自民党政務調査会のデジタル社会推進本部は4月26日に「デジタル・ニッポン 2022~デジタルによる新しい資本主義への挑戦~」と題する提言を公表した。
その作成に関わったのが、デジタル社会推進本部の座長代理で、岸田総理に説明も行っているという平将明衆議院議員だ。平議員は2月の衆院内閣委員会で「新しい資本主義とは具体性は何なの?とみんなが注目していく中で、ひとつの柱としてWeb3.0を位置づけることが極めて大事」と主張、党NFT政策検討プロジェクトチーム座長としてはホワイトペーパー「Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略」を作成した。
■「3カ月先にはどうなっているかわからない」
平議員が注目する「Web3.0」とはどのような概念なのだろうか。
「インターネットを通して世界中の情報が取れるようになり、電子メールの送受信もできるようになった非常に画期的な時代がWeb1.0だ。さらにSNSが登場して、ある日突然スターが生まれたり、田舎の居酒屋に世界中の人が集まるようになるようになった時代がWeb2.0だ。テキストだけでなく画像や動画、音楽も投稿できるようになるなど、SNSは進化を遂げてきた。一方で、これら一部のプラットフォーマーやその創業者に富が集中する結果を招いた。また、自分が気持ち良くなるものばかりを見聞きしてしまう世界なので、右と左、あるいは自分とは異なる意見を持った人は敵だ、といったような社会の分断も生み出してしまった。そこから出てきたのが、Web3.0だ。
インターネットと聞くと、でかいサーバーがドンと置いてあって、誰かが管理をしていている、というイメージがあると思う。しかしWeb3.0では、皆で共同運営をしているイメージだ。それには手間も電気代もかかるので、対価として改ざんのしにくい“トークン”がもらえる。そのベースにあるのが、ブロックチェーン技術だ。例えば“メタバース”もWeb3.0の世界の話だ。リアルの六本木よりも仮想空間の六本木に人が集まるようになれば、そこに広告を出そうとか、そこのビルを買おうといった動きが出てくる。その権利を証明する、いわば“デジタルの登記簿”のようなものが、ブロックチェーン技術を用いたNFT(非代替性トークン)ということだ。
つまりWeb3.0では、自分の情報はプラットフォーマーのものではなく、暗号資産やデジタルアートなどのデジタルアセット(資産)も含め、自分で所有をすることができるようになる。皆さんがアップした動画に皆さんのデジタルアセットだし、それがNFT化されれば、使用権や会員権のような形で売買するといったことも可能になる。そしてNFTを用いれば、今までのリアルなアートの世界では美術商しか儲からなかったのが、転売されるたびにクリエイター本人にもフィーが入る仕組みを作ることもできるだろう」
とはいえ、Twitterを買収したことで話題となっているイーロン・マスク氏が「誰かWeb3を見た人はいるかい?見つからないのだが」とツイートするなど、実態が掴みづらいWeb3.0に対する懐疑的な見方は根強い。
平氏は「皆さんはイーロン・マスクさんの言うことを素直に信じすぎる(笑)。実はマスクさんはWeb2.0で一番進んでいる人で。テスラの車は、いわば“Web2.5”だ。つまり、世界中で走る車がIoT端末になっていて、吸い上げた情報をAIに読ませ、自動走行が進化している。彼がこのツイートをしたのは去年12月だが、3カ月後にTwitterを買収するとは誰も思わなかったのではないか。いきなりWeb2.0のTwitterをWeb3.0の世界に持ってくる可能性もあるだろうし、3カ月先にはどうなっているかもわからないと思う」。
■「NFTだけを見ていると見誤る」
では、自民党がWeb3.0に注目する理由はどこにあるのだろうか。平議員は「NFTだけに注目していると見誤る」と話す。
「“大人の事情”から“NFT”がついたプロジェクトチーム名になり、私も平井さんから担当として指名されたが、ブロックチェーン、暗号資産、NFTの先にはメタバースはもちろん、DAO(分散型自律組織)とかDeFi(分散型金融)のような実社会と同様なものが出てくる世界観になってきた。
例えば資本主義の主役は株式会社で、お金を持っている人が投資をして株を持し、企業は頑張って儲け、株価を上げようとする。結果、株主や創業者には配当が行き、資産が増えることになるが、頑張った従業員の人たちの給料はすぐには変わらない。しかしDAOでは、コミュニティーで汗をかいた人は正社員であれアルバイトであれ、もっと言えば、お客さんにまでトークンという形で利益が分配されることになるかもしれない。これは株式会社以来の大発明じゃないかという見方もあるくらいだ。
さらにWeb3.0では、コストが圧倒的に安くなる。例えば人が欲しい企業と、企業にスキルを提供したい人材がいたとすると、今の世界感では人材会社が間に入ってマッチングをすることになる。金融においても、証券化などをする際、信託銀行や証券会社が間に入って準備をすることになる。ブロックチェーンを使えば、100円単位から投資ができるようになるかもしれない。
一方、NFTについていえば投資家保護や消費者保護の問題が出てくるし、暗号資産については税制の問題が出てくる。日本でトークンを発行するビジネスモデルのスタートアップをやろうとしても、今の制度では1円も法定通貨になっていない時点で時価評価され、税金がかかってしまう。例えばイーサリアムと同じ土俵で戦っている渡辺創太さんという27歳になったばかり方は、あまり英語が得意ではなかったし、日本で起業したいという思いがあったにも関わらず、外国へ行ってしまった。これがガバナンス・トークン問題という人材流出問題だ。
実際、Web3.0とブロックチェーン界隈では“お前、日本でだけは起業するなよ、潰れちゃうから”と言われているという。このままブロックチェーン技術を頑張らなければ、Web2.0で日本からプラットフォーム企業が出てこず、GAFAを擁するアメリカに株価で差を付けられてしまった。アメリカもWeb3.0に乗ってくる中、手をこまねいていればバブル崩壊後のままになってしまう。
やはり成長戦略で爆上がりするところに賭けない理由はないし、日本はアナログであることが弱みといわれるが、観光にしても食にしてもアートにしてもサブカルにしても、ものすごく良いものを持っている。ただ、その値段が国際的に見て安すぎる問題があり、そこにWeb3.0が使えるということだ。例えばミシェランの星を取っているが、予約が取れないレストランがある。そこでNFTを発行し、価値観が合う人たちがしっかり予約を取れるようにする、あるいは人口800人の山古志村では、錦鯉NFTを発行し、持っている人はデジタル村民になって知恵を出し合っている。Web1.0とWeb2.0の上にWeb3.0があり、アナログの価値を最大化するために使っていく戦略もあるということだ」。
平議員の説明を聞いていたEXTのりんたろー。が「実際に僕たちの生活がどういうふうに変化していくか、まだ想像がつかないが、Web3.0に向けて僕たちは何をすべきか」と質問すると、平議員は「注意しなければいけないのは、“この暗号資産は絶対儲かる”というような話だ。芸能人仲間で出てくるかもしれないが、気を付けて欲しい。絶対に値上がりする暗号資産なんて誰にも分からないし、芸能人だから特別な情報が入ると思ったら大間違いだ。逆にカモにされてしまう」と苦笑していた。(『ABEMA Prime』より)
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