2022年4月、新宿にある吉本興業の劇場「ルミネtheよしもと」に集まった男女100名。ここにいるのはお笑いを見に来たお客さんではなく、吉本興業が手掛けるお笑い芸人の養成所、NSC東京に入学する新入生だ。しかもここにいるのはごく一部で、今年の入学者数はおよそ680名だという。
【映像】ひろゆき氏も絶賛した男女トリオ「笑う門には福よ来い」の自己紹介(8:00ごろ〜)
入学式から2週間ほど過ぎた5月初旬、ZOOMで新入生を集めて行われていたのは、1人で入学してきた人たちをマッチングする相方探しの会だ。リモートで話してコンビを組むという。
やさしい笑いやコンプラ規制が求められ、何かと制限が強まるエンタメ業界。そんな時代に、なぜ多くの人が芸人を志すのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、NSC東京1期生・品川庄司の品川祐と、NSC現役生を招き、これから求められる芸人、そしてお笑いの可能性を探った。
リモートで登場したのは、元社長と元警察官のおじさんお笑いコンビ「ぬーどる」、男性20代・女性は40代の男女トリオ「笑う門には福よ来い」、ファッション専門学校を卒業したお笑いコンビ「イレブン」、大声とバカが売りのコンビ「えがおアドバンスっ!!」の4組だ。
4組の自己紹介を見た、ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「こういうメディアに出るのは、これが最後の人も多いと思う」と一刀両断。
「結局、出られるタイミングは人生の中で何回かしかない。チャンスは限られていて、そのときに何をするか。それをちゃんと考えておくべき。キャスティングが今日決まったわけじゃないと思う。でも、ちゃんと練習していたのは『笑う門には福よ来い』だけで、あとの3組は適当だ。チャンスがあって練習することをやっていない。使いづらいことをするともう呼ばれないのは、素人でも分かる。なんで頭を使わないのかな。『笑う門には福よこい』の女性の方には、もう後がないという悲壮感がある。だから練習をすごく男性2人に頑張らせたのだと思う。そこも含めてちょっと珍しい絵面になっている」
NSC東京1期生の品川は「いやびっくりだ。僕たちはオーディションだった。300人ぐらい来て、120~130人くらい受かった。次の年から入学金を取った方がいいだろうって全員取るようになった。お金を払って入ってきて、そいつらが売れたらお金を還元するんだから、よくできたシステムだと思う」とコメント。
ひろゆき氏が「実際にNSCに通ったことで面白くなった、こういう視点でネタ作ればいいんだみたいな、ためになったことはどれぐらいあるのか」と質問すると、品川は「ない」と即答。続けて「でも、一番は庄司と会ったこと。僕は1人で入ってきたので。あと、お笑いを目指そうと思う人たちは、日本一厳しいお客さん。入学した680人の前でネタをやるなら、まあちょっとのことでは笑わない。笑わない環境でネタをする。今のひろゆきさんみたいに講師の先生にダメ出しされることで、根性がつく。僕はそれが一番のメリットだった」と述べた。
番組では、4組のNSC現役生にYouTubeやSNSが全盛期の今、多様化するメディアでどのような活動をしたいのか質問していった。「最終はテレビで成功したい」などの回答が寄せられる中、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「地上波に出たいとSNSやりたいは、かなり位相が違う」と指摘。
「今の10代〜20代はテレビを見ない。有名人というと、ひろゆきさん含めてYouTubeをやっている人だ。そうすると、芸人になる目的は『有名になりたい』とか『金を稼ぎたい』なのか、あるいは純粋に『人を笑わせたい』なのか、どれなのか。それによってSNSを使うんじゃないかと思う」
品川は「YouTubeやりたい、Instagramやりたい、テレビでやりたいというのは、ラーメン屋でおいしいラーメンを作りたい話じゃなくて『原宿にお店を出したい』みたいな、どこに店を出すかの話ばかりする。本来は、やっぱり『どんなラーメンを作りたいのか』が、正しいお笑い芸人の姿で、その後にYouTubeなどに発展していく。まず、YouTubeの売れ方よりは、自分のやりたい、面白いことを表現できる場所を考えることが最初なのかなと思う」と見解を語った。また、コンプラについては「今からそんなに気にしなくていいと思う。俺らの世代じゃないところから入ってくるから。俺らの世代のものを守ってほしいなんていう使命感を持たなくていい」と述べた。
ひろゆき氏は「仲のいい人を見ていると楽しいよねっていう、そういうタレント的なお笑い芸人さんが最近多い」とコメント。「でも、めちゃめちゃファンが多い人ってやっぱり恐怖感を持っている。笑いって上下関係があって、上の人が言ったら笑わなきゃいけないみたいな。そういう上下関係の空気感を作れる人がやっぱりカリスマ的な見られ方をする。そちら側をちゃんと育てた方が長期的にはいいんじゃないかなと思った」と語った。
時代によって求められることが変わるお笑いの世界。門を叩いた新人たちが、どのような活躍を見せるのか今後に期待したい。(「ABEMA Prime」より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側