「論文が出てない=専門家が何も言えない状態」サイエンスコミュニケーターに話題の科学について聞く
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 科学の力によって世界では日々、さまざまなことが明らかになっている。科学の発展は社会に何をもたらすのか。ここ数日、日本で相次いだ科学に関するビックニュースについてサイエンスコミュニケーターの佐伯恵太氏に聞いた。

【映像】はやぶさ2が持ち帰った砂

 1つ目のトピックは、JAXA(=宇宙航空研究開発機構)の探査機「はやぶさ2」。2020年12月、小惑星「リュウグウ」から採取した黒い砂や石など、約5.4グラムのサンプルを持ち帰ることに成功した。関係者によると、その後の調査によってリュウグウが採取した砂の中から生命を形作るたんぱく質の材料となるアミノ酸が20種類以上見つかったという。

 これまで地球に落下した隕石からアミノ酸が検出されたことはあるが、地球の空気に触れず宇宙から直接持ち帰ったサンプルから見つかったのはこれが初。研究結果は近く、論文として発表される見通しだ。

「論文が出てない=専門家が何も言えない状態」サイエンスコミュニケーターに話題の科学について聞く
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 2つ目のトピック。先月、東京大学の研究者らが4億年前の化石の分析からある調査結果を発表した。私たち人間など地球上に多く存在する脊椎動物。魚類から両生類が生まれ、海から陸上に進出したと考えられているが、進化の過程については、これまで明らかにされていなかった。

 こうした中、理化学研究所の客員研究員で、東京大学の平沢達矢准教授らの研究グループは、物質を原子レベルで調べる事ができる施設で約4億年前の脊椎動物「パレオスポンディルス」の化石の頭の骨を詳細に分析。

 その結果、これまでヌタウナギのような原始的な魚だと考えられてきた「パレオスポンディルス」が実は陸上へ進出しようとする手前の段階の生物で、人間を含む陸上の脊椎動物により近かった可能性のあることが新たに判明したという。

 理化学研究所の会見では「実は陸上へ進出しようとする手前の段階のむしろ我々に近い動物の幼生ではないかという見解が明らかになった」と話していて、今回の研究結果について、脊椎動物が進化する仕組みの解明に貢献することが期待できるとしている。

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 宇宙に存在するかもしれない生命の起源。生物の進化の謎が明らかになるかもしれない研究成果。どちらも”大きなニュース”というのは分かるが、一体何がすごいのか。佐伯氏に解説してもらった。

Q.はやぶさ2が持ち帰った砂からアミノ酸が見つかったがどうみているか

 宇宙に私たちの体を作ってる材料があったことにすごい衝撃を受けた。一方で、すごく複雑な気持ちもある。論文という形で研究者は研究成果を発表するのだが、これは論文が出ていない。論文が出てない状態で先に報道されて世間に知れ渡っている。それがどういうことかというと、研究者は論文を書くだけではなく、人の論文を読んで学ぶ。科学はそうやって成り立っている。なので、論文が出てないってことは専門家が何も言えない状態。今回は、逆転現象が起きている。

Q.宇宙でアミノ酸は生命起源の謎の解明に役立つというのはどういうことか

 生命の起源がどこから、地球の生命はどうやって生まれたのかという話はいろんな説がある。今回の報道が正しければ、少なくとも宇宙に我々の材料となるパーツがあるといえる。その材料を使って宇宙に生き物が誕生していたとしたら、「パンスペルミア説」となる。ただ、宇宙に材料はあったけど、それが地球に運ばれて地球で生命が誕生したといった仮説もある。

Q.パレオスポンディルスの発見は、どこがすごいのか

 頭骨を調べたとあったが、大体見つかるものは頭が割れていることが多い。研究するにはていのいい化石を見つけないといけないのだが、今回は2000個の化石の中から2個見つかった。さらにそれを詳細に最新のCT技術を使って解析できる実験方法もあったので今回、明らかにすることができた。

(『ABEMAヒルズ』より)

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