Twitter上で論争を巻き起こしている“年収200万円”問題。発端は、年収200万円のライフスタイルを紹介する本の表示画像がネットにアップされたことだった。
30年間、平均賃金がほぼ横ばいで推移している日本社会。国税庁の統計によれば“平均給与”は433万円、200万円以下は22.2%で、今年に入り急激な物価上昇も家計に影響を与えている。
そんな世情を反映してか、同書ではATMの引き出し回数や飲み会の出費を考慮した人付き合いの提案など、様々な節約術を指南。しかしTwitter上には、同書そのものが低収入の正当化や、貧しさの美化につながるといった趣旨の批判も寄せられることになった。
こうした反応に対し、出版社の依頼を受けて監修を務めた家計再生コンサルタントの横山光昭氏は「正直、予想外だった。ただ、円安やインフレ、賃金が上がらないといった話はよく出ているし、私のところにも家計に関する相談が増えてきている。ご不安に思っている方が多くいらっしゃるんだなと改めて感じた」と話す。
“年収200万円”に近い暮らしをしているというマルチクリエーターのはましゃか氏は「“お金ないわ〜”、とか言いながら道端でお茶を飲んだりするのも楽しいが、結婚や子育てなんて無理、みたいな感じだ。私一人なら我慢できるけど、誰かと一緒に暮らすとなると、その人に我慢させなきゃいけないことになる」と明かす。
「そりゃあ政治には変わってほしいし、給料も上がってほしい。だから投票に行くけど、効果が出るのは1年後、2年後、10年後とかだろう。だからこそ明日の飯を食うのに困る、来月は家賃が払えないかもしれない、ちょっとでも楽になりたいな、ライフハックが欲しいな、という人たちが読んでいるんであって、そうでない人は読まないはずだ。そして同じ年収200万円でも東京で1人暮らしだとカツカツだと思うが、家賃がめっちゃ安い地方とか、実家に住んでいるとかで使えるお金は変わってくる」。
また、フリーアナウンサーの柴田阿弥は「そう考えると、生活レベルを上げない、ということも大事だと思う。稼げなくなって生活レベルを下げるとき、すごく不幸に感じると聞くからだ。そして、いくら稼げば安心だ、ということもないと思う。確かに原始の頃から溜め込めば溜め込むほど生存に有利になるから、不安な気持ちになるのは仕方ない。ただ銀行が破綻したら100億円預金していても基本的には1000万円までしか保護されない。だからどこまでいっても不安は消えないと思う」。
一方、リディラバ代表の安部敏樹氏は「年収200万円という場合、基本的には生活保護を申請した方がいいと思うし、“これくらいなら豊かに生きられるでしょ”というミスリードをしてはいけないと思う。生活保護は捕捉率が約20%、つまり本当は必要なのに、そのうちの5人に1人しか申請していないという実態がある。それから、同じ年収200万円だけれども、田畑を持っているからインフレになっても食糧は自給自足できるとか、資産が20億円ある、というパターンもある。年収200万円という所得だけで評価してしまうのは単純化しすぎている側面もある」指摘した。
横山氏は「年収が上がっていけばそれに比例して幸福度が上がるとも言い切れない。例えば年収が800万円を超えてくると、遺族年金が受けられないとか、児童手当で所得制限がかかってくるとか、私立高の無償化が受けられないなどの制限もかかってくることになる。私が実際に相談を受けたケースとして、“年収1000万円でも生活できていない”とか、“上がったのはいいけど、途中で下がってしまって苦い”といったものもある。幸せを収入だけで測るということは難しいし、自分の中に“足りる”という軸を持った人の方が幸せそうだなと、見ていて感じる」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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