羽生善治九段、永瀬拓矢王座と痺れる名局 持ち時間10秒から驚異の粘り「王者の将棋」「これは名局」/将棋・ABEMAトーナメント
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 これが数々の名局を世に送り出したレジェンドの底力だ。将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Aリーグ第1試合、チーム永瀬とチーム羽生の対戦が4月16日に放送された。この第3局で羽生善治九段(51)は永瀬拓矢王座(29)とのリーダー対決で大熱戦。160手で勝利したが、持ち時間が残り10秒まで追い込まれたところからでも踏ん張る粘りが周囲の棋士、ファンの感動を呼ぶこととなった。

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 羽生九段は2021年度にプロ入りしてから初めて年度勝率5割を切る14勝24敗、勝率.368に終わり、名人9期を含み29期連続となっていた順位戦A級からも陥落。最も厳しいシーズンを送っていたが、この一局はタイトルホルダーの一人、永瀬王座に対して「羽生健在」を強く示すような力のこもる戦いとなった。

 永瀬王座の先手で始まった一局は、トップ棋士の間でもかなり多く指されている相掛かり。中でも最新型で、公式戦さながらの研究のぶつかり合いになりそうな出だしになった。すると序盤に永瀬王座が横歩を取る工夫を持ち出し、これにはチーム羽生の佐藤紳哉七段(44)、中村太地七段(33)も「へー」「取るんだ」「取れるの」と頭を悩ませていた。周囲で見守る棋士たちが悩むのだから、対局中に出された相手はたまらない。たちまち羽生九段の持ち時間は減り、まだ序盤から中盤に入るところで残り10秒まで減ってしまった。

 永瀬王座の攻めに対して、羽生九段が時間のない中でどうしのぐかという点が勝敗の分かれ目になったが、ここでレジェンドが本領発揮。粘りに粘って自の耐久力を維持すると、佐藤七段と中村七段は「耐えた!耐えた!」と大興奮。チーム永瀬の増田康宏六段(24)が「強いよ。残り10秒で崩れない」とこぼすと、斎藤明日斗五段(23)も「さすがすぎ。羽生先生、強いな」と舌を巻いた。

 常に最善を求め続け、ぎりぎりで耐えきったところで、難解な中盤を抜け出した後は鋭い反撃。タイトルを総なめにしてきたころから、相手の将棋を受けて立ち、さらに上回ってきたからこそタイトル99期、七冠独占、永世七冠という大記録がいくつも生まれている。羽生九段本人も対局後「結構序盤から乱戦模様になって、こちらが受ける展開になった。気をつけないと、すぐ攻め潰されそうな形なんで、かなり神経を使う一局でした」と振り返ったが、見ている側にとってはまさに見どころ満載の一局だった。

 開幕カードでいきなり生まれた名局に、ABEMAの視聴者からも「王者の将棋」「これは名局」「いいもん見たわ」と、興奮気味の声が相次いで投稿された。過去、この大会で復調の兆しをつかんで、公式戦でも成績を伸ばしたベテラン棋士も少なくない。2022年度、羽生九段の成績が向上した暁には、この一局が大きなきっかけとなっていると思い出す機会があるだろう。

◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

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