沖縄の日本軍による組織的な戦闘が終結(1945年6月23日)したことにちなむ23日の「慰霊の日」を前に、県県が世論調査の結果を発表した。
【映像】沖縄の課題どう解決?ryuchellと考える本土復帰50年
それによると、米軍用施設の7割が沖縄に集中している状況について「差別的だと思うか」との問いに「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」と答えた人はおよそ66%に上った一方、年代別で見てみると、60〜70代では「そう思う」が50%以上だったのに対し、10〜30代では30%以下となっている。
本土復帰から50年。ロシアによるウクライナ侵攻が現実のものとなり、さらに中国による台湾侵攻の可能性も指摘される中、県の人口のおよそ9割が“戦後生まれ”になった沖縄にも、意識の変化が生じているのだろうか。
■ryuchell「良くも悪くも“当たり前”になってしまっている」
こうした問題について、沖縄出身のジャーナリスト・仲村覚氏は「この結果は、どの世代が新聞・テレビの影響を受けているかという調査と同じだと思う」と話す。
「20〜30代は新聞・テレビといったオールドメディアよりもネットで情報を得ていて、中国の脅威や日米同盟の重要性についても自分の頭で考えている。一方、60〜70代はオールドメディアに依存している。戦争体験の有無以上にオールドメディアの影響が大きいというのは本土でも同じだと思うが、唯一の違いは、琉球新報や沖縄タイムスのように“基地反対の主張だけ”を報じる新聞しか存在しないところだ。また、10代に関しては私が子どもの頃よりも平和学習をやるようになってきた。それが“押しつけられているのなら差別だ”と短絡的に考える背景にあるのだと思う。
また、客観的な結果としては出ていない部分では、たとえば髪を切っていて国際情勢の話題になると“ウクライナがああだから、いつ沖縄もそうなるか分からないよね”という危機感は皆さんも持っている。オール沖縄の勢いがなくなりつつあるのも、そういう雰囲気があるからだと思う。その意味では、政治家にもメディアの方にもお願いしたいのは、沖縄の人たちの感情だけでなく、なぜ沖縄に基地が必要なのかきちんと説明することだと思う。例えば米軍に守ってもらうより、自衛隊に守ってもらうことを望んでいる方々も多いのではないか」。
一方、普天間基地を抱える宜野湾市で生まれ、18歳まで沖縄県で過ごしたryuchell(りゅうちぇる)は「良くも悪くも“当たり前”になってしまっている現状がある」と話す。
「お母さん、お父さんが基地で働いている友達もいっぱいいるし、国際結婚した友達もいっぱいいる。生活のために基地で働いているので、仕事がなくなると困るという友達もいる。“容認”と言っても、土地を貸してお金をもらっている方もいれば、生活していく上では基地が必要だという方もいる。それでも、米軍機の墜落や米兵の方が起こす事件を考えると怖いという方もいる。それぞれに複雑な気持ちがあると思う。
ただ、基地への意識、考え方は世代によって違いはあると思う。例えば本土復帰した頃に生まれた50代くらいを“復帰っ子”というが、この人たちはアメリカだった沖縄で生きていた親を持っているので、僕たちの世代とは全く違う時代の話を聞いて育っている。一方で、仲村さんもおっしゃっていたように、僕たちの世代は平和学習を受けているので、過去のこと、基地がある理由、復帰のことについてもしっかり教わってきた。
同時に、戦争が終わって何年も経つのに、復帰から50年経っているにもかかわらず状況が変わっていないことに対して、県民はデモもいっぱいやったし、声も上げてきた。だけどトップが動いてくれないので、力がどんどん薄れてきてしまっているというのが正直あると思う。どうしたら基地が怖いと思っている方の意思が形になるのかという気持ちもあると思う」。
■「むしろ自民党の方が基地問題をこじらせている」
元NHKアナウンサーのジャーナリスト・堀潤氏は「沖縄報道の問題は、僕がNHKを退局するきっかけの一つでもある」と話す。
「沖縄で大規模な県民大会が久々に開催されるということで『ニュースウォッチ9』で取材に行った際、若い世代に話を聞いてみたら、反対一色でもないことがわかってきたので東京に素材を送った。すると“今日は怒り、悲しみの日だから、こういう声は伝えられない”と。これではメディアが分断を生じさせ、解決すべき問題を見えなくさせてしまうと主張したが、結局“お蔵入り”になってしまった。先日も普天間基地の近くにある公園で若い親御さんたちに話を聞いたが、“私は明確に反対だ”という方もいれば、“友達もいるのでメディアでは賛成・反対とか軽々しく言えない”という方もいた。“大きな主語”ではなくて、“小さな主語”で語らなくてはいけないと感じた。
例えば米軍基地を取材して“なるほど”と思ったのは、普天間基地にいる若い海兵隊員たちは、“適性”を見るためにアメリカから送られてくるんだということ。そしてこの話をしてくれた中尉とは、“そういう場所として普天間を使っていいのか、グアムだってあるではないか”という点で意気投合した。つまり賛成・反対とか、差別か差別ではないかといった議論に昇華させる前に是正すべき各論を議論すれば、“適性を見るだけならグアムでやられたらどうですか”といった提案も可能になるわけで、メディアも具体的に解決するための問題提起をすべきだし、政治も努力や交渉をすべきだと思う」。
また、元経産官僚の宇佐美典也氏は「私は官僚時代、この問題について深く考えるのをやめてしまった」と明かす。
「当時、経済産業省の立地環境整備課に沖縄推進室といって、2000〜3000億円に上る沖縄振興予算を執行している部署があった。沖縄には基地がたくさんあって負担をかけているから、代わりに全国から集めたお金で特別に手当をし、本土との格差をなくそうという予算だ。ところが実態は効果測定も行われず、はっきり言ってしまえば、“ばらまき”だった。しかも義憤に駆られた担当者が“もっと良い仕組みにすべきだ”と切り込んでみても、県が自民党の大物政治家に“政府が変なことを言っている”と連絡し、翌日には議員から電話がかかってきて“何もしなくていいから、お金だけ配れ”みたいなことを言われる。政治的に蓋をして、考えないことに最適化され、利権化しているんだと感じた」。
仲村氏は「私もこの10年ほど政治家に働きかけたりしてきたが、普天間も含めて基地問題が無くならない背景には自民党の深いところの影響もあると思う。つまり反対運動が無くなると困る、という方々がいらっしゃるのではないか、ということだ。例えば沖縄の自民党が辺野古反対に振れた時期があったが、党本部にはそれを黙認している幹事長がいた。私は名護市長がその人に詰め寄っている現場に居合わせたこともあるが、辺野古反対、親中派の公明党の票が欲しいということも含めて、むしろ自民党の方が基地問題をこじらせる方向に持っていっている部分を見た気がした」と語っていた。(『ABEMA Prime』より)
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