武尊、敗北――。魔裟斗が試合中、指摘し続けた“懸念”が現実に 互いに“らしさ”をぶつけ合った至極の9分間
【画像】武尊を沈めた那須川天心の衝撃カウンター
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 6月19日に東京ドームで開催された「THE MATCH 2022」のメインイベント。RISE世界フェザー級王者・那須川天心(TARGET/Cygames)とK-1 WORLD GPスーパー・フェザー級王者・武尊(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)の一戦は、5-0と大差の判定決着で那須川天心がおよそ7年に渡る因縁の対決に終止符を打った。

【画像】武尊を沈めた那須川天心の衝撃カウンター

 試合前から各方面で対戦予想が白熱したこのカード。勝敗を分けた場面をゲスト解説を務めたK-1のレジェンドである魔裟斗のコメントから振り返る。鍵となったのは、那須川が今回の“武尊対策”として多用した左ジャブの技術と、一貫して右の一発に拘り過ぎた武尊の戦術のギャップだ。

武尊、敗北――。魔裟斗が試合中、指摘し続けた“懸念”が現実に 互いに“らしさ”をぶつけ合った至極の9分間
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 試合開始とともに再三に渡って魔裟斗は「天心のジャブがいい、武尊は手が出ないですね」と那須川のジャブを称賛。その一方で「武尊の右が強引で大きいのが入りすぎている」「いきなり大きなパンチを打っちゃダメ」と右で一発を狙い続ける武尊に警鐘を鳴らし続けた。

 最も象徴的なシーンが1ラウンド終了間際の左カウンターによるダウンシーンだ。ここでも武尊の大きなモーションのフックに対して、コンパクトな那須川の左が先に到達。クロスでフラッシュぎみだが、ダウンを取ることに成功した那須川はポイントでも大きくリード。試合を優位に進めることになった。

 2ラウンド序盤にも魔裟斗は再び「よくないな、あの右は…」と右にこだわる武尊にひと言。「左から出していかないと、いきなり右を出していくと天心にカウンターを取られる」の言葉どおり、積極的にプレッシャーをかける武尊だが、パンチが空を切る場面が目立つばかりではなく、出合い頭で左右に伸びる那須川のジャブを次々と被弾する。

 これまでの武尊の試合では見られなかった空振りの多さについて魔裟斗はその後も「何の攻撃もなく、いきなり右を当てようとするから大きくなっちゃうんですよね」と同様の指摘を続けた。

武尊、敗北――。魔裟斗が試合中、指摘し続けた“懸念”が現実に 互いに“らしさ”をぶつけ合った至極の9分間
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 結果的に大差の判定負けとなった試合だが、武尊にも可能性は残されていた。2ラウンド、バッティングとラウンド中盤の投げに対する警告があったのにも関わらず、ジャッジ4人が「10対10」のドロー。さらに1人が「10対9」と“武尊優位”としたこと。そして3ラウンド中盤、那須川がやや失速し、武尊が前に出て攻勢をかけた場面だ。

 しかし、この局面も那須川は持ち前のスピードと小さなジャブで乗り切った。武尊のわずかな希望、自らのリスクを徹底的に摘み取って見せたのだ。これには魔裟斗も「天心はしっかりパンチを見ながらブロックキングしている。ピンポイントで針の穴を通すように武尊の大きいパンチを見て、天心が小さなパンチを打っている」と称賛した。

 試合が決したあと「最後は武尊も笑顔で前に出続けましたね」という矢野武アナウンサーの呼びかけに、中村拓己K-1プロデューサーは「ちょっと僕は言葉が出ません」と声を詰まらせつつ間を置いて「僕は武尊選手の試合が見れたと思います」と一言。これは気丈な振る舞いではなく本音から漏れた言葉のように感じられた。

 一方、魔裟斗は「天心は巧かった。武尊のパンチをことごとく空を切らせた。武尊のいい場面を作らせなかった」と総括したが、その言葉どおりスピードと精度の那須川が豪快に殴り倒す武尊を上回った。ともに「らしさ」を貫いた3ラウンド9分の熱戦は、こうして那須川天心の完全勝利で幕を閉じた。

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