23日のABEMA『NewsBAR橋下』に出演した橋下徹氏が、東京都立大学の木村草太教授(憲法学者)と対談。法を学んできた弁護士としての立場から、有事と自由の問題について思いを語った。
ロシアによるウクライナ侵攻、そして日本の防衛政策について議論した橋下氏。「今までの憲法9条をめぐる議論というのは、“どういう装備まで持てるんだ”とか、“どういう軍事力の行使ができるんだ”ということが細かく議論されてきたんだけど、ある意味で“戦争がないこと”を前提に語られていたと思う。それが今回、戦争中こそ憲法の考え方がものすごく重要だと痛切に感じた」と問題提起。
「子どもが大学で法律を勉強していて、憲法の話になった。その時に、“戦争になったときには、憲法22条の居住移転の自由が最も重要になる”という話になった。要するに、国外に出る自由の問題だ。ウクライナは政治の判断として、18〜60歳まで男性について国外退避を禁止することになった。家族と一緒に国外に逃げたい、だけど国に“残ってくれ”と言われているから逃げられない、と。女装して脱出しようとした男性、夜中に脱出しようとした男性もいたと報じられているが、今の日本で考えれば、“逃げる自由”を認めないのは絶対に許されないこと。でも、こういう問題は戦争が起きていない間は、あまり語られることはない。
でも、コロナ禍で移動の自由が規制されやすいような状況にもなって、“水際対策”として、外国から人が入ってくることも止めちゃった。これが安全保障の話、有事の話とくっついたときにどうなるのか、というのは本当に重要な問題だ。僕が30年前に憲法を勉強したときには、テーブルには乗ってなかったなと思う。こういう、“戦争中の憲法論”がこれから重要になると感じているし、政治家がそういうことを頭の中にちょっとでも入れておけば、法律を作ったり、命令を出したりするときにちょっと“ひっかかり”が出ると思う」。
その上で橋下氏は「そういう意味では、政治家には改めて憲法を学んでいただかないといけない」と訴えた。
「むしろ憲法というのは、大きな権力を行使するときに歯止めとなるものとして政治家に必要だ。今までの憲法の議論は、先の戦争の反省に立って、“国家を守るために個人が犠牲になるというのは良くないよね”、という前提で議論が積み重なってきたと思う。それでも有事の時には、どうしてもやっぱり“国家のために”ということになってくる。憲法の柱となる13条では、個人の尊重や幸福追求権を規定しているわけだし、もしそういう状況になってしまったときに、なんでもかんでも国家のためとか、独立や尊厳のためといった抽象的なもののために国民の命が簡単に犠牲になるような政治は我慢ならない。だから僕は僕なりに考え方を伝えている。こういう問題について憲法学界にも声を上げてほしいと思うし、今年の憲法記念日には大きな話題にしてほしい」。(ABEMA『NewsBAR橋下』より)