試合終了直後、敗者が勝者を背後から蹴る前代未聞の暴挙が発生。放送席が凍りつき、視聴者から「ふざけるな!」と怒りの声が殺到するハプニングがあった。しかし、その後に当事者選手から事の真相が語られると、ファンからは納得の声も聞かれた。
6月9日にシンガポールで開催された「ROAD TO UFC」で、ケレムアイリ・マイマイチツォヘチ(中国)と風間敏臣(和術慧舟會HEARTS)が対戦。終始試合をコントロールした風間が判定勝利を収めてトーナメント準決勝に進出。UFCとの契約に一歩近づいたが、試合終了直後に敗れたケレムアイリがとった前代未聞の暴挙で解説席および視聴者が凍りつく一幕があった。
UFCとの契約を巡りアジア圏出身の選手を中心にトーナメントが組まれた「ROAD TO UFC」のバンタム級1回戦に登場した“柔術フィニッシャー”こと風間は、若手の登竜門であるパンクラス『ネオブラッド・トーナメント2021』のバンタム級の優勝者。対するはウイグルの散打王者からMMAに転身したケレムアイリは、1本勝ちが多くフィニッシュ能力の高い選手だ。
試合は風間が組み力のある相手に決定的な攻撃をさせず、終始主導権を握ったまま3ラウンド終了。3-0の判定勝ちを収めた。そんな熱戦直後に驚くべき事件が発生した。事の発端は3ラウンドを終えた直後。ケレムアイリが健闘を称え握手を求めると、風間がちらりと相手を見たのちに握手を拒否。
この態度にカチンと来たケレムアイリは背を向けた風間の尻にペチンと蹴りを見舞った。即座にレフェリーにたしなめられ、さすがにマズイと思ったか、ケレムアイリは謝罪したものの目を疑うシーンに試合を中継したABEMAの解説席も沈黙。実況の西達彦アナウンサーがやや引き気味に「何かお怒りモードですね」と苦笑するとUFCでのキャリアも豊富なゲスト解説の水垣偉弥も「ちょっと何ですかね」とにわかに信じられない様子を浮かべた。この出来事に視聴者も「え?何で蹴ったの」「ダメだろ」「ふざけんな!」と騒然となった。
その後、西アナは「思い通りに試合が出来なくてフラストレーションが溜まってますかね」と述べ、凍りつく空気をフォロー。しかし風間は蹴られる前も後も眼中にないかのように無表情を貫いた。結局、判定は3-0で風間の勝利。勝ち名乗りを受け、ここでやっと風間がケレムアイリに手を差し伸べると、やや困惑ぎみの表情の敗者も握手に応じた。
試合後に行われた勝利者インタビューにおいて、風間の顔に笑顔はない。「ぜんぜん嬉しくないですね。フィニッシュしなければいけないという目標があるんで、もう1ラウンドやっても良かった」と不満げな様子。さらに「1ラウンドからフィニッシュできると思っていたが、自分の決定力が削れていった。次に向けて改善していきたいなと思っている」と冷静に試合を分析すると、元UFCファイターの水垣は「勝った人のインタビューには思えない。僕が勝ったら大喜びなんだけど…」と苦笑いを浮かべた。
その後、風間は所属ジムの代表・大沢ケンジとYouTube生配信で「蹴られた理由全て話しますスペシャル」を実施。その中で、試合後に見せた仏頂面から一転「ホッとしています」と笑顔で本音、さらに問題のハプニングについても真相を告白した。
ケレムアイリから蹴られた問題のシーンについては「さすがに選手がやると思わなかった。誰かが触ったのかなと…そんなに強くなかったんで。振り返ったら審判に注意されて謝ってたのを見て、“コイツがやりやがったのか!”と(笑)」本人もじつは驚いていたとのこと。
当時の心境について振り返った風間はさらに「3ラウンド終わった後に、自分はまだ4ラウンドがあると思ったから。握手した後に延長ラウンドがあったら殴り合い出来ないじゃないですか…。だから“今じゃ無い”と拒否したんです」と握手しなかった理由を明かし、「もし4ラウンドがあったら、アイツ反則負けですよね(笑)」と冗談を交えた。風間の話を聞いた視聴者からは「それ(延長)を想定していたら、判定前に握手できない気持ちはすごく理解できる」など納得の声が寄せられた。