ブラジルの新星と韓国のストライカー、タイトルショットを狙う両者の対決は圧巻の瞬殺KO決着に。直後、追い撃ちを阻むべく割って入ったレフェリーが勢い余って“低空ジャーマン”で勝者をぶん投げるアクシデントが発生。KO決着の瞬間はもちろん、その後の珍事に「レフェリーも大変」「やりすぎスープレックス」など様々な反響が寄せられた。
6月2日にシンガポールで開催されたONE Championship「ONE 158:TAWANCHAI VS. LARSEN」でクォン・ウォンイル(韓国)とファブリシオ・アンドラージ(ブラジル)が対戦。試合は1ラウンド62 秒、アンドラージが三日月蹴りでクォンのレバーをピンポイントでえぐって圧巻のKOを飾った。
中国のクンルンファイト経由でONEに参戦し、いきなりバンタム級トップ戦線にいた佐藤将光に勝利。その後も快進撃を続けてきたアンドラージは、元UFCファイターも含め強豪ひしめくONEバンダム級でも、間違いなくトッププロスペクトの一人。一方のクォンも打撃に定評がある。連勝を重ねるなか、王者ジョン・リネカーへの挑戦を猛烈に直訴した両者。どちらに権利があるか、答え合わせとなる一戦だ。
試合開始、ゆったりとしたスタンスから鋭いミドルを飛ばすアンドラージに対して、右のパンチで触るクォン。両者打撃には自信があるが、サークリングの隙間を縫うようにミドル、パンチとテンポ良く当てるのはアンドラージ。一方のクォンはなかなか次の一発が出ずに距離を測るややもどかしい展開が続く。
クリティカルな威力はないがハイキックや左ストレートを繰り出して積極的なアンドラージ。得意のミドルをボディへ打ち込むと、顔へ見せかけのパンチで触り、もう一発、同じ角度でボディへ突き刺さるような強烈な左ミドルを一閃。するとクォンの動きが中央で止まり、そのまま腹を庇うようにダウン。リプレイ映像では三日月蹴りが的確にレバーを捉え、苦悶の表情と共に崩れ落ちるクォンの姿が映し出された。
すでに勝負ありの中で、ちょっとしたアクシデントも発生。勢いに乗ったアンドラージが追い打ちのパウンドに入ると、危険を察知したレフェリーのオリヴィエ・コストが飛び込んで割って入る。ここまではONEのザ・ボスのいつものファインプレイだが、アンドラージをがっしり抱え込むと、勢い余ってローリング気味に後方にぶん投げる“低空ジャーマン”気味のやりすぎスープレックスを披露。これには試合を中継したABEMAの視聴者も「レフェリーナイス」「レフェリーも大変」「やりすぎスープレックス」「止めるのも大変だなw」と身体を張ったプレイに大盛り上がり。
しかし、ハイテンションのアンドラージは投げられた事すら気づかないのか意に介さず、ケージに猪突猛進で駆け上がるとアドレナリン全開のガッツポーズ。試合時間わずか62秒、完膚なきまでに叩きのめされたクォンは、三日月蹴りでの大ダメージに加え、短い時間で顔面中央から鮮血が滲む痛々しい姿。悔しさを含みつつ「参ったよ…」と負けを認めるような表情で勝者を祝福した。
勝ったアンドラージは、5万ドル(約654万円)のファイトボーナスをゲット。さらに王者・ジョン・リネカーへ「逃げるなよ」と挑戦表明。アンドラージ曰く「逃げ回っている」というブラジル人王者、同郷の新鋭の対戦要求にどう答えるか、今後の動向に注目が集まる。