乳房のしこりを自覚も貧困が理由で受診せず、気づけば末期がんに…“手遅れ死亡”事例45人は「氷山の一角」、制度の周知に課題も
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 経済的な理由で受診が遅れるなどして死亡した人は、2021年は前年より5人増えて45人いたことが、医療機関などでつくる全日本民主医療機関連合会(民医連)の調査でわかった。

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 民医連によると、45人のうち80%が男性で、女性が20%。年齢層は60代から70代が全体の65%を占めた一方、40代から50代も26%にのぼっている。世帯構成を見ると、独居が58%で過半数だが、きょうだいや知人と暮らす人も20%いたという。

 雇用形態は、無職(39%)と非正規雇用(39%)が約8割を占めている。月の収入(手取り)は5万円未満が6%、5万円以上10万円未満が22%の一方、10万円以上も33%いたということだ。

 経済的な理由とはどういうことなのか、一体何が起こっているのか。テレビ朝日社会部・厚労省担当の上田健太郎記者が伝える。

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 今回の手遅れ死亡事例調査によると、保険料の滞納などで無保険の状態だった人が3割近くいた一方で、保険証を持っていても経済的な理由で治療を中断するケースもあり、民医連は「窓口負担などが理由で受診できない実態がうかがえる」としている。

 また、体調不良を限界まで我慢して救急搬送された人の数も前年の2倍に増加。居酒屋を経営していた50代の男性は入院治療が必要だったにも関わらず、コロナ禍で収入が減少し適切な受診を行わず、後日自宅で亡くなっているのが発見されたという。民医連は「調査でわかるのは氷山の一角にすぎない」としていて、「コロナ禍が長期化する中で医療にアクセスできない人が増えていて、調査結果に反映されないかたちで死亡してしまったという例は増えているのではないか」と危惧している。

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 調査でわかっている死因は、がんが69%、がん以外が27%、不明が4%。ただ、がんと診断されても、経済的な理由から病院を受診しない事例もあり、診断時にすでに悪化していることもあったそうだ。

 具体的には以下のような事例がある。

【夫・子どもと暮らしていた50代の女性】
 夫は要介護状態、娘はうつ病を発症し、夫の年金と本人のパートで生活していた。2018年ごろから乳房にしこりを自覚するも、経済的な困窮を理由に受診はおろか健診も一度も受けず。2020年に咳や呼吸の苦しさで病院に行くと乳がんが判明し、肺にも転移していた。女性は抗がん剤治療を行うも、積極的な治療は困難と診断され、その後は訪問治療に。入院の費用は息子が工面し、「医療費の支払いが難しい」といった理由から生活保護も申請。しかし、症状が悪化し、1月に緊急入院、1月末に死亡した。

【居酒屋を経営していた1人暮らしの50代男性】
 月70~80万円の収入があったが、コロナ禍で月10~15万円に減少。店の回転開店、運営資金などで借金もあった。2020年に急性出血性胃潰瘍などで入院し、1カ月で一時退院する。その後も再入院し、心臓カテーテル治療が必要だったが、金銭的な理由で消極的になり、外来予約日にも来ないことがあったという。10月、予約日に来院せず、電話連絡もつかなくなり、後日警察から自宅で亡くなっていたという連絡があった。

 医療費が払えず受診を控え、「救えるはずだった」のに助からない……。そのような事態を避けるためにどのようなことができるのか。上田記者は「無料低額診療事業」「一部負担金免除(国民健康保険法第44条)」があるとして次のように説明する。

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 「無料低額診療事業は、生活が困窮しているような方が利用できるようになっていて、経済的な理由で必要な医療を受けることができない、そういった機会を制限されないように、医療機関が無料または低額で診療を行うもの。社会福祉法に基づく事業で、低所得者や要保護者、ホームレスの方など、生計困難者が対象になっている。ただ、今回の調査では事業を知っていて受診した人は11件にとどまっていたという結果も出ている。厚労省によると、無料低額診療事業を実施している施設は全国に687施設あるようだが、11件ということから事業が十分に周知されていないのではないか、利用すべき人が利用できる状況にないのではないか、という声も民医連からあがっている。

 そして、国民健康保険法の44条に基づく、医療費の窓口負担の一部負担金を減免してくれる制度。災害や失業など特別な理由で収入が一定額以下になった場合、申請を行うことで医療費や薬代を減らすことができたり、猶予が認められたりする制度になっている。ただ、今回の調査では、こちらも適用されたのはわずか2件にとどまっていることがわかっている。民医連は『こういった制度が知られていないのはもちろん、ほとんど使われていない現状もある』と話していた。自治体によっては適用するルールがきちんと決まっておらず、制度が使われていないという現状もあるようだ」

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 では、そうした人が相談できるような窓口はあるのだろうか。上田記者は「民医連も周知が足りないと言っていたので、今こういう制度があって、“困っている人が困っている時に利用できる”ということを知ってもらう、周りの人も知ることが必要だと思う」とした。(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)

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