先週、東洋経済ONLINEで「最新! 住みよさランキング2022」が発表された。1993年から毎年発表されているランキングで、今年の栄えある1位には東京・武蔵野市が選出された。2位には福井・福井市、3位は石川・野々市市などが続いている。2位以下についてはあまり見かけない地名も。そこには様々な事情があり、知られざる驚きの事実も存在。ある関係者は「無理くり選ばせている」と実態を赤裸々告白した。この住みたい街系ランキングについては、各社から発表されている。その狙いとは一体――。
【映像】こんなに違う! 業者別「住みたい街ランキング」(15分ごろ)
この問いに関して取材に応じてくれたのは、大東建託株式会社賃貸未来研究所所長で麗澤大学客員教授の宗健氏。「住みたい街ランキングは見てる方も真に受けてないんじゃないの?」と話した宗氏は、次のようにも続けた。
「実際(住みたい街が)特にない人の方が圧倒的に多い。それを無理くり選ばせている。住みたい街がある人の方が、じつは少数派なんだっていうのが実態」
実際、宗氏が携わった「いい部屋ネット(大東建託株式会社)」の住みたい街ランキングでは、1位が吉祥寺(JR中央線)で得票率が1.9%、2位が横浜(JR東海道本線)で1.6%、3位がみなとみらい(みなとみらい線)で0.9%と続いたが、驚くべきは「特にない」の40.9%、さらに「今住んでいる街」の15.6%という数字だった。
この現象について宗氏は「強制的に選ばせちゃうと、よく遊びに行く街に投票しちゃう。疑問に思うってことになっちゃう」と実態について言及。そのうえで「全然意味が無いのかというと実はそうではなくて、『住みたい街ランキングはなんのためなの?』ということになる」とも話した。
はたして「何のためにランキングはあるのか?」それぞれの調査会社に取材した。2009年から続くSUUMOの住みたい街ランキングの池本洋一編集長は「もともと憧れの要素が強いのかなって思っていたんですけど、AKBの総選挙と同じように人気投票形式」と話す。
SUUMOの住みたい街ランキングでは20代~40代が駅単位で上位3つを投票する形式でランキングを調査している。池本編集長は「いま東京だと、どんな街が人気なのか…街選びの指針にしていただく。例えば『月曜から夜ふかし』とかで、北千住や赤羽が割とフィーチャーされて、それが人気投票のランクに反映されている」と傾向を分析する一方で「アンケートを取っている側からすると、もうちょっと変わってくれよ! みたいなこともある」と本音をのぞかせた。
これに対して、東洋経済新報社の「住みよさランキング」で都市データパックを編集している担当者はランキングの選出方法について「病院の病床数とか全て公表資料をもとに順位づけしている。客観性、透明性は非常に確保されている。都市の力を数値化できないかということで始めたランキング」と他社の類似ランキングとの違いを指摘した。
実際、「住みよさランキング」は安心度、利便度、快適度、富裕度といった4つの視点から20の公的発表データを用いて編集部が算出し、総合数値の高い順にランキングしている。その結果が冒頭に述べた独自のランキング結果となって表れているのだ。
「総合評価だと武蔵野市が1位になるが、安心度では九州勢が強い傾向がある。子育て世代など、ライフステージによって見ていただきたい」と同編集担当者は話した。
では、アルヒ株式会社が発表した「本当に住みやすい街大賞2022」はどうか。同社の執行役員である石橋薫さんは「当社は住宅ローンを取り扱っている会社で、平均世帯年収が500~600万円の方々が我々のお客様。実際に分譲で住むという方のランキング」と特徴を説明する。
同ランキングでは神奈川・藤沢市の辻堂が1位に輝いたが、これらは実際に分譲住宅を購入した地域上位をピックアップし、編集部と専門家が分析、ランキングした結果だという。
「他社さんでそういったランキングはたくさんあったと思うが、独身の方が一人暮らしで賃貸で住むようなランキングと、ファミリーが住むランキングとでは少しズレている。日本の平均的な方が自分の身の丈に合った住みやすいところはどこなのか? というニーズがあるのではないか」
そのように石橋さんが話した「本当に住みやすい街大賞2022」では、1位以下に埼玉・川口(JR京浜東北線)、多摩境(京王相模原線)、大泉学園(西武池袋線)、海浜幕張(JR京葉線)、たまプラーザ(東急田園都市線)、花小金井(西武新宿線)、月島(東京メトロ有楽町線)などが続いた。
中には、年間でユーザーが実際に検索、問い合わせをした物件が紐づいた駅を集計して選出しているランキングもある。それが、株式会社LIFULLの「住みたい街ランキング」だ。同ランキングの1位は本厚木(小田急小田原線)、次いで大宮(JR京浜東北線、根岸線ほか)、柏(JR常磐線)、八王子(JR中央線)、西川口(JR京浜東北線・根岸線)などが上位に名を連ねている。
同社のチーフアナリストである中山登史朗さんは「問い合わせ数を積み上げて作るランキング。いま、実際に“旬の街はどこなのか”がわかる。コロナ前には4年連続で池袋がトップを獲得していて、コロナ後に1位になったのは小田急線の本厚木。こういったところに住みたいというユーザーのニーズが直接あらわれる」と説明した。
これらのように、各社調査方法も見てほしいポイントもさまざまということになる。江戸川大学社会学部客員教授で統計学者の鳥越規央氏は「各社がどこの層をターゲットにしたランキングか? によることがわかる結果。物件サイト関係は賃貸が多い駅が1位。住宅ローン会社は分譲住宅が手ごろな駅。そもそも物件が関係ない東洋経済新報社のデータは客観的数値。ランキングの調査方法もその結果も、自社の顧客に関係している」と分析した。
単に1位を参考にする前に、各社ランキングの調査方法を知ったうえで参考にすることが求められそうだ。(ABEMA『ABEMA的ニュースショー』)
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