渋谷区の『ドット画鉄腕アトム』撤去は必要だった? “グラフィティが落書き”問題にサリー楓氏「議論されればアートになる」
インベーダーの作品の数々 »

 壁面に描かれた「鉄腕アトム」のイラスト。この1枚の画をめぐり、今大きな議論がされている。

【映像】渋谷に描かれた「鉄腕アトム」などインベーダーの作品の数々

 事の発端は6月下旬、渋谷のタワーレコードからミヤシタパークへ向かう途中の高架下に描かれていたイラストが「撤去されている」とSNSで大きな話題になった。

 イラストを描いたのは、正体を隠し活動を行うフランス出身の芸術家「インベーダー」。ドット絵をモチーフとするモザイクアートで知られ、「グラフィティ」と呼ばれる路上アートをこれまで世界各地で数多く生み出してきた。

 今回撤去されたイラストが設置されたのは2014年ごろ。過去に同じ題材で描かれた作品は、オークションで122万ドル(約1.6億円)という高額で落札されたことも……。そんな絵がこのタイミングで撤去された理由について渋谷区の担当者は、「絵を撤去したのは事実で理由は落書き消去の為」としたうえで…「渋谷区としては“落書き”を容認しない」としている。

 渋谷区は去年から「落書き対策プロジェクト」という事業を開始。3年を費やして区内の落書きを消去すると打ち出している。今回の絵は、その後処分されたという。グラフィティを「落書き」と定め撤去に向けた動きを進める自治体がある一方、こんなケースもあった。

 2019年、東京・港区で発見されたネズミのイラスト。世界的に有名な作家「バンクシー」の作品なのではと大きな話題に。都は絵の部分を取り外して都庁で一般公開したが、「地元の活性化に役立てたい」との要望から、日の出ふ頭に戻して、無期限で展示することにした。ネットでも「グラフィティ」には様々な声が上がっている。

「アトムも消されてしまったのは本当残念すぎる」

「グラフィティはただの落書き」

渋谷区の『ドット画鉄腕アトム』撤去は必要だった? “グラフィティが落書き”問題にサリー楓氏「議論されればアートになる」

 はたしてグラフィティは「アート」なのか。それとも、街の景観を損ねる「落書き」に過ぎないのか。東京藝術大学の毛利嘉孝教授は今回の渋谷の件についてこう話す。

「もう少し議論してから消してもいいかなという気はする。恐らくあれがあって不快だとか、困っているという人が直接的にはいなかったと思う。もちろんどこの都市も落書き自体は犯罪になっているところたくさんあって、それは多くの大都市においてもそうだが、海外においてはグラフィティをそれなりに保存したりという動きもあるので、もう少し柔軟な対応があったのかなと思う」

 また、毛利教授は世界との違いを指摘。行政主導となってまちを作る日本に対し、アメリカやヨーロッパでは人々がまちを作る意識があるという。

「ヨーロッパの町は確かにグラフィティ、落書きは多いかもしれないが、街並み全体が非常に調和がとれているし、ある種の美しさみたいなものはある。それに比べて日本の場合は、確かに落書きはないが、街そのものはすごく雑然としていて、落ち着きがないようになっているというのは、それはやっぱり都市空間が誰のものなのかということがとても違う認識だと思う」

 最後に、グラフィティのあり方について語る毛利教授。

「『グラフィティはいずれ消される運命』とした上で元々そんなに線が引けるものではないと思う。アートと落書きというものが、全ての落書きには意味があるし、みんな落書きって必ずすると思う。だから必ずしもそれがダメだと言いづらいとは思う。グラフィティが全部落書きだから犯罪だっていうのはおかしいし、グラフィティなんだから認めろというのもおかしくて、大体答えはその間くらいにあると思う。それは街をどう楽しむかにもかかっていて、グラフィティを楽しみ始めると、街の楽しみ方も変わって来る。ここにこんな画がいるのかみたいな。グラフィティは犯罪論とか、アート論とか色々あるが、グラフィティを楽しむことによって街の見え方が変わるというのが一番いいとは思う」

 ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演したファッションモデルで建築デザイナーのサリー氏は、今回の撤去について、必然としつつも「それも含めアート活動だ」と持論を展開していた。

「グラフィティは、ストリートアートの一種で、もともと破壊行為、ヴァンダリズムと呼ばれるものの延長線上にあるもので、許されないことではあるので、撤去されたことに文句は言えないと思う。その前提で、終わりを迎えることも含めて、一連のアート活動ではないかと思っていて。(私が)建築デザインの仕事をしているが、建築でも古い建築を保存しようとする意見と保存するのではなくて、使い続けることによって建物として生きさせようという議論がある。芸術も同じで、グラフィティを保存するということと、生きさせようとすることは必ずしも一緒ではない。今回の場合だと、保存されなかったが、どういうふうに作品は生きていけるのかということを議論していくのが建設的かと思う」

 また、グラフィティが落書きかという問題について、サリー楓氏はこう明かした。

「撤去されただけでは、落書き。ここから撤去されたことで町を見ることだとか、このアートについて時間を使うのであれば、アートになると思う。なので、これがアートなのか落書きなのかは私たち次第かと思う。渋谷駅の中に『明日への神話』という岡本太郎のすごく大きな作品がある。第五福竜丸の被爆について描かれている。描かれた当初は、もちろん落書きだったが、この絵画の端っこに、Chim↑Pomというアーティストが福島原発を書き加えて『明日への神話2』みたいなのを作った。(そのおかげで)岡本太郎の絵は、原爆、被爆について描かれているというものだと再び議論が活発化した。そこで初めて落書きがアートになった。なので(今回の渋谷区の撤去に関しても)ここから私たちがどう議論していくか、そのバトンが渡されている気がしている」

(『ABEMAヒルズ』より)

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