6月4日で最終回を迎えた土曜ナイトドラマ『妖怪シェアハウス-帰ってきたん怪-』(テレビ朝日系列)は、小芝風花が主演を務める異色のホラーコメディ。小芝演じる小説家を目指す目黒澪が、気のいい妖怪たちに助けられながら成長していくシリーズで、前作『妖怪シェアハウス』は「ギャラクシー賞」の2020年9月度月間賞を受賞するなど、人気・実力ともにお墨付きの作品だ。
6月17日より封切られる『映画 妖怪シェアハウスー白馬の王子様じゃないん怪―』は、シリーズがさらにパワーアップした劇場版。恋愛とはご無沙汰だった澪が、天才数学者のAITOに出会い恋に落ちる物語。幸せな日々を過ごす澪だったが、その恋がシェアハウスや巷の妖怪たちを危険にさらしていることを知り、決断を迫られるという内容に仕上がっている。
おなじみの妖怪キャストたちと、濃密な撮影の日々を過ごしたという小芝。インタビューでは朗らかに共演勢から受けた刺激や、今後挑戦したい役柄について語ってくれた。
「帰ってきてくれて嬉しい」というコメントに喜び
――『妖怪シェアハウス』シリーズは、小芝さんをはじめキャストやスタッフの皆さん、視聴者からすごく愛されている作品です。反響は感じていますか?
はい、本当にうれしい限りです!今回はドラマの第2シリーズ&映画の製作だったので、第1作目よりハードルは高く感じていました。前作を超えるものをお届けしたいという思いがすごく強くて。なので、ドラマの放送中は皆さんの反応にずっとドキドキしています。毎話「はー、明日放送か…緊張する!」みたいな感じなんです。
――リアルタイムで反応をチェックしたりしているんですね?
します!オンエアのときは大体リアルタイムで「#妖怪シェアハウス」で調べています。反応がよかったら、監督と「やったー、良かったですね!」みたいなやり取りをしています。特に第1話の後はすごく不安だったので、「今のところ反応いいよね」、「ですね、ですね」、「安心しました!」みたいにやり取りをしていました。
コメントで嬉しかったのは、第1話のときの「帰ってきてくれて嬉しい」とか「待っていました!」という声です。「皆さんをガッカリさせなくて良かったー!」という安心感もありました。
――澪ちゃんを演じたのは、およそ1年半ぶりです。ドラマのシーズン2を撮り、そのまま映画の撮影という流れでしたか?
いえ、違うんです。本来ならドラマを撮ってから映画なんでしょうけど、公開スケジュールの関係もあり、1話と映画が同時スタートでした。しかも先に映画がクランクアップしたんですけど、ドラマはまだ1話もアップしていなくて(笑)。すごく濃密なスケジュールだった分、チームの一体感があるように感じていました。
――小芝さん的に、すぐに澪ちゃんに戻れましたか?
これまで続編を撮影した経験がなかったので、クランクインの前は「覚えているかな?」と前作を見返したりしました。ホン読みのときに詩子さんのナレーション、「むかーしむかし…」を聞いた瞬間に「ああ!これだ!」と蘇ってきて。クランクインもシェアハウスのセットだったので、セットに入って皆さんとお芝居をした瞬間に、すごいすんなり戻れました。「ああ、帰ってきたー!」と実感していましたね。
――映画版の面白さについては、特にどこに感じていますか?
映画版では、巷でも話題になっている“親ガチャ”や環境問題、時代の移り変わりとか、いろいろ社会派な部分を取り入れているんです。さらに、愛もテーマになっていて。自分の愛だけを叶えるものがすべてじゃないというか、自分を犠牲にする愛もあったりしますし、いろいろな道があると考えさせられる内容になっています。意外と壮大なテーマが隠れているところも見どころだと思います。…とはいえ、9割方はふざけているんですけど(笑)。
好きなタイプは「木陰タイプ」
――澪ちゃん的な見どころや、映画ならではの変化はありますか?
澪がしっかり恋をするのが、今回の新しいところだと思います。これまで澪が好きになったのは、闇落ちした妖怪やクズ男だったりしたので…(笑)、ここまでしっかり展開するのは初めてでした。
――恋愛要素のあるお芝居はいかがでしたか?
ちょっとドキドキしました。見慣れたスタッフさんに囲まれながら、恋をしているお芝居をするのがちょっと照れくさくて(笑)。「え、本当に『妖怪シェアハウス』の撮影ですよね!?」というぐらい、ときめいたりしていました。
――劇中に出てくる「AI恋人」という設定もひとつポイントですが、実際あったら使うと思います?
えーっ!!高校生のときに恋愛シミュレーションゲームをやってみたんですけど、大体課金しないと先に進めなかったので、あまりハマらなくて(笑)。
普通のゲームだとキャラクターが決まっていて「どの人を攻略するか」みたいな感じですよね。でも、「AI恋人」は自分の理想がビジュアルも含めて反映されるので、気にはなります。…というより、自分の理想がどう具現化されるのかにすごく興味があります。私も澪ちゃんみたいに「これが私の理想の男性なんだ」と味わってみたいです。…いつもタイプが思い浮かばないんですよね。
――「絶対にこういう人がいい!」などの外せない条件もない、と?
難しいですよねー…!優しい人、あまり怒らない人、がいいんですけど…見た目はもっと難しい!夜のネオンに映えるホスト系でもなく、真逆でちょっと焼けていて「太陽の下で汗をかくのが気持ちいい!」みたいな人でもないんです。木陰で「今日も風が気持ちいいね」と言っている感じの人、木陰タイプが好きなのかも、とは思います(笑)。ほのぼのとした感じに惹かれるのかもしれないですね。
映画とドラマの並行撮影に体力の限界も「魂が抜けたかも?」
――映画とドラマの同時並行スケジュールはハードだったかと思います。乗り切れた秘訣は何でしたか?
やっぱり楽しかったからだと思います。「はぁ…」と落ち込むような台本だったら気持ちもどんよりしていたと思います。スタッフの皆さんも明るかったですし、「しんどいですねー!頑張りましょうね!」と言える環境でしたし、何より「面白いものを作ろう」という気持ちが強かったから、乗り越えられました。
――気弱になった日はなかったと。
えーっと…(笑)。シェアハウスのセットでの撮影は、いつも詰めて撮るんですね。1回、1週間朝から晩まで丸々シェアハウスでの撮影が続いたときがあったんですけど、実は1日だけ本当に全員の意識がなかったんじゃないかなと思う日がありました(笑)。「魂が抜けたかも」という勢いで…。疲れもたまってきた後半戦で、体力の限界がきてたんでしょうね。「これは本当にやばい!」と。共演の皆さんと「睡眠は本当に大事だね」という話も出たくらい。
だから、そのシェアハウス撮影のスケジュールのとき、少し高めの栄養剤を初めて皆さんにプレゼントしたんです。「本当にやばいと思ったら各々で飲みましょう!」と言って。
――それは嬉しい差し入れでは!かなり効きそうですね。
だけど、大倉さんが初日に飲んだんですよー(笑)!「絶対今日じゃない!この先しんどいですよ!」なんて会話があったり。そんな感じもすごく好きでした。
――お話されているように、シェアハウスメンバーの妖怪の皆さん、芸達者な俳優が揃っていますよね。皆さんとご一緒して、受けた刺激や変化はありましたか?
すごくありました。皆さん、本当に引き出しが多いですし、瞬発力もすごいので、こんなに楽しくてふざけている現場なのに、学びがとにかく多いんです。日々勉強でした。
私、もともとアドリブに苦手意識がすごくあったんです。でも、アドリブは頑張ってやろうとしなくていいんだ、と気づけたというか。例えば、大倉さんはアドリブが多いので、それに1個反応するだけで(自分のアドリブも)成立するから、「怖いとか考えずに気楽にできるんだ、楽しんでできるものなんだ」とこの作品で気づけたことは大きかったです。
影響を受けた作品は『花より男子』「ラブコメが大好き」
――小芝さんは『妖怪シェアハウス』シリーズはじめ、様々な作品にご出演しています。これまで見てきた中で好きな作品・影響を受けた作品を挙げるなら、何でしょうか?
『花より男子』は小学生のとき、めちゃめちゃ見ていました。すーごいキュンキュンして大好きで、レンタルショップでDVDを借りた思い出もあります。私、ラブコメみたいな作品が好きなんです。ほかにドラマで言うなら『逃げ恥』とか『凪のお暇』とか。見ていて「もう終わったの!?次を早く見たい!」と思える作品が好きなんです。
――『逃げ恥』や『凪のお暇』だと、主人公が小芝さんより年齢がやや上の設定ですよね。アラサーぐらいになったら、そういう役もチャレンジしたいですか?
挑戦したいです!去年初めてラブストーリーをやらせていただいたんですが(『彼女はキレイだった』)最初はちょっと怖かったんです。私がこれまで演じてきた役は、ドタバタのどん底からスタート、みたいな感じが多かったので…、今までラブストーリー系にまったくご縁がなかったので、「すごく難しそう!」と思っていました。
――ですが見事にものにしていて、すごい反響でしたよね。
ありがたいことに、本当にそうでした。役の設定的にも、見た目に気を使っていなくて、残念女子から成長していく、みたいな感じだったからすごく入りやすいのもありました。(桐山)梨沙みたいな(佐久間)由衣ちゃんが演じたような役だったらプレッシャーで倒れちゃう、という感じですけど(笑)。次はもう少し大人な恋愛ものとかもやってみたいです。
ラブストーリー系以外のジャンルで言うと、ダークな役も演じてみたいんです。明るい役の印象が強いと思うので、ちょっと陰があったり、人間の嫌な部分が出たり、猟奇的な感じの役にもすごく興味があります。
――そうしたジャンルの作品を観るのも好きだったりしますか?
好きです。映画だと『怒り』や『そこのみにて光輝く』が好きで。ああいう「うわああ」という感情になる作品や役を、いつか挑戦したいです!
『映画 妖怪シェアハウスー白馬の王子様じゃないん怪―』は6月17日より全国公開。なお、ドラマ『妖怪シェアハウス』(シーズン1)、『妖怪シェアハウス-帰ってきたん怪-』(シーズン2)はABEMAにて全話配信中。
取材、文:赤山恭子 写真:You Ishii
『映画 妖怪シェアハウスー白馬の王子様じゃないん怪―』
【ストーリー】
澪は相変わらず妖怪たちと楽しく暮らしながら、作家になる夢を追いかけている。世間ではAI恋人アプリが大流行し、誰もがスマホを見てニヤニヤしていたが、出版社での仕事に追われている澪は恋愛とはご無沙汰だった。そんなある日、上司に無茶振りされた取材でイギリス育ちの天才数学者・AITOに出会い、恋に落ちる。理想の王子様との幸せな日々もつかの間、澪はその恋がシェアハウスだけでなく巷の妖怪たちを危険に晒していることを知る。その頃、人間社会にもある“現象”が起き、人間の未来は大きく変わろうとしていた。人間と妖怪の歴史の分岐点の鍵となる、澪の決断やいかに!?
出演:小芝風花 松本まりか 毎熊克哉 豊田裕大 池谷のぶえ
佐津川愛美 長井短 井頭愛海 尾碕真花 小久保寿人 片桐仁 安井順平
望月歩 池田成志 大倉孝二
監督:豊島圭介 脚本:西荻弓絵 音楽:井筒昭雄 主題歌:ayaho「アミ feat. 和ぬか」
制作プロダクション:角川大映スタジオ
配給:東映