WBOミニマム級タイトルマッチが22日、後楽園ホールで行われ、チャンピオンの谷口将隆(ワタナベ)が挑戦者2位の石澤開(M.T)に11回2分29秒TKO勝ちで初防衛に成功した。挑戦者が前日計量で失格という異常事態の中、チャンピオンが鉄のハートでしっかりベルトを守った。

 石澤は前日計量でリミットの47.6キロを2.3キロも超過。両営の話し合いにより、石澤には試合当日の17時30分にリミットからプラス3キロの50.6キロ以下という再計量が課せられ、これをクリアできなければ試合は中止という取り決めが交わされた。石澤が条件をクリアし、試合開催が正式に決まったのはゴングの3時間前だった。

 それでもこれでひと安心という訳にはいかなかった。心配されたのは両選手のモチベーションと石澤の体調だ。谷口は勝てば防衛だが、WBOルールによって負けるとベルトを失うという理不尽な状況での試合だった(他の主要3団体は体重超過の挑戦者に負けてもベルトを失わない)。計量に失格した石澤への複雑な思いもあるはずで、気持ちの作り方が不安視された。

 一方の石澤も自らの失態とはいえ、悪意があったわけではなく、大舞台を台無しにして精神状態はズタズタになっていると予想された。しかも丸2日は固形物をほとんど口に入れられず、コンディション面からもまともな試合ができないのではないかと予想された。

 試合をするべきではない、と考える関係者もいた。そのような状況の中、ファンの前で世界タイトルマッチという特別な試合を提供できたのは、この窮地を克服しようとした両ファイターの強い意志だった。

「気持ちはすぐに切り替えられた。試合になれば勝つか、負けるか、やるか、やられるか。勝つことだけを考えた」(谷口)

「失態を犯したにもかかわらずチャンスをいただいた。お客さんの満足するパフォーマンスを見せる」(石澤)

 試合は序盤からパンチの交換が盛んな軽量級らしいキビキビとした試合になった。その強打から“マイクロ・タイソン”のニックネームを持つ石澤が仕掛け、技巧派サウスポーの谷口がこれをいなしながら試合をコントロールしていく。「思ったよりも動けた」という石澤が序盤は奮闘し、谷口と互角の戦いを演じた。

 しかし、2019年9月の日本タイトル挑戦者決定戦で石澤に判定勝ちしている谷口が徐々に挑戦者を引き離していった。巧みにポジションをずらし、上体を柔らかく使って石澤の強打を空転させ、左ボディアッパー、左フック、右アッパーをコツコツと挑戦者に打ち込む。決して派手ではないが、玄人好みのゲームメイクは谷口の真骨頂だ。

 ズルズルと失速するのではないかと思われた石澤も踏ん張った。中盤からラウンド終了のゴングが鳴る度に両拳を突き上げたり、グローブで自分の胸をバンバン叩いたりしたのは「気持ちが切れないように自分を鼓舞した」から。計量失格の“罪滅ぼし”は試合をいかに盛り上げるかにあった。

 谷口は8回からさらにリードを広げていく。試合後に「全然余裕はなかった」と明かしたのは意外だったが、スキを見せないチャンピオンに勝利を決定づけたのは11回。左を好打したところで、ストップのタイミングを計っていたレフェリーがTKOを宣告した。

 試合後、勝利者インタビューで谷口はこう言った。

「石澤選手はこれから罰(計量失格のペナルティー)を受ける。すごく反省したと思うので、今回のことではなくこれからの彼を見ていただけたらと思う。プロボクサーとして失敗はダメだけど、失敗から何かがあると思う」

 ややもすれば後味の悪い終わり方になった今回の試合。谷口がチャンピオンとして石澤を受け入れ、両選手ともに限られた状況の中で力を出し切り、集まった観衆から大きな拍手をもらえる試合となった。

 それにしても石澤はなぜ減量に失敗してしまったのか。試合後に本人、陣営が明かしたところによると次のような事情があった。

 石澤は試合が決まってからの走り込み合宿で足を痛め、ロードワークが思うようにできずに調整が遅れた。その結果、減量の仕上げとなる最後の“水抜き”が予定の4キロから6.4キロになってしまった。オーバーしたウエートが2.3キロだから、計算上もつじつまは合う。もちろんそれが「何の言い訳にもなりません」(石澤)というのは本人が一番分かっている。

 計量に失格した石澤に同情的になるのは良くないだろう。とはいえ軽量級離れした強打と強気なファイトスタイルはやはり魅力で、この日のパフォーマンスを見ても今後に期待したい選手だ。将来性のある25歳には失敗から力強く立ち直ってほしいと思う。

 盤石の試合内容で防衛に成功した谷口は「性格的にも挑戦でもぎ取るより防衛のほうが性に合っている」と語るように、「負けないボクシング」で長くベルトを守るのではないかと予感させた。対戦相手の計量失格という不足の事態を経験し、チャンピオンとしてその幹をひと回り太くした。互いに収穫のある世タイトルマッチだった。

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