「秋田と東京の距離が568キロあるのでその距離があっても秋田のお野菜が新鮮でおいしく届くようにという思いを込めて『ゴロクヤ市場』というものになっています」
秋田・由利本荘市出身の佐藤飛鳥さん(27)。彼女が代表を務めるゴロクヤ市場では、秋田県産の食材を専門にした卸売業を行っている。
「秋田県産の農家さんからお野菜を仕入れさせて頂いて、基本的には県外の飲食店さんだったり、量販店やホテルさんだったりという所に卸させて頂いたりしています。後はフルーツの方も輸出しています」
学校を卒業後、一度は都内の企業に就職した佐藤さん。会社を立ち上げたきっかけは地元に帰省した時に交わした農家の人との何気ないやりとりだった。
「『すごい山菜が余っちゃったんだよね』という話をしていただいて、東京に戻って『そういえば山菜すごい余っちゃた』と言ってたなと、スーパーに買いに行こうと思って買いに行ったら全然スーパーに置いてなくて、なぜか欲しいと思っている人のもとに余っているはずのものが届いていないと感じました」
余っているのに、売られていない――。佐藤さんの疑問の裏には、農家が抱える悩みがあった。
現在、農家が野菜などを出荷する際には、1カ所にまとめられ、小売店などに卸されるケースがほとんど。そのため需要と供給がうまくかみ合わないこともあるという。
「市場に出す場合って市場で『あれがほしいです』と言われて農家さんが出荷しているわけじゃないので、そうなってくると市場に運ばれても買い取られない野菜、そのまま市場にいったとしても、全部値段が付けられるわけじゃなく捨てられるお野菜もあったりするので、なかなかそこで需要と供給を合わせるのが難しいという現状があります」
また、独自に販売ルートを探す農家もいるものの、野菜などを育てながら慣れないルートを開拓するのは至難の業。そのため「野菜が余っていても届けられない」というジレンマが生まれてしまうのだという。
こうした状況を打破したいと佐藤さんは、2017年にゴロクヤ市場を設立。地元秋田で地道に提携する農家を増やしてきた。時には、畑仕事を手伝うなんてこともあったという。こうした努力もあり、現在は50軒ほどの農家がゴロクヤ市場と提携。秋田の野菜を全国各地へと届けている。
「1番遠い所だと国内だと沖縄も出しておりますし、本当に地道だなと思うんですけど、前に比べたら、たくさんの方々に一回は秋田の野菜を食べた方がいるというか、増えたんじゃないかなと思っているのでやりがいを感じています」
現在も東京と秋田を行き来しながら、秋田の野菜の魅力を発信しているという佐藤さん。徐々に手応えも感じてきているという。会社の目標は「野菜と一緒に農家の想いを卸す」こと。立ち上げから5年、568キロという距離も少しずつ縮まってきていると話す。
「農家さんが“生産のプロ”だったら、私たちは“伝え手のプロ”というような形で農業に寄り添えたらなというのが一つ。もっともっといろんな農家さんが、自分の自由な農業をできるような形をとりたいなと思っています」
こうした日本の農業を守るために私たちに何ができるのだろうか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した、スーパー『アキダイ』代表取締役の秋葉弘道氏は次のように述べた。
「生産しやすい状況を作ってあげる。例えば、円安高によって経費が変わってくるので、通常より上がった場合は国からの補助があるとすれば、生産者を守るというか日本人の食を守ることにつながる。あとは、産地から東京へものを送る際の輸送コストもある程度国が負担することができればいいと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)