山口県阿武町が新型コロナの給付金4630万円を誤って振り込んだ問題で、警察は18日夜、誤振込であることを知りながら現金400万円を決済代行業者に振り替え、利益を得た疑いで24歳の男を逮捕した。
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マスメディアでは男がつぎ込んだとされる「ネットカジノ」の分析や、弁護士が報道陣に示した資料をもとにした男性の銀行口座の入出金記録の分析などが盛んに行われているが、銀行や自治体の対応に問題はなかったのだろうか。
『ABEMA Prime』に出演したジャーナリストの堀潤氏は「マネロンなど、犯罪を未然に防ぐために金融機関の役割は大きいはずだ。実際、個人も含め海外送金のためのやりとりは大変厳しくなっていて、僕も銀行からいちいち電話がかかってきたり、取引を迅速に進めるために誓約書にサインしたり、という経験もしている。あるいは、ちょっとまとまった額のお金が口座に振り込まれると電話がかかってきて“運用しませんか”と。つまり銀行は取引を見ているということだ」と指摘する。
「それだけに、4000万円以上ものお金を振り込むという時に、銀行は何の反応もしなかったのか、どのような確認の手続きを取っていたのかが気になる。メガバンクの関係者に話を聞いてみると、実は行政から個人に、というところで確認はしづらいかもしれないと言っていた。それでも今回の取引のどこにどういうエラーが起きていたのか、各ステークホルダーにきちんと話すべきだと思うし、そこは取材で問うていきたいところだ」(堀氏)。
これにコールグリーン法律事務所代表の津田岳宏弁護士は「地上波のテレビ番組を見ていると、“この若者がけしからん”という論調になっているが、彼は“誤振込”をされた側だ。こういう言い方は適切かどうか分からないが、4000万円ものお金が振り込まれなければ、もしかしたら平穏な人生が送れたかもしれない。こういうことが起きないよう、整えていくことが大事だ」と応じた。
さらに近畿大学情報学研究所の夏野剛所長は「町役場は公共団体だし、金融機関は準公共団体と言ってもいいくらいの存在なわけで、原因がミスだったとしても、これが欧米なら男性の口座をすぐに凍結していたと思う。どこの銀行に振り込まれたのかは分からないが、地銀であれば地方自治体も知らない仲では無いはずだし、なんなら金融庁に電話1本かければよかったのではないか」と首をかしげる。
「僕も海外送金しようとすると“何のためにやるのか。この資金はどうやって手に入れたのか。給料か。株の投資か”と、そんなことまで銀行は聞いている。つまり、それが裁量というものなのに、今回の問題で口座の凍結ができない道理がないだろう。個人の権利を守るのは大切なことだが、今回のケースは違うのではないか。仮に裁判になって“これは俺のお金だ、口座の凍結を解除しろ”と反論されても、勝てるはずだ」(夏野氏)。
津田弁護士も「勝てるだろうが、銀行はリスクを取らないし、責任を取ることを嫌がる。担当が責任を取りたくないから、そこに集約されると思う」との見方を示した。
また、モデル・デザイナーの長谷川ミラは「ミスがあるからしょうがないよね、ということで自治体が被害者のようになっているのはどうなのか。報道が24歳の男性ばかりに注目が行き過ぎではないか」、堀氏は「TikTok上は“私が4000万円の男性です”“町が高圧的な態度をとって、会社を辞めなければならなくなったんだ”というような、本当かウソかわからない動画がいっぱい出てきて大変なことになっている。情報を整理して、原因の解明を急いでほしい」と、騒動の発端となった自治体側の問題にも言及した。
夏野氏は「人間だからミスが起こるのは当たり前だ。一方で、“返すのが当たり前だよね”という雰囲気になっているけれど、そこにはすごく複雑な気持ちもある。本当に“そのまま返すのが当たり前だ”って言っていいのだろうか。仮にこれがアメリカだったら“いま決断すれば200万円あげるから、4630万円は返してください”というビジネスディールになる可能性もあるのではないか。町はそういう交渉の権限も持たされていないだろうが…」と問題提起。
津田弁護士も、「弁護士が出てきて、司法取引のようになっていたかもしれない。その意味では、町がちょっと高圧的だったし、やり方が下手くそだなと思った」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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