今も続く“結婚反対”、YouTubeやSNSでは新たな形の部落差別も…「マスメディアが同和問題を扱ってくれなければ負けてしまう」
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 日本社会に根強く残る「部落差別」の問題。法務省が全国1万人を対象にした調査によれば、自身や知人が被害者、または加害者になった経験があるかという問いに、実に17.5%の人が「ある」と回答している。そして、それが最も顕著になるというのが「結婚」や「交際」が関係する場面だという。そしてネット時代の今、新たな形の差別も生まれているという。

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■「ルーツについて話すべきか、非常に悩んでいる」

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 「被差別部落に生まれた自分が悪いんだと思い込み、自殺未遂してしまった」。
 
 本江優子さん(42)は約20年前、当時の交際相手から、両親が「付き合う分にはいいが、結婚は絶対にやめて欲しい」と話していたと告げられ大きなショックを受けた。近隣住民が男性の両親と知人だったことから、周囲に明かしてこなかったが、出自について知られてしまったのだという。

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 就職の際にも同和地区の出身であることを理由に断られる経験をしたという本江さん。「私が経験したのは20年前だが、今も20代、30代の子たちが、特に結婚の時にルーツについて話すべきか、非常に悩んでいる。そういう様子を見ていると、どうしてこんなことでと苦しくなる」。

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 山形県出身のテレビ朝日田中萌アナウンサーが「西日本の学校ほど教育を受けた記憶がない」と話すのに対し、山口県出身のロンドンブーツ1号2号の田村淳は「そういう地域があるんだということを、僕は道徳の授業で初めて知った。だからといって、その地域から通っている友達との関係が変わることも無かった。むしろ結婚に反対されるような酷い差別があるということを知ったのは、東京に出て来てからだった」と振り返る。

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 「そう考えると、意識していない人にあえて意識させるようなことをしなくてもいいんじゃないか、という気もする。もちろん当事者の中には、何か隠し事をしているようで嫌だという方もいるだろうし、本江さんのように理解を広めるためにメディアに出ている方もいらっしゃる。ただ、そのことで新たな差別を生んでしまうかもしれないと思うと、すごくもどかしい」。

■「住所や電話番号までネットに晒されていた」

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 自らも当事者で、悩み相談を受けている川口泰司さん(一般社団法人・山口県人権啓発センター事務局長)は「差別の現実は今も厳しい。そして、それは見ようとしなければ見えないものなので、無関心でいると流れてしまう」と話す。

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 「淳さんがおっしゃったのは、“寝た子を起こすな”論と呼ばれるもので、学習することでかえって意識をしてしまい、差別が残ってしまうのではないか、という考え方だ。しかしそれはウイルスが蔓延するところにワクチンを打たない人を放り出すようなものだと思う。今は部落の人に会ったことがない、聞いたことがないという状況になった一方、ネット上で差別的な投稿を見ることでマイナスのイメージだけが残り、何となく避ける、みんなも避けているから避けるように、差別の質が変わってきていると思う。
 

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 僕は誰が部落出身なのかを知ってほしいのではなく、差別の歴史や、全国水平社が創立され、差別をなくそうとしてきた100年以上の歴史を知っておいてほしいと思う。僕自身も結婚差別、恋愛差別を受けたことがあるし、親もそうだった。地域の人は“差別なんか聞いたことはない”と言うが、差別で苦しんだ当事者は、実はたくさんいる。表に出せていないだけだ」。

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 実際、被差別部落地区を撮影した映像がYouTubeに投稿されたり、地名のリストや個人情報がネット上に投稿されたりといった、新しい形の問題も起きている。前出の本江さんも「そうしたリストを使って身元を調べた親が結婚に反対するという事例も起きている」と証言する。

 川口さんは「最近も、行政書士が55軒もの探偵事務所からの依頼を受けて全国で3500件の戸籍を取得していたという問題があった。10年前にも全国で3万件が取得され、結婚調査などに悪用されていたことが明らかになってきている。部落のリストや個人情報がアップされた問題では私も被害者で、訴訟の原告の一人だ。住所や電話番号まで晒されていた」と憤る。

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 「裁判所はプライバシー侵害だ、差別を助長するなという判決を下しているが、ネット上には“これは差別ではないんだ”という正当化をする人もいるし、フェイクや自分たちの思い込みを垂れ流す人たちもいる。この100年の蓄積が、この5年、10年で一気に壊され始めていると感じる。取り上げ方が難しいし、指摘されてしまうこともあるので同和問題はやめとこう、という時代もあったと思う。でも、こうやって当事者と語り合いながら発信することを地上波や発信力のある人たちが続けなければ、差別される側は負けてしまう」。(『ABEMA Prime』より)

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