盤、17回連続で王手をかけられたが、失敗せずになんとかしのぎきり今大会初勝利を手にした。「何が何でも勝ちたかった」という斎藤五段の表情は疲労困憊そのもの。まさに命からがら逃げ切ったという様子だった。
斎藤五段は、その将棋に対するストイックさから「軍曹」とも呼ばれる永瀬拓矢王座(29)に指名され「正直、何かの間違いかと思った」ほど驚いた。「選ばれた時はとても喜びました。かなり練習は積んできたので、その成果が出ればいいなと思います」と試合前こそ笑顔だったが第2局、第5局とタイトル経験者の中村太地七段(33)との競り合いを落とすと、徐々に表情が引きつり始めた。内容そのものは1局目より2局目の方がよくなったが、永瀬王座が1勝1敗、エース増田康宏六段(24)が無傷の3連勝したのを目の当たりにし、迎えた自身3戦目の第8局直前には「まだいいところが出ていないので、なんとか1勝したいです」と声を絞り出した。
相手の佐藤七段も、この一局を落とせばチームの敗戦が決まるだけに負けられないところ。気迫を前面に押し出してきたが、斎藤五段も気持ちで負けず、序盤からポイントを稼ぎ、快調に指し進めていた。ところが終盤、すっと決めきれなかったことで形勢は混沌。最終盤には残り持ち時間わずかといったところから、佐藤七段に17回連続で王手をかけられた。この大ピンチをなんとかしのぎ切った斎藤五段は「本当に終盤が酷くて。途中まで研究通りうまく行っていたんですけど。最後はこちらの王様が詰んでいてもしかたないかなと。運良く詰まなくて、ツキがありました」とぐったり。見守っていた増田六段も「危なかったー」と胸を撫で下ろしていた。
これにはABEMAの視聴者からも、興奮とともに肝を冷やしたというコメントが殺到。「うわぁぁ熱戦だった」「紙一重だった」「明日斗よく耐えた!」「マジで危なかった」といった言葉が並んでいた。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)