藤井聡太棋聖、苦戦の中だからこそ輝いた一瞬の切れ味 劇的な逆転勝利を呼ぶ一手に解説棋士も「そんな手があるんですか」
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 将棋藤井聡太棋聖(竜王、王位、叡王、王将、19)が6月15日に行われたヒューリック杯棋聖戦五番勝負の第2局で、永瀬拓矢王座(29)に138手で勝利した。藤井棋聖がプロ入りして間もないころから研究パートナーとなった両者の戦いは、終盤に入っても形勢は互角、さらに細かく両者の間で揺れ動く激戦となったが、最終盤になって一瞬の切れ味で決着をつけたのは、藤井棋聖の勝負術が光る一手。解説していた棋士から「びっくりしました」「驚きました」という言葉が漏れ、視聴者からも「鳥肌が…」「凄すぎる聡太」と驚きの声が続出した。

【動画】藤井聡太棋聖が放った勝負手

 第1局は2度の千日手の末に永瀬王座が先勝。直近でも永瀬王座が3連勝し、通算では藤井棋聖が7勝4敗と勝ち越してはいたものの、勢いは完全に永瀬王座だった。本局でも序盤から永瀬王座の研究に藤井棋聖が悩み、昼食休憩の時点で早くも持ち時間で藤井棋聖が2時間も多く使うほど。形勢以上に苦しい時間が長くなっていた。

 中盤、終盤と局面が進むに連れて微妙なバランスを保ちながらじりじりと永瀬王座が押し続ける展開になると、藤井棋聖も対局後「終盤はずっと苦しいと思っていました」と苦戦を自覚した。もともと終盤力には定評があるだけに、自分の劣勢もよくわかる。ただここで出たのが、タイトル五冠にまで駆け上がる中で何度か見せてきた、切れ味鋭い勝負術だった。

 永瀬王座の寄せに自玉が追い詰められていたところ、藤井棋聖は飛車を見捨てて早逃げを選択。これにABEMAの中継で解説を務めていた飯島栄治八段(42)が「逃げるんですか!?取らなかったんですか…。これは藤井さん、危なくなりましたね」と指摘した。実際、ABEMAの「SHOGI AI」でも形勢は大きく永瀬王座に。ところが飛車を永瀬王座がただで取ったところ、形勢が一気に藤井棋聖に振れた。「あ、でもそうか。えっ!?」。飯島八段も混乱した。上部脱出を狙っていた永瀬玉に対して、藤井棋聖側に退路を防ぐ手が発見されたからだ。

 この一手について、藤井棋聖は「時間がなかったので、本譜は勝負手のつもりでした」と、持ち時間残り2分のところで見つけた筋について振り返った。「全くわかっていなかったんですが、流れとしては仕方ないのかなと思いました」と、明確に勝ち筋が見えたというよりも、感覚で指していたようだ。ただ、持ち駒の銀をただ捨てし、永瀬玉の脱出ルートをぴったりと塞ぐ手を見た瞬間、永瀬王座の動きまで止まった。視聴者からも「永瀬青ざめた」「飛車とったらあかんかったん?」「狙ってたってこと?」「罠にハマったことすら気がつかない」と、震えるような展開にコメントが殺到した。

 この局面を境に、勝負はあっという間に藤井棋聖のものに。飯島八段は「次の一手に出てくるような手。これは驚きました。すごくないですか!?そんな手があるんですか。実戦で出てくるとは…」と、解説にならないほど呆気に取られていた。かつて「AI超え」「神の一手」など、いろいろな形で表現されてきた藤井棋聖の一手だが、何局も研究を重ねてきた永瀬王座に対して、苦しみながらも勝負術で切り抜けたことには、たくましさを感じさせる部分もある。圧倒的な強さで五冠を獲得。ただこの棋聖戦では、負ければ初の失冠へカド番に追い込まれるという状況にもなっていた。これまでも藤井棋聖は、常に順風満帆で強くなってきたわけではない。大きな1勝をもぎ取った勝負の一手が、次の常勝ロードの礎になるかもしれない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

【動画】藤井聡太棋聖が放った勝負手
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【動画】同時に首をかしげる藤井聡太棋聖と永瀬拓矢王座
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