政治はもうAIでいい? 投票は本当に“遠回り”なのか 「悪い政治」を取り除くために
【解説】当選しないと“死に票”に…「政治ってコスパ悪くない?」専門家の答えは »

 6月22日公示、7月10日投開票の日程で政府・与党が調整している今年の参院選。前回の参院選(2019年)の投票率を見ると、50代は55%、60代は63%と過半数を超えているが、過去に比べると減少傾向にあり、40代は45%、20代と30代に至っては、30%台にとどまった。

【映像】年代別に見ると…グラフで分かる投票率の推移(画像あり)※冒頭

 若い世代だけではなく、投票に行くのがもはや「普通」とはいえない日本の選挙。「国は勝手に動くから、自分たちには無関係」で本当にいいのか。

 ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、『17歳からの民主主義とメディアの授業:ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください』(日本実業出版社)の著者で、公共政策に詳しい東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏に話を聞いた。(聞き手:柴田阿弥キャスター)

政治はもうAIでいい? 投票は本当に“遠回り”なのか 「悪い政治」を取り除くために

■そもそも「良い政治」って何?

西田:意外と難しい質問ですね。逆に柴田さんはどのような政治が「良い政治」だと思いますか。

柴田:私も西田先生の著書を読んで考えました。そこで思ったのが、誰かにとって良いことって、誰かにとっては悪いことなんだなと。どのように見るかによって、人によって「良い政治」に対する考え方は違うのだと思います。一方で、政治が腐敗していないか、基本的人権を持って差別されない権利は、国や政治が守っていくべきですよね。

西田:素晴らしい指摘ですね。実は社会にはいろいろな場面で“トレードオフ関係”が存在します。僕がこうして座っている“コメンテーター”の席も、ここでは1席しかありませんから取り合いです(笑)。僕以外の誰かが出ていれば、僕は出られません。僕が出ていれば他の人はでられません。そういった、そしてもっと複雑な関係があるときに、どちらの利益を優先するのか。その利益を調整する仕組みの1つが広義の「政治」なんです。

 政治で決まることはスケールが大きいです。先ほど柴田さんが言ったように政治の腐敗を防ぐために、予算の使い道を含めてどうなっているのか。明らかになっている状態が好ましい政治です。言い方を変えて一義的に定義するなら、「悪い政治」を取り除いていくことが「良い政治」であるとも言えます。

政治はもうAIでいい? 投票は本当に“遠回り”なのか 「悪い政治」を取り除くために

柴田:「良い政治」の定義は難しいけれど「悪い政治」の定義はあるということですね。では、今の日本は「良い政治」をしていると言えるのでしょうか。

西田:僕をはじめコメンテーターや専門家が「あれがよくない」「これがよくない」と日々テレビで日々毒舌を言っているかもしれませんが、日本では自由民主主義の社会が80年近くにわたって続いています。世界第二次世界大戦で負けて、帝国主義国家から、1947年に「日本国憲法」が施行され大きく変わりました。良くも悪くも、いろいろな課題に対応しながら、やり続けてきました。案外、これは難しいことなんです。周辺のアジアに同じような国があるかというと、全然ない。お隣の韓国が民主化したのも1980年代のことです。課題はあるものの、日本の政治はいろいろな点において、良いところがあると言えます。

■人間よりもAIに任せるべき?西田亮介氏「“政治を使っていく”という考えを持って」

政治はもうAIでいい? 投票は本当に“遠回り”なのか 「悪い政治」を取り除くために


柴田:参院選における年代別投票率の推移を見ると、減少傾向が続いています。「選挙に行く=当然のこと」と考える人が減ってきているようです。政治への参加はコストなのでしょうか。また、一部の分野では人間ではなくAIに政治を任せる「AI政治」を推す声もありますが、西田先生はどのようにお考えですか。

西田:特定の問題を解決しようとしたとき、やり方は必ずしも1つではありません。政治をAIに委ねるということに近づければ、行政におけるAIの活用も試されています。保育園のマッチングなど、すでにAIを取り入れている行政もあります。NPOやスタートアップ企業などと一緒に課題を解決していこうとする行政もあります。

柴田:投票時に「白票」で出すのは、効果があるのでしょうか?

西田:「白票」で出す意味をどこに求めるかにもよりますが、投票戦略上は、ほとんど意味はありません。(白票が集まったからと言って)日本で選挙が無効になることはありませんので、「白票」で意思を示すよりも「ここならまだマシだ」と思える政党に投票したほうがいいです。もしくは時間の有効活用という意味では行かないほうがまだいいかもしれません。

 日本の選挙は、権利的性質が強く、投票に行かないことに対するペナルティもありません。世界には投票に行かないと罰金などの罰則がある国もたくさんあります。義務的性質が強い国です。

柴田:社会問題の解決に「投票」は遠回りではないかといった声もあります。

西田:企業が直接サービスを作って問題を解決するようなものに比べると、政治や法律で解決していくことは遠回りに見えます。しかも、作られた法律がしっかり機能するかどうかもわからない。ただ、憲法で定められているように国会は国の唯一の立法機関です。法律を成立させることができるのは、国会だけなんです。そして、国会で法案を通すためには、議会の多数派に納得してもらって、賛成に投票してもらわないといけない。法律を作れば、強力に何ができて、何ができないかを定められますから、問題解決において規制変更を求める場合にも「投票」がやはり重要です。

 今日は立法と行政をあわせて説明してきましたが、政治にしかできないことがたくさんあります。スタートアップが技術・サービスを作って問題を解決するように「政治を使っていく」という考え方も大事です。

(「ABEMAヒルズ」より)
 

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『17歳からの民主主義とメディアの授業 ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください』西田亮介(著)
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日本実業出版社