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 鶴谷香央理のマンガを狩山俊輔が実写化した映画『メタモルフォーゼの縁側』が、6月17日より全国ロードショー。本作で芦田愛菜は、人付き合いが苦手でBLマンガをこっそり読むのが毎日の楽しみな女子高生・佐山うらら役を演じる。

 芦田と共にメインキャストを務めるのは市野井雪役を演じる宮本信子。BLマンガを通して出会った17歳の女子高生と、75歳の老婦人の友情物語が描かれる。本作ではうららと雪の愛情あふれるやり取りが随所で繰り広げられるが、芦田は宮本との演技を振り返り「本当に楽しかった」と語る。

私はどちらかというとみんなでワイワイやりたいタイプ

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――原作マンガは読んでいましたか?

オファーをいただいてから読ませてもらいましたが、率直に“この物語が好きだ”という印象でした。自分にちょっと自信がなかったりするうららが、好きなマンガを通じて雪さんとお友達になって、そこから生き生きとしていく姿を見ると、私も「好きなものは好きだ」と自信を持って言っていいんだと思えたというか。“自分のことをもっと認めてあげてもいい”と背中を押してくれるような作品だと思うんです。うららが雪さんに受け入れられていく姿を通して、私自身もこの作品にあたたかく包み込まれていくような感覚をもらえて。

――芦田さんと宮本さんが共演するのは、2011年公開の映画『阪急電車 片道15分の奇跡』で、孫と祖母役を演じて以来です。時を経て、今作では宮本さんとお友達という関係ですね。

宮本さんとクランクインが同じ日だったんですけど、「これからよろしくね。頼んだわよ」という声をかけてもらって、それがすごくうれしかったです。インする前は結構緊張していたんですけど、初日から、うららが雪さんに認めてもらったような気持ちにさせてくださったんですね。そのお陰ですごく演じやすかったです。

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(c)2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会

――そんなうららを演じる上で、芦田さんはどんな肉付けをしていったのでしょうか?

私の中で、原作のうららの雰囲気を壊したくないという気持ちが強くありました。原作で描かれているシーンは、撮影に臨む前に読み返して、表情を確認したりしましたね。原作にないシーンでも、原作を参考にしつつ、演技プランをしっかり考えて、うらら像を自分の中で掴んでいくようにしました。

――うららは学校内のいわゆる“隠キャ”だと思います。芦田さん自身との差は感じますか?

私はどちらかというと、みんなでワイワイやりたいタイプなんです(笑)。楽しむ時は全力で楽しまなきゃダメだと思っているので。その一方で気にしいではあるので、そういう意味ではうららと自分が重なりました。共感できる部分はすごくありました。

密かに親近感を抱く瞬間でした

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――豪華なキャストさんとの共演でしたが、撮影の中で強く印象に残っていることは?

縁側での撮影はすごく印象に残っています。縁側は題名にも出てきますけど、演じていて雪さんがうららをあたたかく包み込んでくれる大事な場所だと感じました。そんな宮本さんとのお芝居はすごく楽しかったんです。頭で必死に考えてお芝居をするというより、やり取りをする中で自然と体が動いてしまうような感覚をもらえて。宮本さんはそういうものを引き出してくださって、毎日撮影が楽しかったです。

――そんな宮本さんとは、撮影の待ち時間にどんなやり取りを?

ずっとたわいもない話をさせていただいていたんですけど、そんな中で、雨が降って濡れてしまうシーンの前にふと宮本さんが「雨が降って濡れちゃうの? あら、楽しそうじゃない」と仰っていたんです。私も水遊びが好きだったりするので、そこは密かに親近感を抱く瞬間でした(笑)。

――狩山監督に現場で言われた印象的なディレクションは?

幼なじみの河村紡がうららを「うらっち」と呼ぶように、狩山監督も私のことをうらっちって呼んでくれたんです。これまで役名で呼んでくれる監督さんは結構いたんですけど、親しみを込めてあだ名で呼んでいただけたことが私はうれしくて。監督とはお芝居についてや、そうでないことも、いろいろお話させていただいたんですけど、お芝居でちょっと上手くいかなかったなと思った時に、それを察して「うらっち、もうちょっといけるよね」と、背中を押してくださったんです。

――そうなんですね。 小さなシーンでも妥協せずに撮ってくれたというか。

普段たくさんお話させていただいていた分、私の納得がいってない表情をすぐに察してくださいました。コミュニケーションをたくさん取っていたからこそ、監督と気持ちをシンクロさせることができたんだと思います。

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(c)2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会

――先ほど少し話題にあがりましたが、“つむっち”“うらっち”と呼び合う河村紡演じる高橋恭平なにわ男子)さんとの芝居についても教えてください。

まず、私には幼なじみがいないので、こういう関係はすごく羨ましいと思いました。幼なじみって家族でも恋人でもないし、でも隣にいてなんだか安心できる関係だと思うんです。そういう距離感の紡ってうららにとってどんな存在なんだろうと思いながら演じていたんですけど、高橋さんはフレンドリーに接してくださったので、そういう部分が自然と構築できたというか。高橋さんが相手だったからこそ、現場ではあまり悩むことなく、“つむっち”と“うらっち”の関係性を表現できたんだと思います。

――芦田さんは著書『まなの本棚』(小学館刊)を上梓するほどの“本好き”として有名ですが、うららのアルバイト先は本屋でしたね。

役とはいえ、本屋さんでアルバイトができたのは良い経験でした。小さな頃から本が好きで、本屋さんで働きたい気持ちがあったくらい、本屋さんはずっといられる場所です。本を眺めているだけで飽きないし、紙の匂いも大好き。なので、あそこでバイトをしているうららが羨ましかったですね(笑)。

宮本さんとのお芝居は本当に楽しかった

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――うららの趣味はBLマンガを読むことですが、芦田さん自身の趣味は何ですか?

高校に入ってから、世界史に魅了されました。世界がつながっていく過程を知ることが面白くて、好きになったんですけど、そこから派生して、西洋絵画とかのジャンルにも興味が出てきました。学校では同級生に世界史が好きな子がいて、その子とはその共通点で仲良くなりました。クラスが離れてからも、仲が良いので、好きなもので人と繋がっていく感覚はすごく理解できます。

――映画ではうららがチャレンジしていく姿勢も描かれていますが、芦田さんは新しい世界に飛び込んで行く時は大胆になりますか? それとも割と準備は入念に?

何かに飛び込んでいくときはすごく悩みます。飛び込んだ後で後悔することもあると思うんですけど、そういう時こそ“自分があれだけ悩んで決断した先に今がある”と思いたいというか。準備はしたつもりでも、それがずさんで失敗したこともあるんですけど(笑)、考え抜くことは大事だと思っています。

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――それこそ幼少期から芸能という世界に飛び込んで、長きにわたって女優として活躍している芦田さんですが、今後お芝居していく上での目標は?

目標と呼べるかはわかりませんが、いつも演じる上で心がけているのは、芦田愛菜が役に出ないようなお芝居をしたいということです。その役を演じた私というより、その役の子が“どこかで本当に生きているんじゃないかな”と思ってもらえるようにしたいというか。芦田愛菜というより、その役の子自体のファンになってもらいたいと思っています。

――芦田さんにとって“表現する喜び”とは何でしょうか?

それこそ、この作品で宮本さんとお芝居させてもらった時間は本当に楽しくて、うれしい経験でした。宮本さんは、うららと雪さんの関係のように、私の背中を押してくださったし、お芝居で引っ張ってくださいました。自宅では撮影現場のイメージをすることもあるんですけど、想定していたもの以上の力がこの現場では湧いてきたんです。演技をしていて、相手の役者さんと“息があった”と感じられる時が1番楽しいので、そういう気持ちに改めて気づかせてくださった現場だったと思います。

――では芦田愛菜として今後、挑戦してみたいことは?

お料理に挑戦してみたいです(笑)。まだお手伝い程度しか出来てないんですけど、家にあるものでパパパッと料理できる人ってかっこいいなって思うんです。いつか親にも手料理が振る舞えたら良いですよね。“何を作るか”ですか? 母が作ってくれる煮物料理が大好きなので、私も肉じゃがとか筑前煮などの家庭料理を作ってあげたいですね。

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取材・テキスト / 中山洋平

撮影 / 藤木裕之

芦田愛菜出演『うさぎドロップ』
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