先週、自民党の安全保障調査会が国家安全保障戦略などの改定に向けた提言を岸田総理に提出した。
今回の提言について、2日の『ABEMA Prime』に出演した元衆議院議員で弁護士の菅野志桜里氏は「“自衛の範囲”を柔軟に広げていこうという方向性だと思うが、“専守防衛の必要最小限度は時々の国際情勢等を考慮して決定”という部分が気になる。日本の裁判所は必要最小限度を超えたかどうかについては全く言わない以上、実質的にはキャップを外すということではないか。また、対GDP比で1%から2%にする、ということが大事なのか、それとも防衛予算を5兆円から10兆円にするということが大事なのか。後者なのであれば、積み上げの議論があって然るべきだ」と指摘する。
これに対し、元防衛大臣で自民党安全保障調査会の顧問として提言の取りまとめに関わった稲田朋美衆議院議員は「例えば、かつての北朝鮮は日本に届くミサイルを1発も持っていなかった。それが今は200発以上、しかも様々な種類のミサイルを持つようになった。そのようにして周囲がどんどん変わっていく中においては、必要最小限度の範囲も変わっていくと思う。また、これは反撃能力の議論にもかかって来るが、今は発射されたミサイルをイージス艦からのミサイルで撃ち落とし、撃ち損ねた場合はPAC3から撃ち落とす、という2段階のミサイル防衛になっている。しかし飽和攻撃といって同時に何発も撃ってくる可能性があるとすれば、敵基地などを攻撃できる能力は持つべきだと思う」と回答。
「もちろん、1%を2%にするというよりも、5兆円を10兆円だ。しかし“自分の国は自分で守る”という意志を示すためにも、2%という数字を出すことも重要だ。そのことで世界第3位の防衛予算になってしまうという意見もあるが、日本を取り巻く安全保障環境は世界のどこより厳しいと言っても過言ではない。今回の提言の中で中国に対して重大な脅威だと言っているが、国連の常任理事国で核保有国であるロシアが武力によって紛争を解決しようとしていることから考えても、多いということはないと思う。
また、具体的な内訳までは出していないが、積み上げの議論もあった。例えば今は5兆円のうち2兆円が人件費、装備費の購入が8000億、修理費が1兆円だ。それから基地対策費が5000億、光熱費・燃料費が2000億。施設整備は1800億。あと研究開発費は1600億となっている。先日の『ABEMA Prime』で元陸将の方が“訓練すらままならない。弾がない”とおっしゃっておられたが、宇宙・サイバー・電磁波での戦いについても遅れているし、私が視察した女性自衛官の隊舎はボロボロだった。また、研究開発費も、日本の研究開発予算全体の4兆円からすれば少ない。反撃能力もいきなり持てるわけではないし、経済安保の観点からも国産の装備品は増やしていく必要がある。そして防衛装備品の移転ができれば、成長戦略になるという考え方もあると思う」。
さらに菅野氏が「日本とアメリカが相談することは大事だと思うが、その前に日本国民にきちんと相談することが大事じゃないか。これまではアメリカが攻撃力を持って抑止し、日本は“やっても無駄だよ”と守りを固めることで抑止するという役割分担があった。自民党政権はそれを変えましょうという話なのか、それとも集団的自衛権の行使を一部認めた時点ですでに変わっていて、その延長ということなのか。いずれにしろ、政府与党が国民と話し合いをするプロセスが必要だと思う」と尋ねると、稲田氏は「基本的な役割分担は変えていないし、今回だって変えていない。反撃能力を持つということも必要最小限度のものだ」と説明した。
また、イェール大学助教授、半熟仮想株式会社代表の成田悠輔氏は「ウクライナ情勢や東アジア情勢を考えて安全保障を強化するというのは必要なことに思える一方、日本は経済成長しているわけではない。防衛費を増やすとしても、何を犠牲にするのか。増税することになるのだろうか」と問題提起。これに稲田氏は「優先順位をつけるということもあると思うが、どこから持ってくるかという財源の話はこれから」と答えた。
加えて成田氏は「今回の提言には盛り込まれていないが、安倍さんや菅さんは最近、核共有に関する議論をしてもいいという発言をされたりもしている」と質問。
稲田氏は「私は核に関する議論はすべきだと思う。もちろん相手の国を殲滅するような戦略核も、核を載せるようなICBMも持つべきではない。しかし、議論すらしないというのはおかしいし、議論をしたからといって、いっぺんに核共有しましょうという話にはならない。まずはどういう場合にアメリカが核のボタンを押すのか、その手順などの検証、確認、協議をしましょうというのが、安倍さんがおっしゃった核共有の議論だ。今回の提言の中では盛り込まれなかったが、自民党の多くの議員がそういう考え方だということだ」と話した。(『ABEMA Prime』より)
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