25歳までに相手を見つけて29歳で結婚、30歳で第一子を産み…政府の目標は“足し算”ばかりの“無茶振り”だ 政府の目指す“女性活躍”に社会学者・水無田気流氏
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 女性の経済的自立、政治や経済分野への進出など女性の活躍を目指しす政府の「女性版骨太の方針」。今後、これに沿って男女の賃金格差の是正、女性のデジタル人材の育成と就労支援、育児と仕事の両立支援などを目指して環境整備が進められることになっている。

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 同時に重要な骨子となっているのが、男性の家庭、地域社会における活躍だ。野田聖子・男女共同参画担当相は「女性だけで何か成し遂げるということよりも、やはり仲間、パートナーの男性たちをもやはりポジティブにしていくことが大事だ」と指摘している。

■幸せになりつつ就業と育児出産と両立させることはすごく難しい

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 国学院大学経済学部の水無田気流教授(社会学)は「“女性の非労働力人口を労働力人口に”という、第2次安倍内閣の女性活躍政策と基本的には変わらないと思う。とにかく女性の“ケアワーク”の負担はそのままに、就労人口が足りないからもっと働いてもらおうという“足し算”による“無茶振り”で、女性がやることが増えるだけ」と指摘する。

 「柏木さんが“幸せになれるかどうか分からない”とおっしゃったのは非常に重要な指摘で、男性も含め国民の生活満足度が上がり、幸せになるための視線が欠落しつづけていると思う。人は“こちらの方が幸せになりそうだから”とライフコースを選択していくわけで、“こちらはしんどいなとか、無理だな”と思えば選択肢からは外していくはずだ。にもかかわらず、継ぎはぎしているだけという印象が拭えない」。

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 水無田氏は政策目標を現実的なライフプランに落とし込み、“F1並みの音速の人生設計だ”とも指摘している。

 「日経新聞に書いたところ“炎上”してしまったが(笑)、2013年、管理職になる程度には働いてほしい、でも35歳までに妊娠出産しないと難しくなるよということで配布しようとするも“余計なお世話だ”の大合唱で取りやめになった「生命と女性の手帳」を元にしたものだ。

 まず、22歳までにファミリーフレンドリーな企業に内定をもらう。今、結婚相手と平均お付き合い年数は4年なので、統計的には29歳に結婚をするのであれば、入社3年目の25歳までの間に血眼になって婚活をし、将来有望な男性を捕まえる。しかもリクルート総研の調べによれば、日本は男性からのプロポーズが8割を超えているので“逆プロ”ではなく、婚約に持ち込まなければならない。

 さらに同棲カップル数はあまり多くないので、結婚=同居の開始ということだ。そうすると婚約後1年で結婚し、新居を見つけて30歳までに第一子を妊娠する。自治体の認可保育所の締め切りを考えれば、最短で職場復帰するなら8〜10月の出産がベスト。排卵回数は年12回しかないので、チャンスは3回。もう『ゴルゴ13』みたいだ。

 しかも保活先は妊娠中に確保しないと“保育園落ちた、日本死ね”になってしまうので、子どもが泣いてもわめいても1年以内に卒乳。そして排卵して、また妊娠して、ということになる。しかし、誰がこんなレースにが勝てるのだろう。トールマン時代のアイルトン・セナぐらいではないか(笑)。

 それでも、女子学生向けの就活セミナーみたいなところでは、“スーパーウーマン”みたいな人が出てきて“私もできた。あなたにも”と話をする。後ろから見ていると学生たちがドン引きしていた、ということもあった。普通の女性が、普通に幸せになりつつ就業と育児出産と両立させることはすごく難しい状況になっているということだ」。

■お金の問題は大きい。早急に変えた方がいい

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 「女性版骨太の方針」について、AKB48柏木由紀は「育児と仕事を両立したいという考えはあるが、果たして世の中の女性のどれくらいがそう思っているのか。幸せの形はそれぞれ違うだろうし、男性にも影響が出てくるものだと思う」、水無田氏のモデルケースを見た「BlackDiamond」リーダーのあおちゃんぺは「私は30歳までに3人ぐらい産みたいなと思っていたが、無理だと感じた。仕事と子育ての両立が難しいし、こういうお仕事には“旬な時期”もある。復帰した時に30オーバーだったら使ってくれないと思う。未来がない、人生オワタ」と懸念を示す。

 水無田氏は「出産は女性にしかできないことだが、育児や家事なら男性でもできる。しかしその総量を100とした場合、だいたい85ぐらいの負担を女性が担っているのが日本社会だ。しかもこの20年間で女性の就業率が飛躍的に上昇しているにもかかわらず、この家事負担の割合は変わっていない。

 もちろん、家事参加率はそれぞれの男性によっても異なるが、ジェンダーは社会の構造や職場のような組織の構造にも大きな影響を与えるものなので、個人の選好だと思っていても、実は社会構造の中で選択しているという要素が極めて大きい。もっと言えば、女性の賃金は年間通して男性の半分ぐらいの給与水準だ。育休取得も個人の問題と思われているが、雇用保険から出る育児給付金は通常の賃金の6~7割ぐらいなので、家計にダメージを与えないためにも女性の方が育休を取るということになる。これも構造の問題だ」とした。

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 また、近畿大学情報研究所の夏野剛所長は「大企業では制度上の男女の差はなくなってきているが、企業の80%は中小企業。古い体制が残ったままの所も多い。そこに政府に何ができるのかといえば、なかなか難しい。ただ、男性に下駄をはかせるのはもうやめた方がいい。そして、50歳にして離婚も含む未婚の男性は25%、女性が14%だ。これが2030年までに20〜30%になると言われている。結婚しない人がこれだけ増えてくるというのも、したくないというよりも、様々な問題の犠牲になっていると僕は思う」とコメント。また、パックンは「政府ができることは、例えば、一流大学の男女比の是正だと思う。この最終学歴の格差は年収の格差にも現れると思う」とした。

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 水無田氏は「シカゴ大学の山口一男先生の統計によれば、同じ職位に出世した男女では、女性の方が長時間労働が出世要件に大きく貢献している。また、男性は11年〜15年後に2割が課長級になるが、女性は31年以上でようやく2割だ。しかも男性以上に成果を出さないと出世できなかったりする。いわゆる一般でいうところの“女の幸せ捨てコース”で頑張らなくてはいけないとなれば、出世のインセンティブは下がると思う。

 やはり“男性だから稼がなくてはいけない”とか“女性だから家事育児に専従し、良いお母さんにならなくてはいけない”といったパッケージ化された男女の在り方、家族像や自由になって、誰もが個性・適性が活かされて、なおかつそれが評価されるようにならなければいけないと思う。

 国というレベルで対応を考えるのならば、最初に考えるべきは税制改革ではないか。例えばスウェーデンで男女平等が一気に進んだのは夫婦共同課税を廃止したことで男性の育休取得が進んだからといわれている。日本の場合、配偶者控除並びに第3号被保険者制度の在り方は50代半ば以上くらいの人たちにはフィットしても、若年層はフィットしなくなってきている。お金の問題は大きい。早急に変えた方がいい」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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