国が「アフィリエイト広告」について新たに指針を設ける方針であることが報じられている。
アフィリエイト広告とはインターネット広告の一種で、ブログやサイト、SNSなどから商品購入や会員登録のページに遷移させ、その商品稿購入させるように誘引する広告のことだ。広告のクリック数に応じた報酬が支払われる「クリック型」や、広告を見た人が実際に購入した件数に応じた報酬が支払われる「成果報酬型」などがある。
個人や小規模事業者でも簡単に参入できることから“副業”としても人気を呼び、ノウハウ本なども多数出版されている。一方、こうした“アフィリエイター”と呼ばれる人々による市場の拡大の副作用として、成果を追い求めるがゆえの過激な表現や誇大・虚偽表現も度々問題視されてきた。
■白い背景に白文字で小さく“PR”…SNSに出てくるアフィリエイト広告が酷い
消費者庁の景品表示法検討会のメンバーでもある慶應義塾大学の大屋雄裕教授は「純粋に事業者が作ったリンクやバナーを設置するだけという場合でも、アフィリエイターはそれが見えやすい場所、クリックされやすい場所に並ぶよう努力するし、サイトにユーザーが集まったり、あるいはクリックされやすくなったりするために、何かを付け加えるケースもある。
結果として発信しているのは誰なのか、紹介されている意見は誰のものなのかが分からないまま情報が一人歩きしてしまうという問題もあるし、広告なのかそうでないのかが分からない形で情報が発信された結果、ユーザーが騙されてしまうということも出てくる。こうした状況を整理する必要があるのではないか、というのが背景にあるということだ」と説明する。
ウツワ代表のハヤカワ五味氏は、過激化の背景に成果報酬の高さがあると指摘する。「アフィリエイターをしている友達もいるし、私自身もインフルエンサーとして打診が来ることもあるが、3000円の単価に対して5000円、1万円という成果報酬が付く商材もある。ただ、“比較サイト”のようなサイトの中には、アフィリエイトのために“メディア”の体裁を取っているものもある。そのサイトの情報が本当に有益だった場合、それは広告なのか、というややこしい問題もある。
そしてウェブサイト以上にInstagramなどのSNSに出ているアフィリエイト広告の方が酷いと感じている。白い背景に白文字で小さく“PR”と書いてあるだけとか、“#アンバサダー”“#supported”など、表現も曖昧だ。さらには広告であることを明示していない投稿もあるし、そういうことをインフルエンサーさんが知らずにやっているケースもあると思う。そのあたりは規制が必要ではないか」と指摘した。
■アフィリエイト狙いのキュレーションばかりの現状、社会にとっていいのだろうか
アフィリエイター歴17年のなかじさんの場合、運営するウェブサイトからクレジットカードや脱毛サロン、転職エージェントなどのサイトにユーザーを誘導、最高で月収1000万円を稼いだことがあるという。報酬を得るための秘訣についてなかじさんは「僕は基本的に自分が良いと思ったものしか紹介しない。とにかくユーザーに役立つ情報を提供して、そこに良い商品を紹介するというイメージだ」と説明。
その上で、規制強化の流れについては「ひどいケースも多いので仕方のないことだと思う。ただ、アフィリエイト=悪というのは違うと思うし、むしろユーザーへのメリットや社会への貢献もある。もしアフィリエイトをやる人たちがいなくなったとしたら、Googleで検索しても商品のレビューや比較のコンテンツを見ることができなくなり、買う時に困ると思う。アフィリエイトをやっている人やサイトの全てを対象にすることなく、どう規制をかけていくかが大事なのではないか」と訴えた。
なかじさんの主張に対し、近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「本当に情報を発信したい人だけがやる方がいい」と反論する。
「初期のインターネットの世代としては、収入などとは関係なくレビューしようという時代があったし、今でもそういう人たちもいる。Amazonだって、レビューを書いている人たちはお金をもらえなくてもやっているではないか。今はアフィリエイターの力が強くなりすぎて、例えば旅行のために調べようと思っても、アフィリエイト狙いのキュレーションばかりになっている。これは社会とって良いことなのだろうか。自分で“良い”とは思っていなかったとしてもお金のために推す、というのがアフィリエイトではないか。広告は広告だと表示しようというのが世界の流れだし、そこに議論の余地はない」。
両氏の議論を受け、大屋教授は「同じ趣味を持つ人たちが喜ぶような情報を出している個人のサイトもあるが、真面目にやればやるほどコストがかかるものなので、少しは財源があるとありがたい。そういうことでアフィリエイトを設置することもあると思う。一方で、例えば『暮しの手帖』という雑誌は真剣に商品を比較、その代わりに広告は取らない方針でやっていた。夏野先生が仰っているのは、そういう中にCMが混ざり、さらにCMが圧倒している状況があるのではないかという問題提起だと思う。消費者庁の趣旨も、CMはCMだとはっきりさせてほしいということだ。そして現段階では広告主がコントロールしましょうという方針なので、逆に言えばインフルエンサー個人には届きにくい規制だ。そこの課題については別の研究会で長期的に考えようという話をしている」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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