2度のダウンを喫してほぼ終了状態から、まさかの3ダウンを返して相手を豪快にノックアウト。2分19秒で5ダウンが飛び交う歴史的な大逆転劇に視聴者が騒然となった。
4月22日に開催されたONE Championship「Eersel vs. Sadikovic」。リアム・ハリソン(イギリス)とムアンタイ・PK・センチャイ(タイ)の一戦は、2分半に5つのダウンが飛び交うジェットコースターのような展開。手に汗握るダウンの応酬に視聴者から「マンガみたいな試合」などの反響が多数寄せられた。
ムアンタイはムエタイ200勝の戦績を持つ元世界王者、およそ2年間のブランクを経ての試合。ONEでムエタイ勢としのぎを削ってきた36歳のベテランであるハリソンとの対戦は、試合開始から“瞬き厳禁”の激しい攻防となった。
前蹴りやミドルで前に出るムアンタイ。すると開始1分、ムアンタイが左ハイを振り抜いてハリソンの側頭部を捉える。この一撃にハリソンはたまらず天を仰ぐようにダウンを喫した。すぐに立ち上がるも追い打ちの右、左を立て続けに被弾してハリソンは早々に2度目のダウンを奪われてしまう。
あまりに呆気ない展開に試合を中継したABEMAの視聴者からは「(ハリソン)弱いぞ」「もう無理だろ」「ハリソンは格下の選手だね」など"勝負あった”というコメントが並ぶ。
無理もない。開始から1分半、怒涛の展開にハリソンは虫の息である。しかし、ここから劇的な展開に突入する。左のヒジを空振りしたムアンタイに今度はハリソンがフルスイングの右フックを打ち込む。これをまともに受けて前のめりとなったムアンタイに対して、ハリソンはさらに左を当ててダウンを1つ奪い返してみせた。
その瞬間「なんて試合だ!」と実況を務めた西達彦アナウンサーが絶叫。立ち上がったムアンタイだが、足元はフラフラだ。一方、序盤のダメージを感じさせないハリソンはコンパクトな打撃を叩き込む。このハリソンの攻撃にムアンタイはこの試合2度目の前のめりダウンを献上してしまう。
もはや完全に形勢は逆転。意識朦朧のムアンタイに対して、息を吹き返して一気呵成のハリソンが連打を叩き込んでノックアウト。ドラマティックな大逆転劇に対して「まるでマンガのような試合」「1ラウンドで5回ダウン」と興奮ぎみの声が殺到した。
予想を裏切るハリソンの大逆転劇。試合後、2度のダウンなど遥か彼方、ピョンピョン飛び跳ねて喜びを爆発させるハリソンに対して、ムアンタイは呆然自失状態。そんなハリソンは「瞬きしたら床に倒れていた。立ち上がり、また床に倒れこんだ」と2度のダウンシーンを回想。続けて「ガムシールド(マウスガード)を噛まなきゃって思ったんだ。俺はリーズの荒れた地域の出身。"戦争に行くんだ”と目が覚めた。失うものは何もない。ライオンと殺るか殺られるかなら、奴らはもっと危険だ。相手が倒れるか、俺が倒れるか、最後まで戦い続けたんだ」と奇跡の逆転について興奮気味に振り返った。
直後、傑出した勝者に贈られる5万ドルの勝利ボーナスを上回る10万ドルのボーナス支給が告げられると、興奮状態のハリソンは歓喜のエアギター・ダンスからガッツポーズ。続けざまにノンオー・ガイヤーンハーダオへのタイトル挑戦が告げられると「キャリアは終わりの方。ことはそう上手くはいかない。俺は車椅子に乗った老人になり、ベッドから出られなくなる。でも今の俺は野獣だ。長く待たせないでくれよ」とタイトル戦の早期実現に向けて意欲を示した。