霞が関のキャリア官僚から地方自治体の職員まで、全国約333万人の公務員。“高校生のなりたい職業ランキング”などでも上位の常連で、「ねとらぼ調査隊」の「この企業に務める人と結婚したい」によれば、によれば、国家公務員が1位、地方公務員が2位という人気ぶりだ。
【映像】「定時のチャイムで退勤する人が多い」公務員転職はアリ?
父親が公務員だったという2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は「別にそんなに楽しい仕事があるわけではないし、キツイこともあると思う。そういうことを考えず、ただクビになることはないし、安定していると思われているから人気なんだと思う。結婚相手として憧れる人の気持ちが分からない」としながらも、「転職するときに評価が高くなると思う。入れるんだったら入ったほうがいい」と話す。果たして、その実態はー。
■「“簿冊”の真似をしさえすれば、先輩や上長がハンコを押してくれる」
「チャイムが鳴ると退勤する方が多いのは非常に感動した。まだ空が明るい時間帯で(笑)」。
カタオカさん(仮名)の場合、子どもと一緒に過ごす時間が欲しいと、今年4月に“ブラック企業”から市役所職員に転職した。一念発起した後は、昼休みや隙間時間を見つけてはYouTubeなどを使って公務員試験の勉強に励んだ。最終的に市役所と民間企業から内定が出たが、転勤の無い地方公務員を選んだ。選挙や一斉清掃など、休日に出勤することもあるものの、家族と過ごす時間は確保できるようになったという。
「公務員の仕事というのは、いわばメール1通返すのにも許可が必要だ。過去の事務手続のすべてが閉じられているファイルのことを“簿冊”と呼んでいて、仕事をしている中で分からないことを先輩に聞くと、“あの簿冊読んだ?”“簿冊の通りしないと”と指導される。それを真似しさえすれば、先輩や上長がハンコを押してくれる。
公務員になると給料が下がる印象があったが、残業代もしっかり支給されるので、思ったより低くはないかなっていうのが正直な印象だが、“思っていたほどは“ホワイトではなく、福利厚生も多くはないということに、家族はギャップを感じているようだ。それから聞く限り、異動に関しては希望や自分の特性に関係なく選ばれるので、“ガチャ”のような感じだと聞いている」。
■「民間企業で利益を追求している方がよっぽど健全だなと思う」
“社会の役に立ちたい、他人を騙すような仕事はしたくない”。そんな思いから新卒で地方公務員(市役所職員)になったしょうさん(仮名)の場合、カタオカさんとは逆に、10年の節目に民間企業に転職した。理由は、“政治に巻き込まれそうになったから”。
「実のところ、あんまり働きたくないし、定時で帰れるかな、くらいのイメージで公務員になったという理由もあったが(笑)。思った以上に忙しかった。最初に配属された生活保護関連の部署では定時で帰れていたが、異動になった先の人事課というのが、役所の中で一番忙しい部署だった。特に4月の人事異動に向けて、年度末はとんでもない分量の作業があった。それでも慣れてきちゃって、5年もいけた。
ただ、有力者の息子のような人が採用に応募してきて…ということもあったし、事業に予算を付ける時にも、地域の経済団体にお伺い立てながら…みたいなことがあった。そして議会対応だ。出世すればするほど、そういったことがメインになってくると分かってきて、“しんどいな”って。 公務員から民間に転職するのは少数派だし、誰に話しても、ものすごくびっくりされた。安定を捨てるのか、家族にも反対された」。
今は副業も認められる企業で働いている。「民間企業なので自社の利益が最優先。議会はないけれど、株主総会があるので株主さんの顔を立てることはある。ただ、政治のドロドロしたものに比べると、利益を追求している方がよっぽど健全だなと思ったりする。社会人として求められる能力については、公務員も民間企業でも意外にギャップはないと思う。ただ、僕の場合は人事から人事と、職種が同じだったということも大きいと思う。これが営業職への転職であれば、そういうわけでもないと思うが」。
■「上司も含め、しがみついている人たちのようにはなりたくなかった」
新卒で民間企業に就職したまさとしさんは、カタオカさんと同様、ブラック企業に嫌気がさし、安定を手に入れたいと、国家公務員試験(一般職)を受けて検察庁に採用された
「官庁訪問をしたときに、働いている人たちが楽しそうな印象があった。公務員って、どこかじめっとした印象があると思うが、和気あいあいと仕事をしているように感じられた。私が採用された事務官というのは、検察官の補佐をするという仕事だ。取り調べに立ち会うこともある」。
しかし、「やり方がわかってしまえば、誰にでもできてしまうような仕事」だと感じるようになった。
「公務員の仕事というのは根拠、法律に基づいたものだという前提がある。だから創意工夫を加えようとしても基本的に裁量は与えられていないし、そういう意味でのやりがいは感じられない。例えば入庁して驚いたのが、出勤簿への印鑑を押すことだ。各部屋に冊子があって、全員が押したら若い人が総務課に持って行く。これに意味があるんだろうかと思っていたが、今も続いていると思う。
確かに日々8時間を役所に捧げていれば生活は安定する。しかし自分で稼ぐ経験をしないまま、このまま30年、35年と歳を重ねて大丈夫なのか、それよりも成長ややりがいの方が重要ではないか、という疑問が湧いてきた。上司も含め、しがみついている人たちのようにはなりたくなかった」。
一昨年、7年務めた検察庁を退官、フリーランスのエンジニアとして働き始めた。
「辞めると決めてから勉強を始めた。貯金を取り崩しながらのスタートではあったが、知人からの紹介で少しずつ仕事を振ってもらって、なんとかやっている。成功しているわけではないが、満足はしている。興味・関心を持っていることを、働く場所や時間を選びながらできる。しかも生活する分には困らない程度に稼ぎはあるので、納得できる働き方だ」。
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